相手にしてくれない(猿投山は拗ねる)

 受験勉強も佳境に入った千芳は、最近自室に籠りっぱなしらしい。時々猿投山を揶揄うために蛇崩や蟇郡と一緒にこんにゃく本舗に行くんだが、こちらもどこかへ出かけているのらしい。「最近修行に精を出しているよ」とは、猿投山の身内の証言だ。
 いわれた場所へ向かうと、猿投山は滝修行をしていたり、崖で素振りをしていたりなどしていた。というか、北関東にこんな場所があったのか。意外だな。
「へぇ、修行に精を出しているじゃない」
「うむ。初心忘れざるだな!」
「まぁ、単純にそれぞれの本懐に入ったってことだろ。あ、気付いた」
 俺らに気付いたのらしい猿投山が、竹刀片手にこちらへ近付いてきた。
 滝修行をしたあとか、全体的に濡れてるし、上半身裸に袴とはいかがなものか。その格好で街に出たら、100%職務質問をされることは確実だね。
 カチャリと眼鏡を掛け直していたら、蛇崩と蟇郡が猿投山に尋ねていた。
「猿くん、なぁにをしていたのかしらぁ? 千芳に構ってもらえなくて寂しかったとか?」
「こら、蛇崩! 猿投山は元々、剣の道を究めるために、この道を進んだ身。茶化すようなことはいうな」
「――を」
「うん?」
 ボソリと猿投山の呟いた小声に反応する。
 猿投山は、修行の一環か。あの時に見慣れた緑色のハチマキを目に巻いたまま、呟いた。
「孤独を、極めていた」
 なるほど。千芳に構ってもらえなくて寂しいのか。
 それと同じことを、蛇崩が猿投山にいっていて「違うわっ!」とツッコミを貰っていた。
 まぁ、それはともかく。猿投山、お前。袴の下にヌーディストビーチの装備をしているのもどうかと思うぞ。気に入ったの? お前。


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