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2022/02/13

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 ひゃっほい!! 私は思わず大ジャンプをした。ドラルクさんって料理上手だし、そこまで創意工夫を凝らすなら、ファストフードも得意じゃない? と聞いたら話に乗ってくれたのだ。目の前には、超ボリューミーなバーガー。しかもドラルクさん渾身の肉の具だ!! 入ってるお野菜も瑞々しくて美味しそう! タラリと垂れたソースは、グルーミーソースかな? ジョンくんも物欲しそうに眺めている。
「まったく、柄にもなく力を入れてしまったよ。こらこら、ジョン。君はもう充分に食べたはずだろう?」
 なるほど。ジョンくんは試食係で、もう充分すぎるほど食べてしまったと。ダイエットの身だと、食事制限も仕方ないよね。パクッと一口食べる。ジョンくんへ感じた悲しみが、吹き飛んでしまった。「美味しい!」口から思ったことが、そのまま出る。慌てて口を隠そうとしたら、ドラルクさんにニッコリ笑われてしまった。
「それはそれは、どうも。料理人冥利に尽きるよ。ところで、他にもデザートや飲み物もあるけど、食べるかね?」
 食べる!! 思わず挙手をして言ってしまう。まるでファストフードのフルコースだ。とても美味しい料理に頬を押さえてたら、ドラルクさん。とっても幸せそうに笑っていた。いったい、なにがあったんだろう。モグモグと、またもう一口食べた。 

2022/02/13

94
「たまにはちょっとした息抜きも必要ですよ! ほら、ゲームしましょう!! ゲーム!」そう恐るべき吸血鬼死のゲームが語り掛けるけど、やめてくれないかなぁ。クソゲー仕掛けてくるから……。と、ちょっと遠慮してしまう。だって、ね? ドラちゃんから預かったものの、中々。このクソゲーは癖が強い。「まだまだこんなものじゃないですよ!!」「ほらぁ! そんなところで死んじゃった!」流石にストレス限界突破すると、そんな愛らしい声援にも毒づきたくなってくる。わかりまして?
「せめてアシスト機能とか、さぁ」
「だったら攻略に歯応えあるゲームの世界に行きますか!? どうします!?」
「うん。すごく死のゲームって感じがする」
 絶対血管ブチ切れそう。そんなこと話したら「血が多いと健康そうでいいですよね!!」ってゲームが鼓舞してくれる。うん。今、仕事のストレスがヤバいから待って……。ドラちゃんから預かったゲームは、限界判定のメーカーになっていた。後日、休みを取る。
「ファイト、ファイト!!」
 なんか声援を送る姿は、不覚にもかわいいなって思った。 

2022/02/13

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「そういえば食と性の好みが直結していることを、君は知っているかい? 辛いものが好きな場合はマゾな性質を持っていたり、甘いものが好きな場合は脳のストレスを受け付ける耐性が低くてサドだったりと。いやぁ、人間って性癖に関する研究も科学的に進めているものだから、面白いよねぇ!」と、目の前でY談おじさんがにっこりと笑う。片手にお馴染みのステッキ。両手で顔を支えての頬杖、小さく小首を傾げての愛らしいキャッチアイ。ついでに私は食事中。なに? いやがらせ?
「なら、ミルクとパウンドケーキを食べている自分は、なんでしょうね」
「恐らく子どもっぽいところがあるだろうねぇ。大丈夫。安心してほしい。最高に面白くなる瞬間に、私のY談波を発動させるから」
「全然安心が保障できてない」
 なんなの、このおじさん。にんまりと笑うおじさんは巷で騒がせるY談波を放つおじさんらしいけど、今の私には一方的に話しかけるおじさんでしかない。たまにタメになることも話すけど、その|殆≪ほとん≫どが性癖と人間の脳と五感に結び付いた哲学的な仮説や理論の話。本当、なんなんだ。このおじさん。よくわかんない。 

