ねぇキミは、泣きたくなるくらいに、苦しくなることはありますか?

そんな言葉を口にすることはできなくて、また目を逸らして唇を噛む。

『ボクは影だ。』

そう言ってこの決意を表して、同時にこの心を圧し殺す。

苦しくて苦しくて、苦しくて。

泣きたくて堪らないくなるようなこの心は、キミに届いているんでしょうか。

お互いの気持ちが不安で仕方ないんです。

コートを走っている時、肩を寄せて笑い合っている時、熱の籠る体を重ねている時。

どんな時でも不安は常につきまとう。

ただ火神くんのことが愛しいだけでこんなにも。

彼の甘い言葉はボクを柔らかく包んでくれるけど、いつか消えてしまわないか、壊れてしまわないか、心配で心配でならない。

そんな悲しい思考に不完全な蓋をして、いつもと変わらない、透明で、不透明な黒子テツヤで居続ける。

「黒子?」


滴る汗を拭いながら、大きな手を黒子の頬に添え、組み敷かれている黒子の目を見る。

「あ、はい…」

「何、考えてた?」

ベッドを軋ませる激しい律動を止め、静かに問いかけた。

首から離れた手は、優しく黒子の髪に落ちる。

「怖かったか?」


近頃様子のおかしい黒子が心配だった。

何が、とは言わない。何が、とも問いかけない。

弱々しく首を振る黒子に、火神は優しく口付ける。

曖昧な否定は宙に浮いたままで、どこに辿り着くこともなく、何の答えを生み出すこともない。

黒子のことを思うだけでこんなにも苦しいだなんて。


「なぁ黒子、お前、俺のことほんとはどう思ってんだ?」

その問いに、黒子はびくりと体を震わせ、その顔を強張らせる。

「なぁ…」

何も言わない黒子に、火神は耐えられなくて。

目をきつく閉じてしまった黒子には、そんな火神の表情はわからない。

「あの…えっと…あの…」

「なんだよ…」

意に反して、苛立ちが混じってしまったようなその言葉に、ついの一筋の涙が黒子の頬を転がり落ちる。

「ごめ…なさい…」

しゃくりあげる音が微かに聞こえるだけで、それ以上の声が聞こえることはない。

「なぁ…俺…なんかしたか…?」

ようやく開かれた黒子の瞳に写ったのは、苦しそうな火神の顔。

辛そうな火神の顔を見ると、余計に胸が苦しくなって。

最初の一筋以来こらえていた涙が、堰を切ったように溢れ出す。

「わかんねぇよ…なぁ黒子…なんも言わねぇとわかんねぇんだよ…」

子供のように泣き出してしまった黒子を目の前に、火神はどうすればいいのかわからなくなった。

髪に触れることも、体を抱きしめることもできない。

なぁ黒子、俺はどうしたらいいんだよ。

口に出さなかったその問いに答えが出ることはない。なのに。

「火神…くん?」

黒子の薄い胸に落ちたのは、熱い雫。

火神が泣いているのだと気がついた。

「…違う、んです火神、くん…」

嗚咽の合間にたどたどしく告げると、火神が顔を上げて、互いの悲しい瞳を見つめる。

「ボクは火神くんのことが好きなんです…でも、そう思えば思うほど不安になるんです…」

黒子はしゃくりあげながら言葉を紡ぐ。

「火神くんがボクを愛してくれるほど、いつまでもこんな風にしていられるわけがないと、いつまでも火神の一番でいられるわけがないと思ってしまうんです…」

だから、火神くんのそばにいると悲しくなるんです…

そう溢して。

「俺がお前のことを好きだって気持ちは、お前を安心させらんねぇのか…?」

言葉にならない悲しみは不安定な心を傷つける。

「違うんです…」

鼻をすすりながら懸命に言葉を探す。

「ただ…ただ不安なんです…」

結局形になったのはその一言だけ。でも。

「俺も不安だよ」

言葉にできない思いをこめる。

好きだから、愛しいから、歯がゆくて。

ありとあらゆる感情をぶつけるように、黒子の白い体を抱きしめる。

いつのまにか涙は止まっていた。

「俺はお前のことが好きだ。だからお前のそばにいる。それじゃダメなのか?」

恐る恐る細い腕を伸ばして。

「ダメじゃ…ないです。」

火神の広い背中に腕を回し、強く抱きしめ合う。

「I love you.」

黒子の耳に唇を寄せて、自然な口調で不自然な愛の言葉を囁く。

「なんで英語なんですか」

クスクスと笑う黒子の体に指を這わせ、まだ繋がったままだった下半身を揺らし始める。

「あっ…」

黒子が思わず声を上げたのをいいことに、火神は大きく腰を使いながら言葉を続ける。

「I was jealous of your every move. Well,you can't trust that. Mind,it is a just thinking. Are you OK?」
(俺はお前のやることなす事にイラついてんだよ。まぁ、信じらんねぇだろうけどな。これはマジだからな。わかったか?)

「何、言ってる、のか、わかり、ませっ…んっ、あっ」

慣れない英語は、熱くなりすぎている頭では理解できなくて、必死に思考を働かせてはみるものの上手くはいかない。

そうしている間にも火神は、容赦なく猛った分身で黒子のイイところを突いてくるものだから、結局その思考はあっという間に途絶えてしまう。

「なんて、言った…あっ、んっ…」

尋ねようとした短い言葉すら、自らが発する高い嬌声に掻き消されて。

「What I talked? It is that love is blird. Oops too hard for you? Ha,hah.」
(なんて言ったかって?“恋は盲目”ってとこだな。おっと、お前には難しすぎたか?)

そう言って火神は笑い声を上げる。

流暢な英語はまたしても、黒子に理解されることはなかった。

「火神っ、くん…や、あっ」

そうしている間にも、火神の熱は黒子を侵食し続ける。

繋がっている所から広がる高すぎる温度の熱は、黒子の体を蝕み続けて、黒子は与えられる快感に全てを投げ出してしまって。

「あっ…や、んっ…もっ…」

限界が近いのであろう黒子の呼吸は乱れきっていて、詰まる火神の呼吸音と相まって、二人は何も考えられなくなる。

互いの体の間で擦れる黒子自身もこれ以上ないくらいにはりつめていく。

「イくっ…あ、あっ…イっちゃう…」

「俺も、やべぇ…よ、くっ」

一際高く黒子の体がしなって、熱の塊も何度も熱い精液を吐き出して引き締まった腹を汚す。

同時に火神の体も強張って、震えながら熱い欲望を蠢く粘膜に叩きつける。

「火神くん…」

愛しそうに名を呼ぶ黒子に、優しい優しい口づけを落とす。

整わない呼吸を押さえつけながら、乱れきったベッドの上に寝転がる。

体を繋げたあとの、特有気だるさに包まれながら火神の体にすがるこの時間が、黒子はたまらなく好きで。

熱の残る体に触れながら、黒子はゆっくりと瞳を閉じる。

火神の匂いと一緒に、すうっと息を吸い込んで。

「I love you.」

言い慣れない愛の言葉を火神に。

溢れてしまいそうな思いを込めて火神に寄り添う。

行為の余韻か、はたまた恥ずかしさか、頬を染めた黒子に顔を寄せて。

「I love you,too.」

はにかみながらそう言って、二人はまた唇を重ねる。

優しい温もりに包まれながら意識を手放した。



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長いこと更新をさぼって、他サイト様の作品巡りをしておりましたw

近々、拍手お礼画面をお礼文に差し替えたいと思いますので、よろしければ拍手などよろしくお願いします(^o^)



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