(無題_1)きながせ

 買い物のついでにチョコレートも買った。
 一枚入りかと思ったが、どうやらそうでもないらしい。三枚入っていた。
 モグモグと一つ残らず食べる。食後の紅茶を飲んでいたら、紬が帰ってきた。
「ただいま」
「あ、おかえり。お風呂入る?」
「そうする」
 といってから、ドサッとテーブルに荷物が置かれる。その音に目をやれば、コンビニの袋だ。
 なにか買い出してくれたのだろうかと思い、中身を探る。
 スポーツドリンクに、チョコレート。
 それだけだ。しかも、私が買ったのとは色違いのチョコレートだ。
「あれ。どうしたの? これ」
「あぁ、お前が好きそうだと思ってな。嫌だったか?」
「うぅん、全然」
 と答えてから、封を切る。同じように食べていたら、一服をしていた紬が思いついたようにいった。
「あ」
「ん?」
「俺にも一枚」
『くれないか』といおうとしたんだろう。その煙草を指に挟んだまま呆気に取られた目には、私の食べたチョコレートが映っている。
 一枚も残らず、口の中に入った。味わい尽くしていると、紬は目を覆って唸った。「あー」なんていう情けない声付きだ。
 ゴクンと喉を鳴らす。ペロリと舌なめずりをしたら「はぁ」と紬に溜息をつかれた。
「今からでも、遅くないか」
「ん?」
 なにが、という無言の質問に答える暇もなく、顎を掬われてキスをされる。不躾だなぁ、と思いつつ、無遠慮に入る舌を受け入れる。
 相変わらず、苦い。
 私の舌に残るチョコレートの味だけを掬い取るようにして舐め終えると、チュッとキスが終わった。
 同じように舌なめずりをする紬にいう。
「煙草で痺れてる舌で、わかるの?」
「あんたの味を味わうくらいには、わかるさ」
 そういって、またキスをした。


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