2022/02/13

94
 カンタロウさんから『辻田さん』という人の存在を聞いた。というより吸血鬼≪ひと≫、だろうか? ダンピールとしての力が強くない分、普段は耳を隠すような髪型や格好をしている。なので吸血鬼らしい辻田さんには、なにも気付かれていない。「なんか、カンタロウさんから修行僧をしてるって聞いたんですが」「ぐっ! ま、まぁそんなところだ」「ホームレスなんかじゃなくて?」「吸対の癖にしつこいぞ」「吸対だからですよ」現場には出れないけど、事務処理なら自信がある。質問責めの私に、辻田さんは目を逸らす。たまにご飯を差し入れされている身だから、強くは出られないらしい。(もし辻田さんが指名手配になっても)危険度B級以下だから大丈夫だろうな、とぼんやり思った。今日のタイムセールス、間に合うかなぁ。 

2022/02/13

94
 新横はなにもないのに、高等吸血鬼とか吸血鬼のホットスポットで超ヤバい。そんな地域に住んでて生活をしているわけだけど、ランニングをするだけでも大変だ。変態が出てくる。ゼンラニウムにへんな動物に、ビキニ一丁。「マイクロビキニだ!! 貴様も我が眷属にしてやろう!」と名乗り出たところで、退治人《ハンター》さんに殴られて注意を受けていた。今日も愉快な新横である。そんな日に、一匹のアルマジロを見付けた。河辺で穴掘りをしていて、買い物の途中なのか。自分の殻と同じポシェットを提げている。連れて帰ろうとすると「ヌー、ヌー!!」と泣き出した。ビキニを捕獲した退治人さんが慌てて駆け付けてくる。どうやら彼の同居人らしい。みっともなく取り乱している様子を見て、このアルマジロの重要性を再認識した。 

2021/10/27

94
 本社から「地元サラダ焼きの素晴らしさを伝えるために東京へ支店出そう!」 から一転して予算と土地と顧客層の兼ね合いで新横商店街に店を構えたわけだが、この時間帯はやはり客が少ない!
(まぁ、おばちゃんらが買ってくれるだけ有難いか)
 因みに頻出する下等吸血鬼を駆除しにきた退治人も買ってくれるから、臨時収入になる。下等吸血鬼から店や食材売り物を守るので精一杯だが。(手当てほしい)地元はコレほどのものじゃなかったぞ!? 今度社長に直談しよう、で気付く丸いものの存在。
(あれ?)
 こんなところにアルマジロ、いたっけ? 動物園から逃げ出したのだろうか? にしては人馴れしている。売り物のサラダ焼きをジーッと見つめて、垂らした涎をそのままにしている。そんなに腹が減ったのか? そんな目で商品を見詰められると居た堪れないので、思い切って尋ねた。店の世間体もあるわけですし。
「あー、お客様? もしかして、今川焼きをお求めで? 一個100円だよ」
 そういうと、アルマジロがパッと顔を上げた。値段を聞いたからだろうか。肩から腰へ提げたポーチに手を突っ込み、なにかを探している。財布だ。がま口財布を開けて中を確認してから、パァッとした表情で100円玉を天へ掲げた。アルマジロも見上げている。
(一個買うのかな?)と思いきや、もう二つ出す。合計で300円だ。「今川焼き、3個で?」なるべくアルマジロと視線を合わすように身を乗り出せば「ヌ!」とアルマジロが鳴いた。アルマジロって、そういう声だっけ?
 一旦店から出て300円を貰い、出来たばかりのサラダ焼きを詰める。ずっとサラダ焼きの方を見つめてたし、貰うときにサラダ焼きの方を示していたからそうだろう。
 アルマジロには届かないので、店から出て手渡す。「はい、どうぞ」「ヌヌヌーヌヌーン!」なに言ってるかわからないが、とにかく喜んでいるようだ。出来立てがそんなにも嬉しいんだろう。アルマジロが3個入った袋を持って、帰っていく。(途中で転ばないかな?)あの背丈と袋はほぼ同じ高さだ。アルマジロの視界は袋で見れない可能性がある。(少し不親切だったかもしれない)とはいえ、アルマジロの客は初だ。どうしようもない。今度来たときの対処を考えよう。
 考える。
 近くの公民館で指導を終えた大口客が一人、腹を空かせてやってきた。 

