*このお話は、青の祓魔師の二次創作某サイト様のお茶会にて、アニメ18回颶風の話題から『自分の不甲斐なさから、八つ当たりされる燐』というテーマが出ました。
そのテーマに添って書き上げたものです。






『八つ当たり』




子猫丸に取り付いた悪魔を祓った後、その場にいた全員で、子猫丸を再び病院へ連れ行った。
燐も颶風との争いで負傷していたが、魔神の血の力で、病院に着くまでに完治していた。
病院側への説明や、事の報告らで、雪男が寮に戻ったのは事件から3時間も経っていた。


「おかえりー」
随分先に帰ったはずの燐は、制服を脱いでる最中だった。

「遅かったなー。なんか問題でもあったのか?あ、子猫丸、明後日退院出来るってさ」

洗濯するシャツをベッドへ投げ、ネクタイとズボンをハンガーにかけながら、燐は続けた。

「よかったよなー、大きな怪我とかなくってさー…雪男?」

燐は、雪男が部屋に入ってから一言も発しず、一歩も動いていないことにようやく気付いた。

「…何がよかったの?」
小さく低い声で雪男は呟いた。

「兄さん、本当に何もわかってないな。身近の人間が悪魔に取り付かれて、自分の命を狙ってきたって事がどういうことなのかっ」
雪男は燐の目を見て、声を荒あげた。

「な、なに熱くなってんだよ。いいじゃん、済んだことなんだし」

「バカだとは思っていたけど、ここまでとは…」
そういうと雪男ゆっくり、燐に近づいた。光りのせいだろうか、眼鏡の奥がはっきりと見えなくて表情がわからない。

「な、なんだよっ」

いつもとは違う雪男の様子に、後退りする燐。
「子猫丸も謝ってたじゃん。何が問題なんだ…痛ぁっ」

ベッド脇まで逃げたが、それ以上の逃げ場は無く、そこで止まると雪男は燐の尻尾を掴み、思いっきり握った。

「ゆき…やめっ、あぁぁっ」

「兄さんは『実戦派』だったよね。なら…実戦でわからせてあげるよ」
雪男は尻尾を更に強く握り締め、口に当てると思いっきり噛み付いた。

「ぎゃぁぁぁぁぁっ」
悲鳴と共に、燐は崩れその場にへたり込む。

はぁはぁと肩で息をするのが精一杯の燐の下着に手を入れ、乱暴に担ぐとその反動で下着を脱がし、尻尾を持ったまま、ベッドへとほうり投げた。

「っあ、ど、どうしたんだよ・・・雪男っ」
「煩いよ」
「痛っ…」
抵抗しようとする燐に、尻尾を握り応戦する。


兄さんの悲鳴がする。
そんなに痛いならどうしていつも、この急所を皆に見せ付けてるの?
ここが祓魔師の育成塾だって知ってるよね?
塾に来る者の多くが、若い人生の中で何らかの悪魔の被害を受けた者だ。
当然、悪魔へ対して良い感情なんて持っていない。


尻尾を掴まれ抵抗出来ない燐に、膝を使って股を割る。
空いている左手に唾を吐きかけ、燐の入口と自身に塗り付けると、慣らしてもないそこに押し込んだ。

「あぁぁ…っつ、痛っ…ゆ、き…やめ…」
慣らしてもないそこは、強烈な痛みしか感じしかなく、固く締め付け雪男を拒む。

当然雪男も痛みしか感じない。
それでも雪男は侵入を止めない。


ねぇ、兄さん。
三輪くんが悪魔に取り付かれてていたのに、誰も兄さんを信じなかったよね?
ついこの間、一緒に倶利伽羅を直しに動いてくれたっていうのに。
それがどういう事なのかわかる?
理由なく兄さんが人に刃を向けるはずがないと思いながら、その場を収めるのに、銃を向けた僕の気持ちがわかる?


