子供時代渦見の話

女×男描写あり。小さい子に無理やりなので苦手な方は注意!



















 夕が言うには、俺はとっても「かわいそう」なんだって。

 夕は俺の事が大好きって言う。
 愛してるって、よく言う。
 俺がかわいそうだから、いっぱいいっぱい愛してあげるんだって。
 ずっと傍にいてあげたいって、毎日言う。
 かわいそうって、なんだろ。お父さんに聞いたら俺は、あわれまれてる? んだって。
 お父さんはそう言いながらけらけら笑ってた。俺は、お父さんが好きじゃない。
 お父さんも、多分俺のことはそんなに好きじゃないと思う。だって俺の名前、あんまり呼ばないし、終わらない夜って、まっくらだし、すきじゃない。
 おじさんの方が、優しくて好きだった。でも、最近は来てくれない。
 夕は、俺がひごよく?をそそるから、好きなんだって。
 かわいそうで、可愛いって。好きってなんだろ。
 しゅーやはまだ子供だからわかんないねって、夕は笑っていたけど、俺、お母さんのことは、多分"好き"だったと思うよ。
 少ししか記憶無いけど、あったかかった。でも、そう言うと、夕はすごく怒るし、目をさんかくにして泣くから、言わないけど。
 それに、もうお母さんと会うこともないんだって。お母さんとはもう会えないんだって。そう言われたとき、俺は胸がぎゅーってなったんだけど、でも、すぐなくなった。だって、周りに居る人たちみたいに、いつか現れるかもしれないから。

 そうなったら、もう一回あったかいのできるかな。

「ほら、終夜、ばんざーい」
「うー」

 部屋の中で、夕が俺の服を脱がした。
 お風呂に入るのかなって思ったけど、最近、夕はお風呂に入らなくても俺の服を脱がしてくる。なんで? って聞いたら、俺がが大人になるのにひつよう、なんだって。
 よくわかんないけど、夕も服を脱ぐから、そういう遊びなんだって思うことにした。お医者さんごっこみたい。お医者さんの前では、服を脱ぐから。でも、お医者さんは真っ白な恰好をしてるけど、夕は紺色の服着てる。セーラー服だって。
 ひらひらしてて、寒そう。いつか俺もそれ着るの? ってきいたら、夕は笑いながら着てもいいよって言った。
 別に着たくない。

「ちょっとまってね

 夕は服を脱ぐと、いつも膝の上に俺を乗せる。夕の太股もはむにむにしてて、全体的に柔らかい。俺とは違う。
 目の前で、夕のおっぱいがぷるんって揺れる。夕は俺の手を自分の胸にひっぱって、にこにこ笑いながら触ってって言う。このことは、二人だけの秘密だよって、くすくす笑う。
 俺はよくわからないけど、頷いて、夕のおっぱいを触った。柔らかくて、あったかくて、触ってると気持ちいい。夕は、俺のお母さんの代わりになりたいのかな? そう思うけど、でも、夕は自分のことを夕って呼べって最初に会ったときから言っていた。

 お母さんとも、お姉ちゃんとも、呼ぶようには言わなかったし、俺も夕の方が言いやすいから、ずっと夕って呼んでいる。

「ああ〜、終夜……終夜っ……!」
「んぐっ」

 手を動かしていると、夕はくねくねしながら、俺をぎゅって抱きしめてくる。俺の顔は夕のおっぱいの中に埋まって、息ができなくなる。もがいていると、夕が慌てた様に俺を離した。

「ごめんね、苦しかった?」
「うん」
「じゃあ、次は気をつけるね」
「…………」

 なんでだろう。たまに、すごく嫌だなって思うことがある。触ってるとあったかくて気持ちいいけど、いけないことなんだなって思うときがあるんだ。
 夕が、おれのちんちんをこすってくる。なんかくすぐったくて笑うと、夕もにこにこしながら、「早くでるといいね」っていってきた。でるって、何が出るんだろ? 

「何が出るの?」
「白くてすごくいいものだよ、そしたら、一番に夕にちょうだいね。中にいっぱい出してね」
「? わかった」
「絶対だよ」

 夕の言うことは、いつもよくわからない。けど、頷かないと、夕は怒って怖いから、俺は黙って頷いた。





 ある日、俺は夕に内緒で、こっそりと部屋を抜け出した。普段は、部屋に鍵がかかっているし、出られないけど、その日はたまたま夕が「しけん」で、帰ってくるのが遅かった。
 俺がすごい大声を上げて、苦しむ真似をしたら、白子たちが、ばたばたしながらやってきて、部屋の鍵が開いた。でも絶対に俺には近づかなかった。
 医者を、とか、夕様を、とか、言ってる間に、こっそり抜け出す、結構簡単に抜け出せて、びっくりした。
 白子が追いかけてきたけど、でも、俺には触りたくないのか、積極的に捕まえようとはしてこなかったから、いろんな抜け道をはしって、逃げ出した。

 部屋を出ると、すっきりした気持ちになった。
 だって、あの狭い部屋の中は、気持ち悪い。息苦しくて、何もなくて。だから、ずっと居たくなかった。

「……ここどこー?」

 でも、走って走って、走りまくってたら、俺は自分がどこに居るのかわからなくなってしまった。屋敷の中を歩き回ることなんて、ぜんぜんないから、すぐに迷子だ。
 俺は困ってしまって、でも見つかったら怒られるから、声を出さないようにして、とぼとぼと歩いた。
 お父さんに見つかったら、叱られちゃう。でも、最近お父さんも見ていない。お父さんと、ときさまに見つかったら、やだな。こそこそ歩いていると、遠くから、俺を呼ぶ声がした。

