だるい

 舌の付け根が痛い。口内炎だ。
(少し、疲れてるからかな)
 ストレスも取れてないし、ビタミンCも不足していることもある。カパッと中身を見る。冷蔵庫の中はスカスカだ。コンビニかスーパーで買い足さないと。
(でも、スーパーの方が安い)
 それに種類も多い。そういえば、先輩がドラッグストアに行ったんだっけ。まずったな、ついでに買ってきてもらえばよかった。
(けどお金)
 そうだ、財布の都合があった。レモン果汁百パーセントの瓶を出して、冷蔵庫を閉める。もう一方の棚を開けば、ハチミツがあった。まだ量はある。それらを自分のカップに入れて、お湯で溶かして薄めた。
(よし、完成)
 簡単なはちみつレモンの完成である。これで手軽にビタミンCも摂取できる。心なしか、口内炎も少し和らいだような気がした。
 疲れたのでリビングで転がる。カップをテーブルに置いて、クッションを抱き寄せる。どうしよう、エクササイズとかヨガでもしようかな。カーペットの上でゴロゴロとしてたら、先輩が帰ってきた。
「たでーま、買ってきたぞぉ」
「んー。おかえり」
 ゴロンとうつ伏せになれば、先輩がリビングに入ってくる。あ、渦って呼びたくなっちゃった。
(どのタイミングで、いおう)
 そもそも、渦って呼び捨てにしていいのかさえ迷う。ボーッとしてたら、袋が目の前に置かれた。ゴムの箱が見えるけど、無視した方がいいのかな。
「一箱、千円?」
「いや、七百円くらいだな」
「そうなんだ。何個入り?」
「十個入りだな」
「そうなんだ」
 また同じことを呟く。もっと他にいうことはないのか? と思うものの、ない。特にいうとしたら、単価の計算であろう。一つ辺り、七十円。
「大量に買った方が、安くならないかな」
 そう呟くと、先輩が袋を片付ける。
「通販で買うしかねぇだろう」
 まとめ買いしかできねぇよ、と先輩が割引のことをいう。テーブルに、買ったものが並んだ。
「マスク」
「風邪を引きやすいからな」
「トイレットペーパーと、ティッシュ」
「切れかかってただろ? 買ってきておいたぜ」
「ありがとう」
 重たそうな消耗品を買ってきてくれたのらしい。これはありがたい。あと、お菓子もある。スナック菓子と駄菓子。とりあえず酸っぱいものを食べようかな。
「ん」
 先輩が軽く唇を突き出す。「なにしてるの?」と聞けば「キス待ちだ」と返ってきた。唇、かさついてるのに? リップ待ちだと思ってた。
「今、口内炎だからキスできないよ」
 そう現実を話せば、パチッと先輩が目を開いた。
「そうか」
 といって、唇を突き出した状態をやめない。「じゃ、塗ってくれ」と甘えたことをいうので、ゆっくりと重い腰を上げた。
「仕方ないなぁ」
 ぼやいて、部屋に戻る。先輩もついてきて後ろから圧し掛かってきたけど、好きにさせておいた。リップクリームを出す。
「塗る?」
「塗ってくれ」
 そう甘えたことをいうので、塗ってあげた。キャップを外して、中身を回す。先端を先輩の唇に当てて、潤いを与えた。さっきより、テカテカしている。
「これ、間接キスじゃん」
「だな」
 舌さえ入れなきゃセーフか? と尋ねてきたので「ダメ」とだけ答えておいた。


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