マシュマロぱーてー(前日譚後)

 リオがマッドバーニッシュのリーダーになった。囚われたバーニッシュの救出手段を考えながら、今日の宿を探す。手頃なのはない。唯一あったのは、壊れたマーケットだ。ハイウェだった道にあって、暴徒に襲われたんだろう。窓ガラスは割れていた。ついでに天井から埃が降って、蜘蛛の巣が張っている。
「こりゃ、雨風を凌げるだけだな」
「あぁ。野晒しで寝るよりはマシだろう」
「身も隠せるしな。というか、あの辺りを拠点にしていたのか?」
「どうだろう」
 しばらく長いこと、留まっていたのは確かだけど。コンビニはガソリンと一緒に爆破されたから、もちろん中のテントは残ってない。全部燃えカスだ。(また一から見つけないと)ゲーラが代わりに「ちょっとだけ、長ぇことな」と答えた。
「一旦、腰を落ち着けて休んだ方が良いと思ったんだよ」
「いざとなれば、プロメポリスから盗めば良かったからな。立地的にも良かったわけだ」
「ふぅん。でも、次からはダメだぞ」
「へいへい」
「わかってるさ。足も付いちまうからな」
(そういうことじゃないとは思う)
 なんというか、リオのいう人道的な? ってものの意味で。それをわかっての口振りだと思うけど。今の言い方だと。そう考えて寝れる場所を考えていたら、メンバーの一人が叫んだ。
「おい! 見てみろよ!! マシュマロ、マシュマロがあったぜ!」
「ましゅま、ん?」
「マシュマロ、だな」
「聞いたことがあんだろ。白くてフワッとしたヤツだよ。中にチョコレートクリームが入ってるヤツもあるぜ」
「チョコレートとクッキーに挟んだり、ココアに入れても美味しいんだよな、コレ」
「しかし、ここに全てが揃うとは限らない」
「焼くしかねぇなぁ」
「やく?」
 ロースト? いまいち想像がつかない。ローストチキン、というようにオーブンで焼くんだろうか? ジッと袋を見る。袋を破り、中に手を入れた。
「一人一個ずつな!」
「仕切ってんじゃねぇよ」
「リーダーが最初に取るものだぞ」
「気にする必要はないさ。順当に配ればいい」
「焼くの?」
「オメェの分も、取るんだぞ」
「焼き方にコツはいるが、なに、教えてやる」
「世話がいいな、お前たち。とりあえず、焼いてはみるか」
 そうリオが話すと、ボッと手の平に火を作る。大きい。それが意思を持って飛び出し、少し開いた場所に焚き火を作った。火をくべるものはない。炎が意思を持って、ボウボウと燃えている。ゲーラとメイスが続けて長い棒を作った。細い。もしかして、人を刺すのだろうか? 鋭利な細さを見ていたら、他のみんなも作っていた。太さがバラバラである。どれを参考にすればいいのかと悩んでたら、ゲーラが自分のを指差した。
「このくらいので作るんだよ。ほら、やってみろ」
 モデルを寄せられる。ほほう、大体この感じで、このくらい。メイスのも見ると、同じような感じだった。気付いて、自分のも指差してくる。
「長い方がいいぞ」
 なるほど。「まぁ、バーニッシュなんだから平気なんだけどな!」とみんなはいうけど、よくわからない。二人のを参考にして、長い棒を作る。針みたいだ。マシュマロを一つ取り出し、先端に突き刺す。同じようにした。これで、どうするんだろう。
「新リーダーは、二つで」
「なんか、悪いな。みんなの分はないのか?」
「ねぇんで、リーダーに渡してんだよ」
「俺たちのリーダーはまだ若いからな。食べ盛りに渡したい」
「そ、そういうものかぁ? なら、レディファーストで」
「おっと」
 リオの視線がこちらへ向く前に、ゲーラが止める。視界が遮られた。
「コイツぁ小食なんで、マシュマロ一個が限界っすよ」
「一口でも食べれたら御の字程度だ。そこまで気にする必要はない」
「そ、うか? だったら、お前たちも食べてくれ。ほら、腹が減っている者がいたら食べろ」
「ウッヒョォ!!」
 一気にみんなが喜ぶ。ここまではしゃいだの、酒を見つけたとき以来だ。こぞってマシュマロに群がる。リオより多い。二つ三つと突き刺していた。
「って、お前たちはいいのか?」
「やっ、これだけで充分だぜ」
「必要最低限の物だけを口にするだけで済むからな。って、おい」
 待て、とメイスが向こうから口を挟んだ。刺したマシュマロを火に近付けただけなのに。ゲーラも振り向いて「げっ」と顔を歪める。それから私の手を掴んで、棒を上げさせた。
「そのままだと溶けちまうだろうが、馬鹿が」
「むぅ」
 マシュマロを入れるんじゃなかったのか、火に。ムスッとしてたら、マシュマロに群がったみんなが戻ってきた。一斉に、刺したマシュマロを火に当てる。火の中には入れず、あくまで火の気でどうにかしていた。「これ、焦げ付かないのが大変なんだよなぁ」「トロリと蕩けてる方がベスト」そんなことを、ワイワイ話している。私の分は、どうだろう。見つめてみるが、よくわからない。ボーッとマシュマロを回してたゲーラが、口を挟んだ。
「んぁ? もうちょい、下に下げろ」
「あぁ、そのままだと生のままだな」
「ナマ」
「んっ。ちょうどいい具合に焼けたな。もしかして初めてなのか? だったら、僕の分を」
 食べるか? ってリオが尋ねようとしたら、ズイッとマシュマロが現れた。目の前に二つ。黒い焦げ目が少し付いている。
「コツがいるんだよ、コツが」
「溶けないよう、回すのがコツだぞ」
 見れば、二人のマシュマロが微かに溶けている。それらを見て、一旦マシュマロを下げて回してみる。クルクルと、炎の意志に従って熱を通す。『ソノクライダヨ』と聞こえたものだから、軽く上げてみた。
「おっ、良い感じじゃないか」
「初めてにしちゃ、上出来じゃねぇの?」
「食べてみればわかるだろう」
 三者三様の言葉だ。試しに、口を開けてみた。


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