無茶はする(卒暁後)

 ちょっと疲れて寝ることも間々あって、寝落ちすることもある。そんなとき、決まって目を覚ますと先輩が下敷きになっていた。今回は、先輩の胸で寝ていたのらしい。Tシャツに涎の痕が、ある。
「どうして退かさなかったんですか」
「寝てる恋人を退かす男がいると思うか?」
(いると思う)
 と、ここでいったら確実にヤバいだろうな。そう思って心の内に返事を留めた。見ると、寝転がりながらスマホを見ていた。
「痛くないんですか、腕」
「たまに変えてるから問題ねぇよ」
「枕にしている方も」
「座布団の寝心地が悪かったんだよ」
 なるほど、丸めた座布団を最初は使っていたのらしい。それも寝心地が悪いからという理由で、手の方に変えたと。
(痺れないだろうか)
 そう思って体を起こすと、先輩が視線だけでこちらを追ってくる。起き上がる気配、なしだ。軽く膝を立てたまま、床に寝転がっている。
「ちゃんとお布団で寝ましょうよ。ベッドか」
「ここで寝落ちした人間のいう言葉か?」
「無理をしてたのは謝りますから、ちゃんと寝ますし」
「ふぅん。本当かねぇ?」
「本当ですよ」
 確かに、ちょっと深夜に起きて作業はしてたのは本当だけど。気になるし。そう濁しながら月末の清算を考えてると、ジッと先輩にジト目で睨まれた。うっ、そんなに見られても。
「おにいさんの、負担増やすのも嫌ですし」
「お義兄さん、ねぇ」
「な、なんですか」
「いや、別に。兄貴のことだから上手くやってくれると思うぜ」
「だからって、任せっきりにするのは」
「お前が倒れる方がヤベェだろ。色々と痛いぜ」
 俺の気持ち的によ。そう情けに訴えるような言い方をするので、返答に困った。
「そ、れはそうですけど。じゃぁ、そうならないように気を付けてください」
「は? お前が気を付ける方が先だろ」
「それはそうとして、無茶なお願いですし。私だって色々とやることが」
 ある。そういおうとした瞬間、先輩の凄んだ顔と出くわした。あ、これは滅茶苦茶怒っているな。
「じゃぁよ」
 ガシッと私の両肩を掴む。ミシミシと骨が軋んでしまうほどに痛い。
「寝るしかなくなる状況にすりゃぁ、問題ないよな?」
「は」
 はい? と問い返す間もなく、先輩に引き寄せられた。


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