「あ、ぐぅ、っ……! くそっ、お前ら絶対に許さへんよ! たかが白子の分際で、僕にしたこと後悔させたるからな!」

 苦しそうに呻いている灯様を、僕は決して目を離さぬよう見つめておりました。むせ返るような雄の匂い。
 獣じみた息遣いで溢れる部屋の中、灯様は、力なき様子で、未だ先輩方を睨みつけておりました。まだ、体内に薬が回り切っていない様で、じたばたと暴れております。最後の抵抗といった所でしょうか。
 しかし、僕の心臓は高鳴って止まないのです。
 それはこの空気のせいでしょうか。部屋に漂う甘い香りのせいでしょうか。
 多分、それもあるのでしょう。しかし、灯様が先輩方に嬲られ、犯されているお姿を見ると、興奮が止まらないのです。
 五体を拘束されながら後孔に男根を宛がわれ、為す術もなく貫かれる灯様のお姿は、僕の中の妄想と、寸分違わぬお姿だったものですから。僕の股間はすっかり熱く怒張し、恥ずかしながら薄い染みが溢れておりました。
 叶うのならば、僕自身の一物をあのお方を貫いて喘がせたいと思うのです。
 しかし、年功序列はどこの社会にもあるものです。僕の役割は、未だ来ず、報告と言う名の戒めの為に、夢中でシャッターを切っておりました。

「くそがっ! 死ねやあほんだら! 殺す! 殺す殺す殺す! お前ら絶対許さへん! っ、うえ、ぐ!」

 顔に精液をかけられながら、灯様は恨めしそうに吠えました。負け犬の遠吠えだね、と旭様は笑いましたが、僕にはそうは思えませんでした。


 僕は白子と呼ばれる存在です。
 名前はありません。
 いえ、もちろん仲間内で呼びあうのに不便なので名前はあるのですが、渦見の方々にとって、僕たちは全員白子ですから、名前はありません。
 それでよいのです。
 僕たちは渦見の家の方々の為に存在する道具です。役に立てれば、そこに異論はありません。僕は最近ここに仕えることになったばかりの白子で、まだ右も左もわからぬ新参者です。己の一人称も、子供っぽいので私に変えるよう言われているのですが、未だ慣れておらず僕と申してしまいます。
 そして、今僕の目の前で繰り広げられているのは、分家当主のご子息である、灯様への陵辱でした。あまりに衝撃的な光景ですが、これは罰なのだから、仕方ありません。
 本来であれば、僕ら白子が気軽に触ることすら、許されていないお方です。支配者と、支配される側。そんな方が僕らのような身分の者に陵辱されるのは、プライドが許さないでしょう。奥歯を噛みしめて耐えている灯様のお姿に、僕の胸は高鳴りました。
 なぜ、こんな事態になったかと言えば、時期本家跡取り、京花様の婿殿、旭様のご命令に他なりません。
 渦見の家にとって、本家の命令は絶対です。そして、次期跡取りの婿であり、分家当主の長男ともあれば、発言力は大きい物です。灯様が何を言っても、覆ることはありません。
 僕も詳しくは知らされていないのですが、灯様は、本家のご命令に逆らってしまった様です。いかに分家当主のご子息とはいえ、灯様は末っ子。年功序列を重んじる渦見の家では、立場は低い方なのかもしれません。
 終夜様と贄を見送った後、捕らえられた灯様を見て、旭様は仰いました。

『お前は色々やりすぎたからね。彼にしたこと、そのまま自分がやられてごらん。自分がされて嫌なことは、人にやったらいけないよ。大丈夫、死にはしないから』

 旭様は、我々白子にもとても優しく、寛大であらせられますが、時折ひどく冷たい、氷のような目をされます。
 口元に優しげな笑みをたたえながらも、灯様を我々に拘束させ、腕に注射針を刺しました。
 何の薬かは、これから起こることを考えれば、想像に難くありません。暴れる灯様を押さえつけ、先輩方が薬を打つ様を、旭様は冷ややかに見つめておりました。

