クリスマスが終わり、世は一斉に年末年始へ向けた正月シーズン佳境へと入った。煌びやかな飾りを纏ったツリーは取り払われ、代わりにしめ飾りが、赤緑の色合いはめでたい紅白へと一変している。
「あーあ、ったく玄関掃除なんて地味なもんオレには似合わねーのに。そもそも、さっき風呂掃除したばっかだっつーの」
 ぶつくさ文句を言いながらも信長は玄関先の砂埃を掃く。小石や草木の枯れた残骸も混じりちりとりには想像以上にゴミが溜まっていく、押し付けられたからには仕方がないと始めたが、風呂とは違い外の掃除はキリがなかった。

「あんだよ掃除はオレのシュミだよ悪ィか、……って神さん!」
「よう」
 寒くないのかその恰好、と信長の服装に引き気味で、一八九センチの先輩は言った。それもそのはず、信長はTシャツに短パンという恐らく室内着であろう恰好のまま外でごみを掃いていたのだから。対する神はというと、ウィンドブレーカーにマフラーを巻いて防寒対策が成されている。くしゃみ一つも出さないのが不思議だがしかし信長はそんなことも気にせず、思いがけない神の訪問にはしゃいでいるようだった。
「どうしたんすか、あ、もしかして今日やっぱ午前練あったとか!」
「いや、たまたま。掃除の邪魔して悪かったな、じゃあ」
「邪魔なんかじゃ、ちょちょちょちょっとそこで待っててください! すぐ戻るんで!」
待つとも言っていないのに、返事も聞かず信長は箒とちりとりを抱えて家の中へ飛んで行った。マフラーの重なりから顔を上げて神は息を吐く、天気予報によると昨日より気温がぐんと下がったらしい。
信長は宣言どおりすぐに舞い戻ってきた、短パン半そでではなくきちんとジャージを着て、先程入った玄関から今度は転がるように飛び出してきた。ドアが閉まる直前に「ちょっと玄関掃除、おわったの!?」と女性の声が聞こえてきたが、信長はその場から逃げるように神の背を押していった。

「しろよ、掃除。シュミなんだろ」
「シュミじゃねえっすよ」
 口を尖らせ信長は背を丸める、くつくつと笑いながら神が後輩の零す愚痴を聞き、二人は住宅街の脇道を並んで歩いた。向こう側から歩いてくる中年の女性を左右に分かれて避ければ、両手に吊り下げたレジ袋が忙しなくがさがさと音を立てていた。
「神さんちは大掃除しなくていいんすか」
「もう終わったから」
「料理の手伝いとか」
「うちは毎年オードブル」
「姉ちゃんのパシリとか」
「……」





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