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「ふんふんふ〜ん♪」
「…………」

 正直な話、もう諦めモードだった。
 散々風呂場で弄られて、イかされて、慣らされて? 俺の体力はすでに限界に近い。ていうか、精神力の方が限界に近い。抵抗する気力も無くなってきた。布団の上に素っ裸で転がりながら、鼻歌を口ずさみつつ俺にローションぶっかけてくる渦見を見て、悟りに近いものを開いていた。
 メープルシロップと同じ香りの液体が、俺の下半身にぶち撒けられる。これが本物だったら、豪勢な使い方だなあ、おい。腹の上から尻付近まで垂れてくる液体を渦見が舐めた。甘い、とか言ってる。もうどうでもいい。
 ぐちゅりと、音を立ててローションと共に指が入ってきた。

「笠原、抵抗しないんだ?」
「……もー無駄だって気づいたよ。ここまできたら突っ込まれるのも全部同じだ」
「あひゃひゃ、俺ねー、笠原のそういうとこ好きだよ」

 うるせえ馬鹿。これ以上体力削られて溜まるか。渦見は笑っているけれど、実際問題、風呂の中でされた羞恥プレイに、かなり精神力を削られている。こうなったら、もう一刻も早く終わらせて、忘れたい。なかったことにしたい。はぁ、と息を吐いて覚悟を決めた。く、来るなら来いや。
 渦見が、俺の両足を掴んで、自らの陰茎を宛がった。血管が浮く程に勃ちあがったそれが、俺の尻穴にぴたりと当てられる。……覚悟はしたつもりだったけど、やっぱり怖いもんは怖い。速攻で意思を翻した。

「結構慣らしたけど、痛かったら言ってねぇ」
「……っ」

 ぐ、と熱い固まりが、肉を押し入る様にして入ってくるので、俺は固く目を瞑った。目を閉じると、他の感覚がやけにリアルで、混ざり合うような息づかいと、肌の温度が伝わってくる。ぽたりと落ちたのは、汗だったか、まだ乾いてない髪の毛の雫か。

「あ、あ、あっ」
「……あひゃっ、……やっぱキッツ……!」

 笑いを含んだような声が聞こえて、俺は行き場のない手を渦見の背中に回した。形だけ羽織っているバスローブをもがく様に掴むと、どんどん中に入ってくる。指とは比べものにならない質量に、俺はさっきまでの覚悟なんてすぐに投げ捨てた。ついでに、プライドもどっかに捨てておく。こんなの、正気じゃない。

「いっ、う、渦見、痛い……っ、無理、入んね、あ、ぬい」
「うんっ、っ、我慢して」
「っ……!?」

 なんだよそれ、おまえは歯医者さんかよ。確かに痛かったら言えとは言ったけど、やめるとは言わなかったな。けど、こっちはそんな悠長な冗談につき合ってられる程余裕ねえんだよ! 裂くように押し入ってくる肉棒を追い返そうと、俺の体が全力で反抗する。けれど、渦見はそれを全部無視してさらに押し進めてくる。無理無理、ほんっと痛い! 尻が四つに割れる!

「笠原ぁ、力抜いてよ……入んないじゃん」
「ひ、だから、無理って、あ、ぅああ、あーー!」

 押さえられた肩に、渦見の手の体温が伝わってくる、俺も熱いけど、渦見もすごい熱い。いつも低体温だけど、こういう時は熱くなるんだ、なんて、現実逃避の様に考えていた。すでに渦見の陰茎は、亀頭から、竿の半分くらいまで、入っていた。ぎちぎちと音を立てて、挿入される感覚に、頭がどうにかなりそうで、譫言の様に泣き叫んだ。

「う、渦見っ、マジ、痛いって! 抜けよぉっ……!」
「……もーちょっと……」
「痛いって言ってんだろ! 馬鹿! あ、あっ、あーー!」
「はっ……笠原、泣いてんの?」
「〜〜っ……い、痛いっ、つってんじゃんっ……ひ、ぅあ!? あああっ」
「あひゃっ、あひゃひゃひゃっ!」

 渦見の手が、俺の足を掴み広げ、更に音を立て入ってきた。前屈みになり、ぼやけた視界の中で、口の上に渦見の唇が降ってくる。無理矢理ねじ込まれた舌に、咥内が嬲られた。舌を絡め取られ、上からも下からも粘着質な水音が響いく。唾液が混ざり合い、貪るように食まれ、何度も何度も口付けされる内に、これが本当に現実に起こっていることなのかわからなくなってきた。なんで、こんなことになってんだろ、これ、もう夢だろ。悪夢。
 けど、伝わってくる体温とか、痛みは、確かに本物で。

「はーっ……はーっ……」
「……笠原、かーわいー」
「う、あっ」

 ちゅ、と音を立てて、渦見が、俺の目尻に溜まった涙を吸い取った。けれど、後から後から溢れてくる。零れる涙を舐められると、いつの間にか体に収まってしまった渦見の肉棒の、大きさが増した気がする。ぐ、と胸部分を撫でられて、心臓が跳ねた。

「はぁっ……あひゃ、やっぱきっつい……っ」
「ふ、ぅあ、あ、あー」
「あー……でも、やばぁい、あひゃ、ひゃ……」

 酸素を求めるように呼吸する俺の視界に映っているのは、いつも余裕ぶって笑っている渦見にしては珍しい顔だった。赤く上気した顔は、男の俺から見ても、色っぽいと思う。ぺろりと舌なめずりしながら、俺を見下ろしてくる。濡れた水音が響く中、渦見が上体を起こし、俺の両足を掴んだ。……ほんと、なんで、俺だよ。

「かさはらあ、あひゃっ、動くね」
「いや、だ、渦見ぃっ! 無理っ……マジ、むりっあ、ああっ」

 質量の増した渦見自身が、渦見が腰を動かす度に、俺の頭が真っ白になる。目の前で星が散ったように、チカチカする。回した手は、いつの間にか渦見の腕を掴んでいて、強く爪を立てた。一瞬、息を飲んだような音が聞こえた気がするけど、無我夢中で、覚えてない。
 熱い、体が、すげえ熱い。これは俺の熱なのか、それとも、渦見の熱なのか、それすらもよくわからない。俺、今どんな顔してんだろ、ぼろぼろと溢れてくる涙が、口の中に入ってきた。たぶん、だらしねえ顔、してんだろな、やだな、うぁっ、あ、じゅぷじゅぷって音立てて、また、入ってくる、痛い、渦見、うずみ。

「あっ、あ、渦見、っ、は、ぁあ、ッ」
「かさはら、笠原っ……あひゃっ、やっば……、俺、これ駄目かもっ……!」
「ひ、うぅ、っ」

 駄目ってなんだよ? なにが駄目なんだよ、熱に浮かされたように上ずった声で泣き叫んでいると、、鎖骨に痛みが走った。渦見が、また、噛みついてきたみたいだ。こいつ、噛み癖でもあんのかな。

「あっ、ぅあ、アッ、はぁっ、うずみ……いた、いって」
「はっ……ふ、笠原ぁ、スキ」
「はぁっ……なに、言ってんの、お前っ」
「ははっ、ひひっ、痕つけたいの、俺のだって、印。あひゃっ……いっちゃいそ……」
「あ、ああ、あ――――!」

 ぐっと奥まで突っ込まれて、喉の奥から声が出た。真っ白い何かが頭の奥で弾けて、体が震える。笑い声と、汗と、精液の匂いがする。目の前で揺らぐ照明の下、俺は、意識を手放した。

「……あひゃっ」

 暗闇の中で、笑う声だけが、残っていた。



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