「雲雀さんいつ子供作ったんですか」
「咬み殺すよ」


長期任務が終わって久しぶりにボンゴレへ帰ってきた私の目の前には今とてつもなくあり得ない光景が広がっている。


「きょーやお兄ちゃん、この人はだれですか?」
「見ると目が腐るから見ちゃダメだよ」


雲雀さんの後ろを歩く小さな女の子が、雲雀さんのスーツの裾を遠慮がちに引っ張ってその足を止めた。

なんであの雲雀さんが小さな女の子と一緒に居るのだ。確かに小動物が好きなのは知ってるけど。大体誰との子供だ。隠し子か。というか今この女の子雲雀さんのこと…


「きょーやお兄ちゃん!?えっきょーやお兄ちゃん!?」
「殺す」
「ごめんなさい」


雲雀さんをからかうと高確率で無傷で帰れないのでここらでやめます。お兄ちゃんって呼んでるってことは雲雀さんの子供ではないんだよね。きっと。パパンとか呼んでたらもーお祭りですよ。やっと女出来たかこの堅物。


「君、今すごく失礼なこと考えてたでしょ」
「滅相もございません。わたくし十代目に任務の報告をせねばならないのでこれにて失礼」
「まだ行ってなかったのさっさと行きなよ」


はいはいさっさと行きますよーと背を向けて歩き出した瞬間、ぐぅーと廊下に響いた控えめな音。

きょーやお兄ちゃんお腹が減りました。そんな可愛いことをちょっぴり小さな声で俯きながら女の子が言った。天使。


「雲雀さん!食堂へ!さあ!」
「なんで君が張り切ってるのさっさと報告行ってきてくれる?」


雲雀さんと天使が食堂を歩き出したのを見送ってから光の速さで十代目の執務室へ向かい速やかに報告を終える私仕事出来る素晴らしい。ついでに天使の詳細ゲット。どうやら遊びに来ていた同盟ファミリーの誰かのお子さんが雲雀さんに懐いてしまったようで。その子守りをさせられていると。いやあ雲雀さんも丸くなったもんだ。


「雲雀さーん私もお腹減りましたー」
「知らないよ」
「あれま寝ちゃったんですか」


雲雀さんの膝の上でスヤスヤ寝息を立てている寝顔。まさに天使。


「かわいいですね」
「重いだけだよ」
「雲雀さんに似てませんね」
「僕の子供じゃないんだから当たり前でしょ」
「雲雀さん息子に嫌われそう、パパ厳しい!嫌い!みたいな」
「何言ってるの馬鹿なこと言ってると咬み殺すよ」


雲雀さんに向けられた鋭い言葉と目にどう返そうか一瞬悩んだけれど、それより先に唸りながら身じろぐ小さな体。


「あーあー、雲雀さんが動いたら起きちゃいますね。せっかく気持ち良くお昼寝してるのに」
「…」
「…なんだかんだ雲雀さん優しいですよね」
「うるさいよ」


「ねえ」
「はい?」
「さっきの試してみる?」
「え?」
「僕が、僕の子供に嫌われるかどうか」
「あーはあ、試すってことは、え、どういう意味ですか?」
「…だから、僕と、…なんでもない」
「えっ」


140612