ラグビーとアメフトの違い(ゲーラ)

 アメフトとラグビーの違いがわからない。そう伝えたら、ゲーラが一気に不機嫌そうな顔をした。私を腕に抱えて、膝の上に座らせる。そして保存したらしい動画を見せると、一気に説明を始めた。
「ラグビーは、フォワード八人・バックス七人。加えてアメフトは選手交代制限なしの十一人だ」
「そうなんだ」
「一番熱いのはアメフトだぜ。攻守も交替でやるからな。展開も想像が付かねぇ」
「へぇ」
「あと、茶色で縫い目がある方がそうだぜ」
 あっ、それはわかるかも。正直、どっちもタックルしているからわからない。「ヘルメット被ってないのは?」「ラグビー」「どうして似てるのに違うの?」と続けて聞けば「歴史が違うからだ」と返ってくる。
「攻守交替しねぇ方は、メシマズ。俺たちのアメフトは本場のココだぜ」
「へぇ」
「マウスピースを着ける」
「ラグビーの方が?」
「アメフトがだよ」
 トンと自分で自分の胸を叩いたゲーラが、怠そうに答えをいう。そっちか。生身の方が危なさそうなのに。
「命の危険がある方は?」
「アメフトだな。寧ろラグビーはお子ちゃまレベルだぜ」
「ふぅん。タックルは?」
「頭以外やりたい放題だ。向こうの方が制限かかるぜ、っと」
 と言葉を区切って、ゲーラがカーソルを動かす。ピタッと一時停止の状態になった。少しバーを動かして、数秒前に戻る。
「ジャンプ中の相手にタックル仕掛けてんだろ。これが大きな違いだ」
「そうなんだ」
「パスも違うぜ。フォワードパスは一プレイにつき一回だけ、バックパスは何度でもできる。まぁ、無資格だと受け取れねぇけどな」
「無資格って?」
 そう聞いたらゲーラが黙った。あ、聞いちゃいけないことだったか。画面の中で、すごい長距離パスを見た。
「すごい」
「おう、そうだろ? すげぇプレイのを集めたからな」
「へぇ」
「まっ、神業を見りゃぁ、少しは違いがわかンだろ」
「そうだね」
(そうだろうか?)
 頷いた矢先に疑問が思い浮かぶ。でもゲーラは上機嫌だ。恐らく、自分の集めたアメフトの試合を見せることができたからだろうか? それにしても、こんなことをしてたなんて。部屋に引き籠もったことがあるのは、このためか。(きっと、探すのに苦労したんだろうな)保存した記事も見せられる。
(こんなことなら、スクラップにしておけばいいのに)
 紙だと、もっと見やすい。けれど壁や棚にアメフトに関するものがないことを見ると、まだ気持ちの整理も付かないんだろう。多分。(もしかして、トラウマだったのかもしれない)チラリとゲーラの顔を覗き込む。私が盗み見していることに気付いてない。顔をキラキラと輝かせて、頬も赤らめて、私にわかるようアメフトの説明をしていた。この好意を、無碍にするわけにはいかないだろう。ゲーラの胸に寄り掛かりながら、アメフトの説明を聞いた。


<< top >>
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -