バーガー

 SNSで最近話題の月見なんたら。そんなに百個より百人の方がいいとオススメする人がいるのなら、一度でも食べてみたい。でも勝手がわからないので、先輩にお願いして一緒についてきてもらった。色々と種類がある。とりあえず、ベーシックなのを選んでみよう。
 セットで頼んだら、うん。ポテトは美味しかった。なんというか、うん。全国どこでも食べられる美味しさといえば、そうかもしれない。
(正直、近所のパン屋さんで出されるバーガーの方が、まだ美味しい)
 ちゃんとソースも美味しいし、万遍なく入ってるし。同じ値段でも、そっちの方がまだ美味しい。あと近所でも美味しいと評判だし。そう考えたら、先輩がポツリと呟いた。
「思ったより美味ぇな」
「えっ」
「あ?」
 疑問に思って顔を上げると、ジロリと此方を睨む先輩の顔が見える。数秒、察したのか「チッ」と先輩が顔を反らした。
「昔、食ってたんだよ。っつーっても、北関東番長連合ができる前の話だけどな」
「へぇー」
「二四時間やってるわ、どこにでもあるわで便利でな。よく利用していた」
「そうなんだ、ビッグマック?」
「食べ盛りには、ちょうどいいかもな。けどよ、金がねぇヤツもいる。薄っぺらいのを全員で頼んで食ってたな」
「へぇ。ポテトはLサイズ?」
「を二箱くらいだな。全員で出せねぇヤツの分も割り勘すりゃぁ、そこまで痛まないからよ」
「そ」
「まっ、舎弟たちにンな苦労かけさせられねーから、俺が出してたんだがな」
「そうなんだ」
 人の言葉を遮ったら、すぐ評価を覆すことをいう。つまり、先輩にばかり負担をかけさせるわけにはいかないから、みんなが不足分を出し合ったということだろうか? なんというか、人の良い人たちの集まりだな。もう一口を食べる。パテという存在を改めて知ったけど、やっぱりハンバーグの方が美味しい。ソースも、端に寄らず全体にかかってほしい。
「そんときと比べたら、美味いってこった」
「そうなんだ」
「おう。ポテトも時間差でヘタれてねぇしよ。ちゃんと揚げたてだぜ。これ」
「確かに美味しい」
 それは認める。
「コンビニよりも美味しい」
「違いねぇ」
「それに」
 薄っぺらいのに、半分くらいだけでもう満腹感がある。パン屋で買えるハンバーガーとは違う。
「全国で均一に食べれる美味しさでいったら、美味しいです」
「回りくどいな。素直に『美味い』っていっちまえばいいものよ」
「パン屋さんのと比較しちゃうから。チェーン店としては、美味しいです」
「お前の中の『チェーン店』の評価、気になるぜ」
「同じ料金を払うなら、その土地での新規開拓に励むほうです」
「なるほどな」
 そういって、先輩が最後の一口を食べた。


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