兄さん。


兄さん、兄さん。




あのね、僕ずうっと兄さんのことを想っていたんだよ。

兄さんと一緒だったときは
兄さんの作ってくれたご飯美味しいな
とか
兄さんともっと遊びたいな
とか
ずっと兄さんと居たいな
とか。

キサラギ家に入ってからもね
兄さん今頃何してるのかな
とか
兄さん今どこにいるんだろう
とか
兄さんに会いたいな
とか。

そんなことを思っていたんだよ。

ねぇ兄さん。

僕はね、兄さんが各階層都市の統制機構を破壊しまわっているって聞いた時

自分も統制機構の人だけどすっごく嬉しかったんだよ。

カグツチにいるって分かった時はもっと嬉しかったさ。

だって兄さんが生きているんだ。
頑張ったら兄さんに会えるんだ。
そう思ったんだよ。

だからね、命令を無視してカグツチまで来たんだよ。





もう一度

兄さんを 殺す ためにね。


そういえば兄さん覚えてる?あの日のこと。

そうそう、僕が兄さんの腕を切り落とした日のことだよ。

あの日は幸せだったな。

だって兄さんが僕を見ててくれたんだもの。あの女じゃなくて僕を。

燃えている教会から僕を見つけた時の兄さんのほっとした顔。

僕を見た時の兄さんの一瞬呆気にとられた顔。

腕を切り落とした時の痛みに悶える顔。

…いろんな兄さんの顔を見られて楽しかったな。


なんだか懐かしいね、兄さん。



そうそう、聞いてよ兄さん。

兄さんに会うまですごく大変だったんだよ。

いきなり仇だとか言われて戦ったりとか

……あの女にそっくりな部下に会ったりとか。


あ、でも安心してね兄さん。

そいつはちゃんと殺しておいたから。

あぁ思い出すと不愉快になってきちゃったよ。


………まぁいいや。兄さんがいればそれで。



「………ねぇ、兄さん。


――――氷付けにされてる気分はどう?」

「………。」

「あぁごめん兄さん。口も塞いでるから何も言えなかったね。今溶かすから待ってて。」



「………。」

「あははっ!そんなに睨まないでよ兄さん。そんな兄さんも可愛いけどさ。さ、何か喋ろうよ!久しぶりに会ったんだ!僕は兄さんと沢山喋りたいし沢山遊びたいんだ!まぁさっき楽しく殺しあいをしたけどさ!あ、そうだ兄さ」

「黙れ。」

「えー……。」

「こんなことをして何が楽しい?ジン、この殺意はなお前のじゃねぇ。ユキアネサのだ。」

違う!!これは僕のなんだ。僕の殺意なんだ。僕が兄さんを殺したいんだ!!」

「目ぇ覚ませジン!」

「……ははっ。あはははっ。あははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!」

「ジン!」

「兄さん!残念だけどもう時間だ!!兄さんは僕が!僕が、この手で!!」

「っ!!おい!ジン!!」

「あははっ!殺してあげる!!殺してあげるよ…兄さん!!あははははははははははははははははははははははははははははははは!!」

「ぐふぁっ!がっ!うぐ…」

「あはははっ!もっと痛そうに叫んでいいんだよ兄さん!!だってここには僕と兄さんしかいないんだから!ねぇもっと、もっと声を聞かせてよ!」

「うっ…!ぐ…うぁっ…!」

「あぁぁ……綺麗だ。やっぱり兄さんには赤が似合うよ…!」

「は…ぁ……う!………ぅあ…」

「兄さん?ちゃんと顔あげてこっちを見てよ…兄さん…兄さん兄さん兄さん!!」

「ぅ………………………………。」

「兄さん?」

「………………………。」

「……疲れたのかな?んー僕も少し疲れたし、兄さんの隣で寝るね。おやすみ、兄さん。」































「…………………。」

目が覚めた。
頭がくらくらする。

ここはどこだろう。

………。

…あぁそうだ。確かカグツチの統制機構の最深部、だ。

それで…僕は…?

ええっと…僕は…あぁ、兄さんを見つけたのか。そうだ。そして僕はここまで来て…兄さんと…。

何をしたんだっけ。

……んーと、確か…兄さんに斬りかかられて、そのまま戦って、それで僕が勝って………氷付けにしたんだよな。

…………そのあとは?

…………………。

…………………………僕、は。

………………………………何を?

………………………僕は、

………………。

…………。

……あ。



あ、あああ、あああああああ、あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!


そうだ、僕は、兄さんをっ…!


「兄さんっ!!兄さんっ!!」

床の血溜まり

裂けた腹

目を瞑って横たわる兄さんの手は――

氷のように、冷たかった。

「兄さん!」

兄さんの頬を叩いても

「兄さん…!」

必死に兄さんの体を揺すっても

「お願いだよ、兄さん…!」

兄さんは目を覚まさない

「兄さん…」

氷のように冷えきった体は動くことはなく

「嘘だって…、嘘だって言ってよ」

それはまるで人形のようだ

「うっ…にいさっ…兄さぁん…目を覚ましてよ、にいさん…」





どれくらい、泣いただろうか

もう泣きすぎて涙もでない


――――僕は、何をしたかったんだろう。

僕は…兄さんを殺したかったわけじゃない。

僕はただ―――兄さんに僕を見てほしかった。

構ってほしかった

一緒にいたかった

それだけ。

それだけのはずだったのに

いつからこんなに歪んでしまったんだろう


………あぁ、でも今さら考えたところで、今さらどんなに泣いたって

もう兄さんは死んだんだ。

兄さん

兄さん

ごめんね

こんな弟で、ごめんね…


そういえば…ここは統制機構の最深部、だっけ。

確かここって窯があったよな…

………………。

あれ、窯っていつも閉まってなかったっけ?

……何で開いてるんだろう?

あの少女は…誰だ?

……敵…?

………そんなことはどうでもいいや

あ、

そうだ

あの窯へ

兄さんと落ちれば―――――


少女が何かを言っている

でも僕の耳には入らない

ただひたすらに

窯へと





あぁもうすぐ

もうすぐ僕は

兄さんと―――――


「ずっと、いっしょだよ…兄さん」


ょ。
ょ。


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