ボスに傘を持っていく

 バーニッシュは雨が降っても平気だ。体内で燃やす炎で服や体の水気を飛ばすので、体が冷える心配はない。けれどそうでなくなった今、そのような裏技をすることはできない。
 ──そういえば、出かける前、ボスって傘を持って行かなかったな。
 そう思い出し、予備の傘を持ってボスのいそうなところに向かうと、ゲーラとメイスの二人と出会う。
「あっ」
 みんな考えることは同じなんだね……。そう思いつつ、お互い誰がボスに傘を渡すかで話し合って歩いていると、ボスの姿が見える。なのに、見慣れぬ影が二つ。
「えっ」
「は?」
「おー! ご苦労さん! いやぁ、助かったぜ! ちょうど雨が降り出してよぉ」
「雨の中突っ走ろうとするのはアンタだけよ!! ところで、三人とも傘を持ってきているみたいだけど、もしかして……?」
 首を傾げるアイナ女史からボスに顔を向けると、ボスは気まずそうな顔をしている。そして目を逸らした。
 私たちが状況を飲み込めない内に、ガロ青年は私たちの手からポイポイと予備の傘を奪い取った。
「ほいほい、と! よぉーっし。これで雨に濡れる心配はなくなったぜ。これでいいだろぉ? アイナ!」
「いっ……! いいわけじゃ、ないけど……。その、いいんですか?」
 ガロ青年の勢いに押されつつも困ってたのは事実らしい。おずおずと不安げに尋ねるアイナ女史に、私たちもなにもいえなくなる。
 ゲーラとメイスと顔を合わせる。そして、一つの結論に出た。
「あぁ。いいぜ」
「ボス、帰りは遅くならないように」
「はしゃいでも程々にね?」
「お前らは僕の保護者かなにかか?」
 立て続けに心配をいうと、ボスに呆れられた。


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