ぷつりと、小さい音が遠くでした。
それから、今まで頑固に侵入を拒んでいた燐の中が滑るように進めた。

「まっ…痛っ…やぁっ…あぁっ」
尻尾を離し、体重をかけて出し入れすると、それを拒む様に燐は上へと体を逃がす。

その反応を見た雪男は両手でしっかりと燐の腰を掴んだ。

「ゆき…っ、あっ…やめっ…っつ」
雪男のシャツの裾を握り、懇願する燐。
その声は全く聞こえてないのか、雪男は更に腰を打ち付けた。


ねぇ兄さん。
信じて欲しいよね?
悪魔の姿になっても、皆の事大事にしてるんだって。
神父さんの様になりたいんだって。
僕だって、兄さんの事、皆に信じて欲しい。
その為に僕は監視役を引き受けたんだ。
なのに…兄さんは現実を見ようとしない。
悪魔狩りに行こうだって?
自分がいつ悪魔狩りに遭うかどうかわからないというのに!!


「おでが…いっ、ぐすっ…やめっ…痛っ」


どうして目を開けないの?そんなに僕を見たくない?
一々煩いお母さんかと、いつも言うよね?
当たり前じゃない、兄さんが心配で、心配で仕方ないんだよ。
こんなにも兄さんを愛しているのに、どうして僕を見ないの!!


雪男のシャツの裾を、縋るように掴んでいた燐の手が、力無くぱたりとベッドへ落ちた。


「…はっ」
そこには血の気を失い、涙の跡が何通りも作り、気を失った燐がいた。

ようやく、まとも燐の姿を見た雪男は、燐の腰にやっていた両手を離すと違和感
を感じ、そこに目をやった。

「なんてことを…っ」
燐の腰には余程力が入っていたらしく、
雪男の手の跡がはっきりとついており、
燐のものは元気なく横を向き、股の間を染めている赤いものが、所々汚していた。

顔面蒼白に成りながら、ゆっくりと自身を抜くと、
中にも溜まっていた鮮血が流れ出してきた。

雪男は慌てて、自分のスペースに置いてある薬品棚からいくつか薬を取り出し、
ペンライトを引き出しから取り出すと、燐の下へ戻った。



子猫丸を病室に連れ戻すと、看護師と少し話した雪男は、報告があるからとメフィストの所へ行った。

俺はそれを見送ると、勝呂たちと少し雑談をしてその場を後にした。

寄り道をするつもりはなかったけど、夕飯は作り置きがあったから、急いで帰る必要もなく、
ただ、今日起きたことを自分なりに思い返しながら帰った。

部屋に戻り、着替えたから夕飯の支度に取りかかるつもりだった。

「『魔神の落胤』か・・・。」

ネクタイを外し、なんとなしに窓の外を見て呟いた。
俺の親父は、じじぃだけだって言うのに、俺の存在だけでそのじじぃまで悪く思われている現実に、ため息が出る。

着替えている途中に、雪男が帰ってきた。
いつもと違う雪男は、俺の言葉が悪かったのか急にキレだした。
わけが分からず、説明を聞きたかったけど、今はそんな余裕すらないらしい。

雪男はこの寮で暮らすことになってからずっとイライラしている。
きっと俺が祓魔師になりたいなんて言い出したからだよな?
お前が7歳の頃から今まで築き上げて来たものを、魔神の落胤である俺の存在がダメにしているんだろう。
でも、ちゃんと証明してみせるからさ。
俺は馬鹿だから、あがくことしか出来ないんだ。

ごめんな、こんな兄貴で。
色々、無理させてんだろな。本当、ため息増えたよ。
お前がイライラを隠さずにぶつけてくれると、ちょっと安心するんだ。
この痛みは、今お前の中にある心の痛みなんだろ?
だから、雪男。落ち着いたら、ちゃんと話してくれよ・・・・。



あれから1時間たった。
手当てを終え、血で汚してしまった燐のベットから、自分のベットへ燐を移し、服を着せた。

傷は魔神から受け継いだ能力で、薬を塗り終わった頃には傷はふさがりかけていた。
けれど、血の再生までは少し時間がかかるらしく、先ほどよりマシになったとはいえ、血の気が薄い。

