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「ただいま、良介くん」
「おかえり、灯」

 帰ってくると、良介くんは笑顔で僕を迎え入れてくれはる。そうや、良介くんは此処におるんや。おらんくなることなんて、ない。僕は部屋に入ると、良介くんをぎゅっと抱きしめた。ほら、あったかいやん。生きてはる。

「灯? どうした、何かあったのか?」

 宥めるように、良介くんが僕の頭を撫でてきた。僕はその声に安心して、良介くんをみた。髪、伸びたなあ、ちょっと痩せた? いや、もともと細い方やったな。よくわかっていないような顔で、良介くんは僕に微笑んだ。

「っ良介くん」
「どうした?」
「……良介くんは、ずっとここにおるもんな。どこにも行かへんよな?」
「何言ってんだお前、当たり前だろ。俺にはお前しかいないんだから、どこにも行くところなんてないよ、安心しろ」

 やんわりと笑んで、必死な僕の頬を両手で包むと、キスをしてくる。ほら、ほらな。良介くんは此処におる言うてはるやないか。あいつ、ほんまアホやな、おらんくなんてなへんわ。誰が、終夜なんぞに渡すか。

「……良介くん、僕のこと好き?」
「好きだよ」
「愛してはる?」
「ああ、愛してる。お前だけだ、灯」
「……うん、うん。せやね。僕も君だけやで」

 そうや、僕にはもう良介くんしかおらん。せっかく僕のになったんやから、それを、また奪うなんて絶対に許さへん。ふと、良介くんの腰に白い手が伸びているのが見えた。真っ白い手は、まるで良介くんを引っ張り込もうとでもしているかのように見えたので、僕はその手を踏みつぶした。

「…………」
「灯? 怖い顔してるぞ、どうした」
「んーん、なんでもあらへんよ。それより良介くん、僕今良介くんが欲しいねんけど、ええ?」
「……しょうがねえな」

 車椅子に座る良介くんの体を抱き上げると、良介くんも落ちないよう、僕の首に手を回した。ゆっくりと抱き上げ、布団の上に移すと、良介くんは自分で着物の帯を解いた。日に当たらないせいか、白い肌が、妙に艶めかしく感じる。

「おいで、灯」

 そうして、両腕を広げ僕を迎え入れた。
 僕は倒れ込む様に、良介くんの腕の中へと入っていく。口から首、胸へと、口づけると、クスクスと、誰かの笑い声が聞こえてきた。もちろん、この部屋には、僕と良介くんしかいない。ここは僕たちだけの部屋なんやから。

「あ、あ……灯……」
「良介くん……」

 クスクス、クスクス、クスクスクスクス
 ……ああもう、うっさいなあ、今恋人同士でイチャついてはるんよ、空気呼んで邪魔せんといて。つーか、ほんま邪魔や、あいつも、あいつの周りも。何が呪いや、知るかアホ。僕が君に降り懸かる呪い、全部潰したる。せやから、ずっと僕と一緒におって、僕を見ててな。

「良介くん、愛してる」
「俺もだよ、灯」

 光のない目でそう呟く良介くんを抱擁しながら、伸びてくる無数の手を睨んだ。誰にもやらん。
 ようやく、手に入れたんやから。

 僕の。僕だけの。


終わり

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