遅いけーき

 急に雨が降って、気温が下がった。ひどい。昨日はあんなに暑かったのに。のろのろとベッドから這い出て、落ちた服を拾い上げる。二人が酷使してきたせいで、顎も腰も痛い。喉が痛くて咳をすれば、まだイガイガとした。(寒い)完全に真夏の熱帯夜に向けて着たから、寒い。クローゼットを開いても、部屋着に使える上着がない。どれも余所行きで、他の部屋着に着替えても足りない。少し暑いし、寒かったり。今日の天気予報はなんだっけ? 月の変わり目だから、寒いんだろうか? どうだろう。(カレンダーを、見てみよう)Tシャツと短パンを着て、リビングへ向かった。
「あ? ようやく起きたのかよ」
「遅かったな。もう昼過ぎだぞ」
 シャワーも浴びてこい、って付け足してくる。そもそも、誰のせいだと。欠伸をして、目を擦る。辺りを見回しても、リオがいない。
「リオは?」
「友人と出かけているぜ」
「あの火消しの兄ちゃんも一緒だ。そう滅多なことは起きんと思うが」
「ふぅん」
 なにも問題がないならいいや。テーブルを見る。雑誌や飲み物くらいしかない。
「ご飯」
「後で作ってやらぁ」
「それとも、今抱いてやろうか?」
「いい。というか、疲れてるんだから、やらないで」
「そうか。変なことをいってすまなかったな」
 気にしないでくれ、といいながら人の背中をポンポンと叩かないで。しかもソファに座りながら、腕を伸ばした状態で。(もう少し労わってほしい)誰に酷使されたと思ってるんだ。
「とりあえず、シャワー浴びてこい。なんか食いてぇモンはあるか?」
「水。とりあえず、なにか残り物でいいや」
「ホットケーキだな」
 誰もそんなこと、いってない。ポンポンとゲーラに頭を叩かれると、そのまま離れてしまう。そういえば、ソファにエプロンが掛かってたような。それをゲーラが着て、腰の後ろで結んで、えっ。ゲーラが作るの? 驚いて振り返る。ゲーラはもう、キッチンに立っていた。
「ホットケーキくらいなら、作れるぞ。アイツ」
 メイスからの新情報にも驚いた。(いつのまに)前までは、黒焦げだったのに。
「甘いかな。パンケーキ」
「本人にいってやれ。甘い方に調整してくれるだろう」
「ん、わかった」
 朝食用のパンケーキもいいけど、甘いのも食べたい。ちょうどいいバランスになるかな? ほのかに甘いパンケーキ。キッチンを覗くと、ゲーラが粉類を混ぜていた。
「ねっ、ゲーラ。甘いのがいい」
「どわっ!?」
 手元が狂って、大量の砂糖がボウルに落ちた。


<< top >>
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -