私には一つ、理解不能な事がある。


「あー!名前ちゃんアル!!」
「あれ、神楽ちゃん!」
「こんにちは名前さん」
「おーあのむさいとこの嬢ちゃんか」
「銀さんに新八君も!これからみんなでお買い物ですか?」
「今日は鍋アル!名前ちゃんもくるアルヨ!」
「お鍋かー、いいなあ!でも今日は屯所に戻らなきゃだから…」


ごめんね、ありがとう。って名前ちゃんは優しく頭を撫でてくれた。私はなんだか照れて下を向いた。


「お前もよく続いてんな、あんなとこでよー」
「えーいいところなんですよ、むさいけど」
「ちょっと名前さんまでそんなこと言っていいんですか。」
「あっははいいのいいの!事実だし!」


名前ちゃんはあのゴリラとかマヨとかいるとこで働いてる。たまに外で会う名前ちゃんは毎回両手にたくさんスーパーの袋を持っている。


「よいしょっと、じゃあ私はもう…お先に失礼しますね」
「ちょっとちょっと名前ちゃん、あんたそんな大量に買ったの」
「うちは大所帯ですからね。食材はたくさん無いと…」
「ほとんどマヨネーズじゃねえかあああ!あの野郎自分で買いにこいよ!」
「銀さんうるさいです。」

「重くない?なんならうちの新八貸すけど?」
「あんた持たないんかいいいいい!」
「あれ新八くん腕落ちた?ツッコミにキレがないよ」
「えええ名前さんダメ出し!?」


名前ちゃんはニコニコしながらマヨネーズが入った買い物袋を持ち上げた。大丈夫アルカ?と聞いたら名前ちゃんは大丈夫!とまた笑って見せた。


「三人ともありがとう、でも今日は大丈夫ですよ」
「あららそんなふらふらしちゃって説得力ねぇな…ほら銀さんに貸しなさい」
「えっ、あっ」


銀ちゃんがひょいと名前ちゃんが持っていた袋を奪い取って歩き出した。あーあー格好つけやがって天パが。


「つーことで新八ィ神楽ァ買い物よろしく〜」
「あっちょっと銀さん!」
「申し訳ないですよ銀さん!私大丈夫ですから!」
「いーの、娘は親の言うこと聞きなさい。」
「私銀さんから産まれてません」


名前ちゃんは私にとって憧れの女ネ。

でも一つだけ、一つだけわからないことがある。


「おーいブタ女お前買い物の一つも出来ねぇのかィ」
「あ、沖田さん!」


クッチャクッチャガムを噛みながら現れたそいつは、サディスティック星のサド王子。気に入らないドSヤロー


「旦那じゃないですかィ名前にナンパだなんて変わった趣味してますねィ」
「あらら沖田くん嫉妬?嫉妬しちゃった?やだねーもー若い子はァー」
「はい発射用意ー」
「すみませんでしたァァァ!至近距離でバズーカは冗談きついって!」
「早く帰るぞ名前早くしろィ早くしねぇと眼球デコピンな」
「はいいいい!あっそれじゃあ銀さん新八くん神楽ちゃん!またね!」


ありがとう!と言いながらサド野郎の後ろを小走りで追いかける名前ちゃん。


私には理解できないアルヨ


「名前ちゃんちょっと待って!」


思わず出た声に名前ちゃんは振り返ってこっちへ戻ってきてくれた。


「どうしたの?神楽ちゃん」


首を少し傾げて優しく微笑んでくれる名前ちゃんは本当に優しい。名前ちゃんは優しいのに


「どうしてあんなサド野郎の事が好きアルカ?」


私が聞いたら名前ちゃんはキョトン、として暫く止まった。私はどうしても理解できなかった。


「だってきっと名前ちゃん傷つけること言うアルヨ!私許せないネ!」


私がそう言えば名前ちゃんは私の頭を撫でてくれた。あったかい。


「神楽ちゃんは優しいね」
「え…」

「確かに沖田さんは酷い!ブタブタ言ってくるんだよ!」


でもね、と名前ちゃんがこっそり指差した先には少し先に行ったところに待つサド野郎。手には買い物袋…?


「あれ…そう言えば名前ちゃん袋…」
「ね、なんだかんだ優しいんだよ」


だから、大好きなの。
そう言った名前ちゃんは今までで一番綺麗に笑った。


「ああやってさりげなくいつも助けてくれるの。たまにわかりづらいんだけどね」
「サド野郎のこと、本当に本当に好きアルカ?」
「うん、大好き」


「いやぁー若いねー」
「銀さんも恋しましょーよー」
「銀さんはオールウェイズ恋しちゃってますー」
「キャバクラですか?」
「ちょっと名前ちゃんあなた清純キャラなんだからそういうこといっちゃいけません!」
「あはは何それ」
「ほらほら早く行かないと沖田くん怒っちゃうよーあ、バズーカ装備してる」
「えええうそ!ちょ!私行きます!」



じゃあね、と手を振りながらまた走っていく名前ちゃん。

私は名前ちゃんが幸せならそれでいいのかなと思いました。でもサド野郎が名前ちゃんを泣かした時は、私がぼこぼこにしてやります。まる。




「あーあー真っ昼間から手なんて繋いでらァあの二人」
「なんだかんだ沖田さんも名前さんに溺愛してますもんね」
「いいねえ青春」


私も名前ちゃんが好きアルヨ!まあ今日はサドに譲ってあげるけどな!


「銀ちゃん!新八ィ!早く行くアルヨー!」

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title by チョコフォン