ケーキの用意

 ケーキの上にある飾り。あれは砂糖で作られているのらしい。サンタの飾りは食べれるお菓子。もしかしたら、昔食べたお菓子にも似ているのかもしれない。ガリっと食べてみるものの、口の中で蕩けなかった。
(かた、い)
 ゴロゴロと砕けた砂糖の塊が転がる。記憶にあるものと違う。炭酸水のように、こう、フッと砂糖がフツフツと溶けたものなのだ。不思議な感触だけど。そう思いながらサンタをガリガリと食べていたら、ゲーラが指差した。
「それ、食うなっていわれてんだろ。怒鳴られるぞ」
「予備だもん。予備だからセーフだし」
「俺は、良いとはいってないがな」
 ギッとケーキにデコレーションを施すメイスが睨んでくる。デコレーションといっても、生クリームを絞る係だ。私がケーキの表面に生クリームを塗って、メイスが生クリームを絞って飾りつけを行う。ゲーラは最後にフルーツやら飾りやらで、見栄えを良くする係だ。それぞれをやって、結果これに落ち着いたという。
「ボスがいれば早いのに」
「買い出しに出かけたからな。予定外の出費で」
「まさか向こうの分をコッチで引き受けるとはねぇ。チッ、ボランティアじゃねぇんだぞ!?」
「ボランティアじゃん。やってるの」
「隠れ里にいたガキどもの分を作る分にはな」
「まぁ、荷物持ちもいるんだ。少しはマシになるだろう」
「で。その追加の分を作ってると」
 チラリとオーブンの方を見れば、一個のスポンジケーキが入っている。まだ、焼けてない。ついでに焼き立てを持って行くことは無理だ。精々、明日の命である。多分イブの日に全員食べられてることだろうし。そう思いながら、サンタの足までを食べ終えた。
(やっぱり、違う)
 砂糖はゴロゴロと固く、それほど砂糖の甘さを感じない。どちらかといえば、食べすぎたらしつこい感じだ。ホワイトチョコレートのツリーに手を伸ばす。
「失敗は許されんぞ」
「しってらぁ」
「俺の真似してんじゃねぇよ。っつか、やんのお前じゃねぇだろ」
「そうともいう。でも、味見も大事だよ?」
「それは最後に、嫌というほどできるぞ」
「失敗しちまったもんもあるからな」
「直せたじゃん」
「生クリームの範囲でならだ」
 そうメイスが言い切ると、生クリームのデコレーションをし終えた。もしかして、あの少し焦げたスポンジのことをいっているのだろうか。それともカットを少し間違えちゃったもの? そんなことを思いながら、蕩けたチョコレートを味わったのであった。


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