屯う場所での

「自分でやろうとするのが大間違いなんだよ」
「だって、できると思って」
「で、この薄皮に当たっちまうんだろ? 小せぇ穴なんだから、一発でできるのに無理があんだろ」
「だって、いつも一人でできたし」
「だぁから。それが間違いなんだっつーの。ほら、できたぜ」
「あ、ありがとう」
「もう一個の穴も同じようにしてやるよ」
「なぁ」
 ゲーラとななしの会話を横で聞いていたメイスが、口を開く。
「その、勘違いの起きそうな会話をやめてくれるか?」
「はぁ?」
「ゲーラが始めたことだよ」
「お前にいってるんじゃない。いや、そもそもお前が開けたのが問題で、って。いつ開けたんだ? それ」
「ゲーラとメイスにタトゥーを入れられたくらいから。どうせなら耳にも開けちゃおうって」
「一人でした分にしちゃぁ、よく開けられた方だと思うぜ、これ。器用だな」
「単純にちゃんと平行に開けられるまでやり直しただけ」
「つまり燃えながら開けたのか」
「そういうこと。燃焼本能も解消できて一石二鳥だったよ」
「ふぅん」
「で、穴が開くまでそれで固定していたってことか」
 つっと、メイスがななしの置いたものに視線を落とす。ゲーラはななしの耳に飾ったものを触りながら、気のない返事をした。黒い三角を垂らしたチェーンが、光に当たって姿を見せる。
「まぁね。聞いた話だと、時間かかるって聞いたけど」
「あー。聞いたことあるぜ。化膿するって話だろ?」
「俺たちバーニッシュの体は便利だからな。まぁ、寝れば回復するところがある」
「傷も治ったりするし」
「だな」
「そこは、若さのせいだってもいわれるな。若年寄りの連中から」
 あまりいってやるんじゃないぞ。といいながらメイスは手元のライターで遊ぶ。多少の年季が入ったジッポライターだ。正規品と比べると微かに曇っている。
「バーニッシュ全員がそうじゃん」
「燃えていたらの話だ」
「だったらそいつらが弱ぇってだけの話だろ。強かったらその分速ぇし」
「まぁ」
 ななしはグルっと視線を回す。
「そうかもね」
 そう返しながら、ピアスの調子を触って確認した。


<< top >>
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -