お玉と買い出し

 買うものがたくさんある日は、ボスがゲーラやメイスと一緒に買い出しに行く。私はといえば、お留守番である。主に、冷蔵庫に入ってる食料の処理兼夕食作りだ。私が行くときは、ボスがこれをしている。ゲーラやメイスがすることは、滅多にない。大抵、私かボスだ。
(というか、朝を作る方が多いかも)
 大抵、私もボスも朝が強い方ではない。比較的起きるのが早いゲーラとメイスがよく、朝の分を作ってくれる。ちゃんと、当番制にはなってるんだけど。家事の順番。けど、私もボスも度々寝過ごしてしまうので、その日の夕飯担当だったり他の仕事を担当するゲーラとメイスが、替わってくれるのだ。だから、朝を作るのはゲーラとメイスが多いし、晩を作るのは私とボスが多い。
 グルリと鍋の中を掻き回して、スープのアクを取る。オーブンの中では、まだ野菜を焼いている。汁物は肉類で、野菜は蒸し焼き。大体こんな感じだ。グラタンとか作る気はない。そもそも材料が足りない。
(買ってくれたかな)
 メモを渡したから大丈夫だとは思うけど、はたして。そう思ったら、玄関の鍵が落ちる音がした。振り向く。ガチャリと扉が開く音がしてから、三人分の足音が聞こえた。
「んなこたぁ、いってもよ」
「フッ、どうだか」
「こらこら、お前たち。ほら、着いたぞ」
 そうボスがいうと、二人同時に「あ」という。相変わらず声のハモりがいい。まるで双子みたいだ。スープの味を見てから、お玉を置いた。アク抜きは終わりである。軽く手を拭いてから、玄関に向かった。
「おかえり。なにか片付けるもの、ある?」
「あぁ」
「コイツに関しては問題ねぇぞ」
「片付ける場所が違うからな。ボスの持ってる分を片付けてくれ」
「うん」
「ところで、良い匂いがするな」
「作ってるから、今」
 そう返すと、ボスが「そうか」と頷く。なんか、照れ臭そうというかはにかんだように笑った。
(なんか、嬉しいことあったのかな)
 そう思いつつ、私も「うん」とだけ返しておいた。


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