C


 パンッ、と何かを叩く様な音がして、目が覚めた。

「……あれ?」
「あ、良介くん、起きたん?」
「……ん? あ、ああ……。うん」
「寝すぎやでー、もう夜やん」

 むくりと布団から起き上がると、灯が呆れたような眼差しを俺に送ってきた。……夜? あれ、俺、確か大学から帰ってきて、それで……。それで? それから、どうしたんだっけ。なんか、記憶が霞がかっているみたいで、思い出せない。
 でも布団の上にいるってことは、帰ってきてすぐ寝てしまったんだろうか。今日はバイトがない日だし、そんなに疲れてた覚えはないんだけど。
 案の定、灯に聞くと帰ってきてすぐ寝てしまった言われた。……そんなに眠かったか、俺? あ、でもなんか体すげえだるいし重い……。起きた瞬間鈍痛が襲ってきて、頭を抑えた。
 風邪でもひいたかな。ふらつく俺を心配して、灯が俺の体を支えてきた。

「良介くん、大丈夫?」
「……おー……」
「おかゆでも作る?」
「いや、大丈夫、だと思う……」

 ちょっと体が重いだけで、喉が痛かったり、咳が出たり、鼻水が出たりとか、そういう事もないし。ちょっと疲れているのかも。すると灯が、俺の額に手を当ててきた。

「熱はないみたいやね」
「っ……!」

 その瞬間、何故か体が熱くなった。
 なんだかよくわからないけど、灯の顔を見ると、動悸が止まらなくなる。心臓がドキドキと音を立て、顔に熱が集まってくるのを感じた。……ん? あれ? なんだこれ? 触られると、体が喜んでいるみたいに、火照ってくる。……気のせい?いや、でもなんかやっぱり変だ。だって俺、もっと触って欲しいとか思ってる。

「良介くん?」
「いや、なんでも、ない」

 不思議そうに顔を覗き込んでくる灯に対して、俺はそっと顔を逸らした。見ていると、変なことを口走ってしまいそうで。
 うん……やっぱ俺、風邪引いてんのかも。だから、こんな馬鹿なこと考えるんだろう。寝て起きたから、ぼけているのかもしれない。ない、あり得ない。自分の中にある考えを否定して、ごくりと喉を鳴らした。

「顔赤いで、やっぱ具合悪い?」
「いや、大丈夫、だから、あんまり」
「ん?」
「っ!」

 ぴた、と灯の手が胸に触れた瞬間、電気が走ったように体が硬直した。なんだこれ、なんだこれなんだこれ!? 絶対変だ、こんなこと、今までなかったのに。なんでこんな気分になるんだ? 違う、もっと触って欲しいなんて、思ってない。思うはずがない。べたべたすんなって言うべきなのに。ぐるぐると混乱する俺を余所に灯が笑顔で聞いてきた。

「良介くん」
「な、何?」
「僕のこと好き?」
「……アホなこと言ってんじゃねーよ」
「釣れへんわ〜」

 残念そうにつぶやいた後で、灯が何か口ごもっていたように見えたけど、それが何て言っていたか、までは聞き取れなかった。するりと首元を撫でられ、ぞわぞわと肌が泡だった。

「ま、気分悪いならゆっくりしとき。明日、大学休みやろ」
「お、おう」

 にこりと微笑まれ、俺はドギマギしながら返事をした。……明日になれば、この変な感覚も収まっているだろうか。


終わり

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