「やばっ」

 慌てて、近くの扉を開けてその中に入る。

「おい、いたか?」
「いや、いない」
「どうするんだよ、災害みたいなもんだぞ」
「龍様に知られたら……」
「いや、それよりも了英様だ。本家に知られたらひどい目に遭うぞ」

 早くいけ、早くどっかいっちゃえ。頭の中でそう思っていたら、本当にどっかいってしまった。

 それから、少しだけ時間が経った。
 誰も、来ない。みんな離れていったみたいだ。
 俺は部屋の中を歩き回る。入ったことのない部屋だった。真っ暗で、カビみたいなにおいがして、何も見えない。
 でも、大丈夫、真っ暗の部屋はなれてるから。ずっとずっと、そういう部屋にいたから。ぜんぜん怖くないよ。

「ふーん、ふーん、ふーん♪」

 夕に持ってなさいって言われた、虫取り編みも忘れて、お歌を歌いながら、部屋の中を歩き回る。ほこりくさくて、なんか、じめじめした部屋だ。
 この家は、たくさん部屋があるし、どこになにがあるか全然わからないけどけど、この部屋に入ったのは初めて。何かないだろうか、とわくわくしながら部屋を漁っていると、後ろの方で何かが揺れる音がした。

「? だれかいるの?」

 部屋の中は真っ暗だ。でも、目が慣れてきたから、うっすらと誰かが居るのは見える。顔は見えない。ただ、人影が見えるだけだ。大人の人? お父さんみたいに、着物を着ている。

「だれ?」
「……あひゃっ」

 人影が笑った。あひゃ?
 俺は近くに行こうと思ったけど、なんだか嫌な臭いがして、近づくのをやめた。錆びた臭い。腐ったみたいな臭い。ヘンな臭い。鼻をつまむと、影が笑っているのがわかる。

「あー、お前、俺と同じじゃねえか」
「……おじさん、だれ?」
「おじさんじゃねーよ」
「?」
「お前、あれか。可哀想になあ、あひゃひゃっ」

 かわいそう。
 夕と同じ事をいう。
 でも、かわいそうってなんだろう。俺は、かわいそうなの?  男の人は、よくわからないけど、けらけら笑っている。でも、ぜんぜん楽しそうじゃない。
 笑っているけど、なんとなく悲しそうに思えた。真っ暗だから、そう思ったのかもしれない。

「おじさんじゃないなら、おにいさんだ」
「お前、渦見か?」
「ちがうよ。俺はかつらぎしゅうやだよ。お母さんがそうだって言ってた」
「いいや、お前は渦見だよ」

 黒い影は、バカにしたように俺を笑った。ちがうよ、俺はかつらぎだよ。かつらぎしゅうや。でも、お母さんにはもう会えないから、渦見終夜なのかな?
 でも、俺はその人の言い方がなんだか嫌で、影に言い返す。

「違うよ、うずみは、夕だよ。あと、あさひも」
「あひゃひゃっ、じゃあそういうことにしとけば。でもどうせすぐ気づくよ。可哀想になあ、本当に可哀想だよ、俺も、お前も。あー、可哀想」
「かわいそうってなに?」
「……すぐわかる」
「今知りたい」
「そうか、じゃあ教えてやるよ」

 そう言って、おにいさんが俺の方に近づいてきた。ヘンな臭いがしたけど、俺はかわいそうが教えて貰えるから、我慢してまった。
 おにいさんの腕が、俺の方に伸びてくる。
 でも、なんでだろ。顔は、よく見えないんだ。おにいさんは、もしかしたら、生きてる人じゃないのかもしれない。おにいさんが、俺の目を隠した。

「可哀想ってのはな、すべての生き物から見下されることだよ。俺みたいなもんだ」
「? よくわかんない」
「お前も、俺と同じになる、せいぜいその時まで笑いながら生きてろ、その方がまだいいぜ、あひゃひゃっ」

 耳元で、おにいさんの声がした瞬間、扉の向こうで夕の声がした。

「終夜、どこ! 終夜! 終夜!」

 夕が、俺を探してる。早くいかなくちゃ、怒られる。

「夕……」
「終夜!」

 部屋の襖が開くと、まぶしい光が部屋の中に入ってきて、俺は目を細くした。夕が焦った顔で、俺に抱きついてくる。

「終夜、この部屋から早く出るの。ほら、来て」
「夕、でもおにいさん」
「誰もいないよ?」

 夕の言葉に、俺は後ろを振り向いた。部屋の中には、誰もいなかった。

「あれ?」
「ほら、おいで。ここは入っちゃいけないお部屋なの」

 夕に強く手を引かれて、俺は部屋を出た。部屋を出る瞬間、笑い声がした気がするけど、それを確認する前に、部屋が閉められてしまった。

「……あひゃー」
「何? 終夜」
「俺って、かわいそう?」

 夕に聞くと、夕は顔を明るくして、俺に言った。

「終夜は、とっても可哀想よ。だから、私がめいっぱい優しくしてあげるね」

 よしよしと、夕が俺の頭を撫でてきたけど、俺は、可哀想は、嫌だなあ。それを言うと、夕は怒る。怒って泣く。だから、俺は笑うのが一番いいんだって知ってるよ。あのおにいさんも、それが言いたかったのかな。

「あひゃひゃっ、俺、可哀想なんだ」
「そうよ、可哀想な終夜。早く部屋に帰ろうね」

 夕の腕に抱かれながら、俺はあの部屋に帰っていった。



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