2021/10/15

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『苗木田 葵《なえきだ まもる》』『天竺 葵《てんじく まもる》』どちらも『葵』で双子かドッペルゲンガーだと思い面接に採用したら、まさかの同一人物だった。(しまった)顔写真は不要、なんていわなかった方がよかったな。なんて、後悔してももう遅い。目の前にいるのは、全裸で股間にゼラニウムの花を咲かせた吸血鬼だった。比喩ではない。文字通り【満開のゼラニウム】の株である。咄嗟に目を覆わなかっただけ、偉いと自分を褒め称えたい。
「えぇっと、それで。この仕事に志望した動機についてですが」
 あっ、ヤバい。声が震える。そもそも、どうして吸血鬼がここに? なんで全裸? これが吸血鬼の流行りなの? よくわかんない。動揺している此方を余所に、全裸の吸血鬼は恥ずかしそうに理由を述べ始めた。
「実をいうと、我が眷属に良いものを与えたくてだな」
 はぁ、と相槌を打った方がいいのだろうか、よくわからない。
「巷で聞く栄養剤なのだが、おっと。こらこら、不安だからって付いてきたのか?」
「あっ、お帰り下さい」
 これは手に負えない。ほぼ全裸の吸血鬼に加えて、お尻に足を生やして腰蓑の代わりにゼラニウムの花を無数に纏う生物なんて、手に負えない。履歴書を複数出したことは特に突っ込まず、お帰り願い出た。全裸の吸血鬼は悲しそうな顔をしたが、すぐに応じてくれた。すまない、本当に私の手に負えない。
 電話片手に、VRCへ相談をするかどうか迷った。  MORE

2021/09/14

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 月光が影を照らし出す。遠い故郷を思い出していると、砂浜で砂になっている人物がいた。──いや、人物か? 遭遇者は疑問に思う。目を凝らせば、傍らにアルマジロがいた。ヌーヌーと泣いている。「あっ、ヤバい!」「水はヤバい!」「海はヤバいって!!」「流されちゃう!」砂の山も叫んでいた。多分、吸血鬼だろう。手持無沙汰の遭遇者は、波打ち際に触れるか触れないかの勝負をする砂の山に近付く。「こんばんわ。楽しそうですね」「どこが!?」砂の山のツッコミが炸裂する。その横でアルマジロが「ヌーッ!?」と叫んだ。一先ず、持っていたバケツで砂ごと砂の山を移動する。「あっ、待って」「混ざっちゃう!」そんなことを砂の山が叫んでいたが、無視することにした。 

2021/09/14

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 老いは花の色に例えられ、時間の流れは種族により異なる。か弱い人間は、バイト仲間から聞いた話を思い出した。「吸血鬼が数人、個室を一室壊しかけていて大変だった」と。それが今、目の前で行われている。だが、話に聞くところと違う。どうやら一名増えているようだ。「黒髪リンとした眼差しが最高!」「男も女も関係ない!!」「その、ぐぬぬ」「アーッ!!」会話にもなっていない。この阿鼻叫喚の中、杖を持った初老の紳士が端正な顔を歪ませて笑っていた。高笑い、というヤツである。(どうしよう)これは店長に聞いた方がいいかもしれない──。かよわい人間はスタッフルームへ踵を返した。 

2021/04/30

94
 タピオカを操る吸血鬼は、元は炎を操る強力な吸血鬼だったようだ。そうデータに書いてあった。その幻想的で強さを輝かせるオーラはどこへやら、今ではすっかりタピオカ屋に勤しんでいる。あの圧倒的強者を放つ威圧はどこへ行ったんだ。そしてアルマジロのジョンに新作のタピオカを出して、自信満々に感想を待っている。
「どうだ! 前のからかなり改良を重ねたぞ!?」
 わぁ、とても必死! そんなに一生懸命取り組んでたなぁ。と思うと同時に、ジョンが四点──を伏せて五点の採点を出した。加点の一点は同情の一点である。この評価に、タピオカの吸血鬼は膝から崩れた。食を扱う職業にあるまじき膝の付き方である。手は付けるな!
 あと、昔の面影はすっかり消えていた。
(これ、絶対ジェネレーションギャップが凄そう)
 彼と暫く会ってない同郷の者たちに思いを馳せた。 

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