血を増やす薬ならある。でもそれは祓魔師用であって、覚醒した燐に使えるとは限らない。
塗り薬とは違い、何の検査もなく服用させたり、血液に入れるのには不安があった。

「ごめんね、兄さん・・・」
燐の手を握り、神に懺悔するかのように、ベット脇で跪く。


何のために、僕は祓魔師になったのか。
何のために、医工騎士になったのか。
全ては兄さんを護る為だったはずなのに・・・僕はどれだけ兄さんを傷つけたのだろう。

アマイモンが攻めて来た時も、僕は仕事とはいえ、兄さんから離れてしまった。
結果的に、兄さんは皆の前で魔神の落胤であることを露呈してしまい、騎士団の方からも命を狙われることになってしまった。

三輪君の一件も最悪だった。兄さんを生かす条件ばかり気にして、兄さんを庇わず、僕はまた兄さんに銃を向けた。

颶風が兄さんを傷つけている時も、傍にいながら僕は何もできなかった・・・。

何もかもが力不足だ。
ましてや、その苛立ちを兄さんにぶつけるだなんて・・・最低にも程がある。


「ほんと、最低・・・」
俯いて呟いた。
眼鏡に雫が増えていくが、拭う気になれなかった。


「ゆき・・・お?」
擦れた声で自分を呼ぶ声が頭上からした。
さっと、指で涙を払い顔を上げた。

「・・・兄さん、ごめん。大丈夫?」
「お前こそ、もう大丈夫なのか?」
「えっ」
なんて言うことなんだろう。この人はこんな時まで僕を心配して。
どこまで、優しいんだ。

「大丈夫だよ・・・。驚いたよね?体、まだ痛い?」
「・・・腰はちょっと痛いかも。傷はもう無いみたい。手当してくれたんだろ?」
「覚醒前と違って、兄さんに合わない薬もあるかもしれないから、効き目の薄い薬しか使ってないけど。だから殆ど自然治癒だよ」
「合う薬ってのも、作らねーといけねぇかもな。頼むぜセンセ」
燐は力なく笑う。
それは、雪男の愚行を責める気が無いのを証明していた。

「そうだね。もしかしたら、魔神に効果的な毒薬も見つかるかもしれないし」
笑顔の燐につられて、雪男も笑顔で話す。

「・・・お前、俺で実験する気満々だな」
「全ての医療は臨床実験の賜。しっかり協力して貰うよ」
「へいへい。・・・とりあえず、尻尾攻撃したら、暫くまともに動けないってメモっとけ」
「動けないの?」
「体に力が入んない」
「・・・ごめん」
「気にすんな。ほっときゃ治る。んなことより、メフィストん所でなんかあったのか?」
心配そうに燐はまっすく雪男の目を見た。

「ううん。特にはなかったよ。ただね、兄さん・・・」
握っていた燐の手を唇にあてて、祈るように呟く。

「僕は、兄さんを失うことは絶対にしたくないんだ。だからわかって。炎を簡単に出さないで。兄さんにとっては普通の事でも、周りの、特に騎士団に関わりある人からしたら、それは脅威でしかないんだ」

「・・・うん」
雪男の唇に当てられた手を、今度は繋いだまま自分の唇に当てた。

「気をつけるよ」
「どこまで、その言葉効力あるのかなぁ」
困ったように雪男は笑った。

「うるせぇよ。…なぁ…、雪男……」
燐の唇に当てていた雪男の手をそっと自身の頬に乗せる。

「・・・どうしたの?」
「え・・・・と・・・その」
言おうとしていたことが、何処かへ飛んで行っしまった。

「・・・・・や、やっぱりいい」

雪男の手は握ったまま、頬から外し、顔を真っ赤にして、目を伏せる。
雪男はその反応に、まさかと気づく。

「兄さん・・・・もしかして欲しいの?」

「お、お前・・・なんでそんな恥ずかしいことをさらっと言うんだよっ」

「だって、顔真っ赤だよ。兄さんが、そんな時に考えてる事って言ったら、ソレしかないよね?」

「う、うるさい。だって恥ずかしいじゃねぇかっ」

「・・・兄さん、あんな事の後なのに、いいの?」

「・・・・・ちゃんと、してくれるんだろ?」
拗ねたように口を尖らし、さっきよりも顔を真っ赤にして、雪男を見て言った。

「もちろん、ちゃんと兄さんが満足できるように、優しくするよ」
そう言って、雪男は燐に甘い甘いキスを何度も落とした。





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