ゾンビ話(在学中)

「そういえば、もしゾンビの大群が襲ってきたらどうします? しかも攻撃されたら感染するヤツ」
 突然の例え話に、猿投山は「はぁ?」と聞き返した。例え話で軍事の話題を出すことは、いつものことである。(なんでだって、ゾンビが)と猿投山は思いつつ、答えた。
「そりゃぁ、まずは籠城戦だろ。本能字学園に避難すりゃぁ、十中八九は安全だろうな」
「内部でパンデミックが起きない限りは、ですね。感染者が紛れ込んでたら、すぐにここも崩壊ですよ」
「だったら、血も涙もねぇクビ切りだ。例え四天王だろうと、本丸を陥落させるくらいなら切り捨てる」
「容赦もない。けど、そっちの方が大衆は納得しますからね」
「そういうことだ。で、犬牟田や伊織の分析が済み次第、対ゾンビ専用の極制服を着てゾンビ対峙をする! ついでに元凶もぶちのめして解決だ!!」
「集団を統括する立場がいれば、ね。病原菌だった場合は、ワクチンですね。とりあえず、初期の段階で生け捕りが必要になるか」
「あー、なんか聞いたことがあるぜ? ゾンビを誤魔化すために、ゾンビの体液を擦りつけるってヤツ」
「そうそう。まぁ、やるのもその有益性が確立してからなんですが。収容者の受け入れに時間がかかりそう」
「あー、瞬時に区別する目安作ってパッと配布して一ツ星に任すしかねぇな。こればかりは人海戦術が頼りとなる」
「ですね。あとは食料にしても、収容人数全員分の食料は一ヶ月分は確保していますし」
「まったく、用心深いお方だぜ。皐月様はよ」
「ですね。あぁ、問題は特になかったか」
 会話が終わる。こうなると、文月は用がないといわんばかりに、さっさと立ち去る。それが少し、心惜しい。猿投山の顔に、ありありと不満げが出る。プイッと顔を背けたのを見て、口を開いた。
「おい」
「なんですか」
 どうにかして話を繋ぎ止めようとする。
「なんだって、ゾンビの話になったんだよ。あるとすりゃぁ、生命戦維の反乱だろ」
「それはそうですけど、今は私たちに着られてるじゃないですか」
 意外と食いつきがよかった。文月はその場で一回転し、自分の極制服を見せる。着用者の意志に反して服が動くことはない。「だから」と文月は続ける。
「似たような脅威性で既に議論されているものを、話題に出したというわけですよ」
「ふぅん。けどよ、忘れてねぇか? 生命戦維の脅威ってヤツをよ」
「それは勿論。あぁ、だとすると入場制限の話はなくなるか。なにかしらのパンデミックが起きない限り」
「けどなぁ、なんてたって、本能町だぜ? 極制服の暴走で一ツ星が町中にパンデミックを起こす可能性もあるぜ」
「あら、意外と頭を働かせる。先輩って、ちゃんと考えることができたんですね」
「んだと?」
 突然の発言にキレる。酷い物言いだ。反射的に文月の肩を掴んだ。グッと距離を詰め、至近距離で睨む。襟首を掴もうとした途端、自分が酷く近い距離にいることに気付いた。腰の棘が文月を貫きかける。ボッと顔を赤らめた猿投山を見て「どうしたんですか」と文月が太々しそうに尋ねる。それに、文句の言葉が出てこなかった。


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