『それじゃあ、今後馬鹿なことを考えないように、反省しなさい。君たち、後は好きにしてね』

 そう言って、旭様は部屋を出て行かれました。灯様は力が抜けてしまっているのか、ぐったりとしながら、僕たちを睨みつけてきます。
 普段であれば、僕ら白子など、恐れおののいて、すぐに下がっていたことでしょう。この方もまた、呪われた身であると、伺っております。しかし、今は旭様のご命令という大義名分の元、何をしても良いと言われているのです。先輩方はごくりと生唾を飲み込みました。
 僕らの中で一番長く渦見家に仕えているという先輩の一人が、灯様の身につけていた衣服をはぎ取ろうと、手を伸ばしました。
 舌でも噛んで死にそうな顔をしておりましたが、その力も、段々となくなっている様でした。その姿は、檻に囚われた獣に、酷似しておりました。

 ところで、僕ら白子という存在にも、種類がございます。
 一つは、生まれながらにして渦見の家に仕える者。親が白子ですと、そうなることが多いようです。
 もう一つは、途中から渦見の家に仕えるもの。渦見の家の方々は、本家、分家を合わせると、かなり多くいらっしゃいます。彼らに魅せられ、糧になろうと、家に入るのです。僕はこちらのパターンでした。
 この世界の醜さに絶望している中、旭様と出会い、その特異な力に惹かれ、心酔したのです。しかし、その二つの中でも、さらに細かく、仕える主というものがございます。それは白子によって違うのです。
 個人に仕えている者、渦見の家そのものに仕えている者。今、灯様を拘束しているのは、旭様直属の信者で、僕もその一人ですが、僕は実は知っているのです。
 先輩方の中でも、あまり素行のよくない、と申し上げてはなんですが、渦見の者に、劣情を抱いている方が、多く選ばれていると。
 灯様は、とても綺麗なお方です。
 端麗な容姿の者が多い渦見家ですが、灯様はお顔立ちがお母様似なのか、幼い頃は美少女に見違う愛らしさだったと伝え聞いております。今もその美しさは衰えることなく、さらに美麗に成長されました。そこいらの俳優よりも端正なお顔立ちをしていると思います。
 今は身長も延び、体つきも男性そのものですが、無駄な脂肪はなく、しなやかな筋肉がついた、バランスのとれたお体をされております。
 そんな灯様を、好きなように犯していいと言われ、興奮する者は、少なくないのです。
 僕たち白子は、例外なく渦見家に心酔しております。彼らの踏み台に、椅子に、支える糧になりたいと。しかし、その実、内面では誰よりも近づき、犯し、汚したいというふしだらな妄想も抱いているのです。劣情を己の中に抱き、それを曝け出さぬ様過ごしているのです。
 それを、晒してもよいと言われれば、こんな絶好の機会を、見逃す筈がありません。また、中には灯様に酷い扱いを受けて、復讐がてら手を出す輩もおりました。
 僕は下っ端なので、旭様への報告係という名目ですが、先輩たちのあとで、させていただけるようなので、しっかりと目とカメラに焼き付けておこうと思います。

***

 着ていた着物ほとんどずり下げられ、前を肌蹴られた灯様の姿は、とても扇情的でした。
 だらしなく手足を投げ出して、お体全体を支えられておりましたが、まだ理性は残っているのか、悔しそうに唇を食んでおりました。
 腕に打たれた薬のせいでしょうか、体温は上昇し、体がほんのりと赤く色づいております。
 しとどに汗で濡れた体は、傷のない滑らかな肌でした。こちらに放たれる視線は憎悪以外の何者でもございませんでしたが、そこで引いては、旭様のご命令に背くことになってしまいます。
 というのは建前で、本当は皆、こうしてやりたかったのかもしれません。灯様の御髪を掴み、先輩が笑いました。

「灯様、今度は私が失礼いたします」

 ぐ、と腰を掴み、先輩の一人が、灯様の中に、自らの肉棒を中へ捻じ込みました。何度も突かれた為か、あまり抵抗なく入ったように思えますが、灯様は苦悶の表情を浮かべておりました。

「あ、ぐっ……!」
「灯様がいけないのですよ、本家のご命令に逆らうから」
「っ……!」
「ああっ、夢みたいです! まさかこんな風に貴方を犯せる日が来るとは!」
「っ……! ぅ……!」

