3






「…………あ、化野」
「んー?」
「………………」

 それから、何分くらい、いや、何十分くらい経っただろう。二人でゲームというのは、普段だったら楽しいことかもしれないけど、今の僕にそんな余裕は無かった。
 乳首が、痒い。痒いし、熱い。今すぐさっき貼られた絆創膏を剥がして、掻き毟ってしまいたい。強く掻いて、引っ張って、思い切り引っ掻いてしまいたい。けれど、触れようとする度に化野に手を止められて、僕の乳首は我慢の限界だった。
 じんじんするし、むずむずする。
 シャツを着てはいるけれど、それでも立っていることは、僕が一番分かっている。

「きょ、今日はしないの」
「何が?」
「その、いつものやつ……」

 そもそも、化野の家に来たら、そういうことをするものだと思っていた。
 でも、今日に限って何もしてこない。いっそのこと、アレをしてもいいから、胸に触れて欲しかった。
 触って欲しかった。いや、というよりも、思い切り掻いてほしかった。自分で触れることを許されないなら、いっそ触って欲しい。そんな思いが、頭の中で次第に強くなってくる。
 それに、股間もさっきからちょっと……。足を閉じて、目立たないようにはしているものの、もしかしたら化野にはバレているのかもしれない。本当に、変態だ、こんなの……っ。真っ赤になりながら、僕は唇を噛む。
 化野は、笑いながら僕の耳元で囁いた。

「したいの?」
「…………」

 こくん、と小さく頷く。
 すると、化野は言った。

「そっかーしたいんだあ」
「うん……」
「でも、ごめんね、今日はしないよ」
「えっ」
「そういう気分じゃねえし」
「…………そ、うなんだ」
「うん、だからゲームしよ、次なにする?」
「………………あ、あの」
「なに?」
「…………僕、トイレ借りても」
「ダメ」
「えっ」
「正義ちゃん、こっそりここ触っちゃいそうだし」
「…………っ!」

 つん、と乳首を布と絆創膏ごしに突かれただけなのに、僕の体はビリッと電流が走ったようにビクついた。目の奥で、白い光が弾けそうになった。や、やばい……今変に触られたせいで、余計触りたくなってきた。けれど、僕が手を伸ばすと、再び化野に止められる。

「だから、触んなって」
「か、痒いんだって……!」
「乳首?」
「うん……っ」
「そっか、でも我慢して、触るともっとおっきくなっちゃうから」
「…………っ〜〜〜〜!」

 笑顔で残酷な言葉を吐く化野に、一瞬このまま突き飛ばして帰ろうかと思ったけど、そんなこと、成功するはずもない。それより、そんなことをしたら、後でもっと酷いことをされるかも、そう考えると、出来なかった。
 黙り込んでしまった僕に対して、化野が息を吐く。

「あ〜〜〜……でもなあ、俺、正義ちゃんのお願いに弱いからなー」
「…………?」
「正義ちゃんがどうしても、お願いって言うなら、してもいいよ?」
「…………え……」
「どうする?」

 それは、つまり、僕から誘えと、そういうことなんだろうか。
 普段は、化野に誘われ、為すがままにそういうことをしているけど、今日は、僕から誘わないと、触らないししないと、そういうことを言いたいんだろう。
 もじ、と膝同士を擦り合わせて、少しだけ躊躇する。だって、誘ったことなんてないし、こんなことを言うのは、男としてどうかと思う。ドクドクと鳴る心臓を抑えて、口を閉ざす。本当は、もう帰ればいいのかもしれないけど、きっと止められるし、それに、この状態じゃ……っ

「しないんだ。じゃあ」
「まっ」
「ん?」
「あ…………」

 速度を高める心臓に、僕は口を開いた。
 痒いし、熱い。触って欲しい。その思いが、さっきからどんどん強くなる。こんなこと、言っちゃだめだと、頭の中では分かっているけど、体が我慢の限界だった。早く、あの絆創膏を剥がして、思い切り掻いてほしかった。

「さ、触って……、化野」
「どこに」
「…………」

 嬉しそうに笑う化野に、僕はさっき化野がつけたボタンを外して、中のシャツをまくり上げた。貼ってあるハートの絆創膏を押し上げて勃起している乳首を、目線だけで示した。
 
「ここ…………」
「どこ? さっきからちょっと勃ってるこのちんぽ?」
「ちがっ、ち…………ちく、び……」

 語尾が小さくなり、僕は俯きながら呟いた。

「なんて?」
「乳首っ、さ、触って……ください……」

 何を言ってるんだろう。馬鹿みたいな事を言ってる。でも、もうどうしようもないんだ。だって、自分で触るのが許されないなら、誰かに触ってもらうしかない。痒いんだ。はやく、はやく。
 はー、はー、と息を漏らしながら、化野に懇願すると、化野の指が、絆創膏の上から僕の乳首に触れた。

