消えたピアス(メイス)

(ん、ない?)
 眠りこけていたメイスは、指に感じた違和感に意識が戻った。ななしの耳は、相変わらず冷たい。触れば馴染んだピアスの触感が、そこにあった。だが今はそれがない。浮上した意識で感触を確かめ、重い瞼を抉じ開ける。まるで錆びたシャッターだ。グググと開けば、相変わらず眠りこけるななしの顔が見える。こんなに触られたというのに、起きる気配が全くない。
(あ、やっぱりか)
 メイスは一人、納得する。指の感触は当たっていた。視覚からでも、ななしの耳からピアスが消えていた。恐らく、寝ているときに外れたのだろう。軽く見当をつけて探してみるが、ない。
(大捜索だな)
 起きたときにシーツをひっくり返さなければならない。しかしななしを起こすには気が引ける。そもそも、この事態を本人がどう受け取るかが重要だ。
(あとで見るか)
 もぞもぞと動き、ななしを引き寄せる。その頭に頬を乗せ終えると、暗闇に沈んだ。


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