ねだって失敗するさなげやま

 もぞもぞと先輩が隣に潜り込む。人が寝ている最中だというのに、まったくこの人は。そう思いながら寝た振りを続ける。深い眠りに入ろうとする前に、もぞりと先輩が近付いてきた。背中にぴったりとくっついて、お腹に腕を回してくる。
「なぁ、千芳。しようぜ?」
 どういうお願いの仕方だ。お尻に硬いのをわざと当ててくるし。残念ながら、私はそういう気分じゃない。無視して寝た振りを続けた。
「なぁ、千芳。ダメかよ」
 その通りである。でも、昔と比べたら成長した方かも。昔だと、人が寝ているのを無視して寝込みを襲ったり、そのまま最後までしようとしていたし。かくいう私も、それに似たようなことをして、先輩に最後まで付き合ってもらったことはあるけど、うん。
 身に覚えがありすぎて、寝返りを打った。薄く目を開けて、先輩と向き合う。先輩、すごく不貞腐れた顔をしているな。
「眠いんですけど」
「俺のタマもパンパンだぜ?」
「一人で抜いてください。できるでしょう?」
「できるけどよぉ」
 だから拗ねた声を出さないでほしい。こうお願いすれば、こっちが折れるっていうことを折り込み済みなの? 思わず睨む。先輩がますます拗ねた目をした。
「ダメかよ。もう二週間だぜ?」
「そういわれても。そういう気分じゃないから、無理なものは無理です」
「ちぇっ」
 拗ねたように唇を尖らすものの、離れる気も出るつもりもサラサラない。絶対、断られても一緒に寝るつもりできたでしょ。この人。ため息を吐きそうになりながらも、先輩に付き合う。
「触るくらいなら、いいですよ」
「なに?」
「でも挿入は無しです」
 そう言い切ると、ジッと先輩が見つめてきた。これは、すごく不満がある顔だ。ボソッと「生殺しじゃねぇか」と先輩が呟く。その不平を露わにする一言に、なにも答えないでおいた。もぞっと先輩に近付き、前髪を軽く脇に除ける。露わにした先輩の額へ、チュッとキスをした。まだ先輩の不満たれた視線が喉を貫く。
「どんだけ我慢しているんですか」
「テメェの想像以上だ」
 速攻で乱暴な言葉遣いで返される。地味に八つ当たりも入っている。これにも、なにもいえなかった。


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