チビ灯、ハロウィンへいく!

※泣かぬ暗闇灯ルートから派生した子供時代の灯が突然やってきた! なパラレルです。サイトの「IF」にあるショタ灯と笠原から全て読めます。

『チビ灯、ハロウィンへ行く!』

『この秋も各所でハロウィンが催され、ここ駅前も、様々なコスプレをした人達が集まっています――……』

 俺が洗濯物を干していると、チビ灯が真剣にテレビを見つめていた。十月に入ったからか、街中はハロウィン一色で、今もテレビではハロウィンのコスプレをした人の特集が組まれている。興味深そうに見ていたかと思えば、チビ灯は俺を振り返り、テレビを指さして訪ねてくる。

「りょーすけくん、この人ら、なんでこないへんてこなカッコしてはるん?」
「ああ、ハロウィンだよ」
「はろーいん?」
「えーっと、お化けとかの格好をして、お菓子をくれなきゃ悪戯するぞっていう、……行事? 的な、お祭りみたいなもんだよ」
「ふーん……」

 そう言って、チビ灯はまた目線をテレビ画面へ戻してしまった。もしかして、やったことがないんだろうか。まあ、あの家だしな、ハロウィンより毎日心霊現象体験してそうだろうし、やったことがないのも頷ける。けど、あまりにも真剣に見つめているものだから、俺はチビ灯へと声をかけた。

「やってみる?」
「! ほ、ほんまに!? ……あ、いや、えっとな、ぼくは別にええねんけど……、大変そうやし」
「いいよ、大したもんは作れないかもしれないけど、今街中でもやってるみたいだし、作って一緒に行ってみようか」
「……ええの?」
「うん」

 俺が頷くと、チビ灯は顔を明るくして、嬉しそうに頬を緩めた。

「ほ、ほんならなっ、僕りょーすけくんと……」
「ただいまー良介君」
「あ、お帰り灯」

 チビ灯が喋ろうとしたところで、灯が帰ってきた。仕事帰りの灯は手に袋をぶら下げていて、俺に笑顔を向けたけども、近くにいるチビ灯を見た瞬間眉を顰めた。

「邪魔やでチビ」
「うっさいぼけ! じゃまなのはお前や!」
 同じ人間同士なのに、なんだってこう仲良く出来ないんだろう。いや、同じ人間同士だからこそか? チビ灯が灯の事をぐーで叩いて俺に抱きつく。
「ぼくはこれからりょーすけくんとハロインの準備すんねんでっ」
「ハロウィン? ふーん、あの浮かれた集団にお前も混ざるん? あれ、混ざったら二度と帰って来れへんよ、ほなもうこの家には帰られへんなぁ」
「えっ……!? そんな……」
「嘘だよ嘘、お前も当たり前の様に騙すな」
「ふん、ハロウィンなんて僕かてやったことないし。人もゴミも邪魔やし、よう好かんわ」

 ふてくされた表情で、灯が俺の隣に座り、持っていた荷物を、テーブルの脇に置いた。

「そういえばその袋、何持ってんの?」
「ああ、これ、商店街でまた福引きしたらしょうもないもん当たってん」

 灯から手渡されたそれを見ると、今の時期だからか、ハロウィンのコスプレセットだった。黒いマントに尖った耳に牙。ああ、ドラキュラか、でもこれ、大人用なんだよな。

「いらんやん、女物の衣装で良介君に着せた方がまだ楽しかったわ」
「着ねえよはっ倒すぞ。あ、飯倉に電話してみよ」
「イークラに? なんで」
「あいつんちそういうのよくやりそうだし、衣装昔の余ってたら貸してもらおうと思って」

 俺がそう言うと、灯は面白く無さそうに口を尖らせた。

「良介君とそのチビ二人で行くん? 君ハロウィンとか興味ないやろ、なんで行くん。もしかしてハロウィンによくいる露出度高い女目当て? あんなんブスばっかやん、僕が女装した方がまだええわ」
「お前のそういう所、本当駄目。お前が女装したら大女だろうが、身長考えろ。そうじゃなくて、灯くんが行ったことないって言うから」
 そう言うと、チビ灯はドヤ顔で灯に胸を張る。両腕を腰に当てええやろ、と笑うと、灯が眉間を寄せた。
「……僕も行く」
「は? いやお前嫌いだって」

 チビ灯が焦った様に灯に言った。

「そうやで、来んでええ!」
「はあ〜? 僕がどうしようがお前に関係ないやろ。衣装もこれ、安っぽいけど僕が作り直したらそれなりになるし、お前なんかよりよっぽどええ衣装作ったるからな」
「なんでじゃますんねん! 来ぉへんで!」
「さーて衣装作ろっと」
「んぎぃ〜〜〜!!」

 チビ灯が地団太を踏む横で、俺は飯倉へと電話をかける。幸い、美幸ちゃんが昔着ていたハロウィン用の小さな衣装があるらしくて、貸してくれることになったけど、灯とチビ灯は未だに喧嘩していた。……大丈夫か? これ。

 そして当日。

「見て見てあの子、可愛い〜」
「えっ、隣の男の人やばくない? 超カッコいい!」

 チビ灯は、飯倉の妹が昔着ていた、かぼちゃのお化けの衣装。その愛らしい姿からか、すでに通りすがる人からお菓子を沢山もらって、かぼちゃを模したかごからはお菓子が溢れていた。対して、灯は衣装を自分で手直しして作ったドラキュラ伯爵。裁縫も細かければ元の素材もいいからとにかく目立つ。美形がこういう格好すると本当に絵になる。さっきから通りすがる人が何度もこっちを振り返っていた。そして、俺はと言えば。

「りょーすけくん、手ぇつなごっ」
「良介君、迷子になるから僕と繋いだ方がええよ」
「…………」

 かぼちゃおばけとドラキュラに挟まれるミイラ男、という妙な構図になっていた。さっきから注目されているのはもっぱらこの二人で、俺は全くもってスルーされてる。どころか「何あのミイラ?」「ドラキュラの生け贄?」みたいに言われて若干トラウマが開きかけてる。せめて遊んでるところを遠くから見てれば……と思ったけど、チビ灯が棒キャンディを舐めながら言った。

「楽しいなぁ、僕、ほんま嬉しい!」

 ……楽しそうだから、まあいいか。


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