 髪に、手に、後孔に、男性器を擦りつけられ、囲まれて、鼻で息をしながら、それでもなんとか正気を保っている姿は、さすがと思います。成す術もなく四肢を犯されておりますが、渦見の人間なので、それなりに薬への抗体はあるのかもしれません。しかし、そろそろ体全体に薬が回ってしまわれたのでしょう。
 先刻まで吐かれていた罵詈雑言や呪いの言葉も、今では舌が痺れてしまっているのか、すっかり大人しくなってしまいました。少し物足りない気も致しますが、素直な灯様も、それはそれでお可愛らしい。
 ただ、瞳に宿る苛立ちと嫌悪だけははっきりとわかり、僕は背筋に這い上がる何かを感じておりました。
 先輩の一人が、灯様のお口に、自らの陰茎を突っ込みました。片頬が大きく膨れ、うめき声が漏れました。眼から零れた涙が精液と混ざり合い、布団の上に染みを作っていきました。
 あんなことをして、噛みちぎられるのでは、と冷や冷やしましたが、やはり力が入らないようです。鼻で息をしながら、赤い顔で、灯様は先輩を睨みつけました。もうそれくらいでしか、意思表示が出来ないのかもしれません。
 無理矢理頬を掴まれ、口をこじ開けられ、覗いた赤い舌の端からは、涎か精液かもわからない液がこぼれておりました。
 灯様はその身を白子の中でも一番体の大きい者に預け、強制的に先輩方の陰茎を握らされました。手も、太ももも、髪も、脇も、胸も、頬も、犯せるところは全て犯せと言わんかりに擦りつけられ、声にならない声が部屋を包みます。

「はーっ……ぐっ……うううっ……」
「美味しいですか?」
「うううっ……はっ……」

 下卑た笑い声に交じり、にちゅ、という粘着質な音が、手のひらから漏れ聞こえます。灯様は口に陰茎を含みながら、喉の奥で何かを仰いました。

「っ……ぅぐ、……すっ……!」
「何を仰っているのかわかりませんよ」
「気持ちいいですか?」
「ははは、どんな気分ですか、普段使っている者に、こういうことをされるのは?」
「案外慣れていらっしゃるのでは?」

 ぐちゅぐちゅと、卑猥な音と罵声が僕の耳に届きます。固くそそり立った肉棒が、何度も灯様の中を出入りしておりました。
 亀頭付近まで抜かれては、深く奥へ。頬にいくつもの肉棒を宛がわれ、何度顔や髪にかけられたことでしょう。肉のぶつかる音が、室内に響きわたります。ローションでヌルついた手で体をまさぐられ、首から胸、腹にかけて撫で回され、それでも抵抗が出来ないのです。灯様が使ったお薬は、そのまま灯様の自由を奪う形となりました。
 灯様は自身の陰茎を掴まれ、揉みしだかれると、強制的に射精を促されておりました。びくびくとお体を痙攣させ、足をピンと張りながら、声にならない恨み言を口の中で、何度も何度も吐いておりました。
 それが僕たちにあてての言葉なのか、それとも別の誰かに当てての言葉なのか、残念ながら聞き取ることは叶いませんでしたが、ただ、絶望の淵に立っておられるのだということは理解しました。
 何かを必死で堪えている姿は、憐憫を誘います。薬の力というのは強いもので、半ば意識を手放しそうになる灯様を、何度も何度も起きあがらせ、犯し、迸る精液をそこかしこにかけ、咥内から爪の先まで犯し尽くしました。

「あーっ、ぅ、……あっ……!」

 稀に、終夜様や、贄に選ばれていた青年の名前を口にしていたようにも思えます。しかし、それらは全て下卑た言葉にかき消されてしまいました。

「さあ灯様、灯様の大好きなおちんちんですよ」
「旭様の教えを、しっかり守りましょうね」
「う、うー……っ……ぐ」
「美味しいですか? しっかり味わってくださいね」
「灯様も、あの青年にこういうことをなさったのでしょう?」

 息を荒げながら涎をこぼす灯様の目は、どこか空を見つめておりました。あの青年、とは、選ばれた贄のことでしょうか。僕は見たことがないので、彼がどんな人物かは知りませんが、こんなことになるならば、さっさと壊して終夜様に差し出せばよかったのにと、思ってやみません。
 それから、灯様は時間を忘れ、何時間も嬲られ続けたのです。

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