「ここね」
「あっ、あっ……!?」

 絆創膏越しに、カリカリと先っぽを掻かれ、背中を仰け反らせながら声を上げた。体に電流が走り、気持ちよくて脳の奥が痺れた。
 そのまま倒れそうになるのを堪えて、ぎゅっと目を瞑ると、化野の指が、貼ってあった絆創膏をゆっくりと剥がしてきた。
 ペリリリ……と音を立てて、剥がれていく絆創膏の中から、さっきのクリームと少しぬとついた、ピンと尖った乳首が顔を出す。

「あーあ、とろっとろ……」
「あっ、あっ!? や、あっ、あ――――――っ!」

 化野が、人差し指で、隆起した乳首をぷるぷると弾いた。何度も何度も擦り弾かれ、僕は体を痙攣させながら背中を丸める。……っ、い、イくかと……、いや、こんなので、イくわけない……っ。 
 ふぅふぅと呼吸を乱していると、きゅう、と乳首を摘ままれる。

「……っ――!」
「ここ、いっぱい触って欲しい?」
「…………う、うんっ……」
「もっとエッチな乳首になっちゃうかもよ」
「いいから、早く……っ触っ、てっ! お願いだからっ」

 早く、掻いてほしいっ! もう、限界だっ、僕が懇願すると、化野は興奮した面持ちで頬を染めながら笑った。

「わかった、いっぱい触ってあげるね、正義ちゃん」

****

「は……っ……は…………っ」
「はーーー……っ」
「あ、あっ」
「きもち?」
「…………っ」

 蒸した部屋の中で、息を吐く度に、体の奥からどろどろに溶けていくようだった。僕は自分の肌着を捲ったまま後ろから抱え込まれ、ずっと化野に乳首を弄られ続けている。貼ってあった絆創膏はとうに剥がれ、ベッドの上でぐちゃぐちゃになっていた。
 どのくらい経った? わからない。頭が馬鹿になるくらい。もしかしたら、そんなに長い時間は経っていないのかもしれないけど、指先でかり、と尖った乳首を引っ掻かれる度、目の奥で光が弾けて、思考がぐずぐずに溶かされていく。口の端から唾液が溢れて、ぽたりと腹へ落ちていった。
 制服のズボンは、ベルトが外されずらされていて、そこから覗いた下着は、陰茎によって押し上げられ、グレーのパンツに、うっすらと染みが広がっている。こんなことで昂ぶった僕の息子は、下着の中で完全に勃ち上がっている。ぐす、と鼻を鳴らしながら、持ち上げていた服を掴む手に力を込める。足は化野の足が絡まり固定されていて、閉じられないようになっているから、閉じて隠すこともできない。
 触れられる度にビクつく体に、頭が変になりそうだった。

「ほら、正義ちゃん、教えた通り言おうね」
「あ゛っ」

 つん、と乳首の先端を押されて、びくりと背中を仰け反らせる。さっきから、ずっとこんな感じだ。

「き、きもちいいっ……」
「乳首触られて?」
「…………っ」

 こくこくと、何度も頷く。そう、気持ちいいんだ。最初は、掻いてもらいたかった。でも、実際に掻いてもらうと、頭の奥がどんどんぼうっとしてきて、触れられる度に敏感になっていくような気がした。いや、気がするじゃなくて、実際に。

「あ、あっ、やぁっ、あ゛っあだしっ、のっ」
「んーー?」

 クリクリクリクリ、と人差し指で弄ぶようにぐりぐりと乳頭を捏ねられ、体を持ち上げようとしたら、だめ、という言葉と共に抑えられた。逃げることも出来ず、止めることも出来ず、ただひたすら同じ時間が続いていく。
 化野の指は、止まることなく僕の乳首を嬲り続ける。この状況に興奮しているのか、化野の陰茎が、僕のお尻に当たっていた。は、は、と息を吐きながら。快楽の波に流されていく。
 時折戯れのように首筋を食まれながら、与えられる抗えない快感と恐怖に僕は泣きながら謝った。こんな、こんな変態みたいな行為で、こんな風に感じてしまう僕は、どこまでもどうしようもない。
 きゅ、きゅ、と乳首を摘まみ上げられ、嬌声をあげる。

「あ、うっ、ひぃっ」
「ここ、好きでしょ?」
「ご、ごめんなさっ、き、きもちっ……」
「なんで謝るの? 正義ちゃんは別に悪いことなんてなんもしてないじゃん」

 誑かすように、クスクスと笑いながら、化野が耳元で囁く。

「でも、こんなの、変だっ……」
「変じゃないって、乳首って男にとっても性感帯なんだよ? だから、こうして」
「あっ、あ――っ」
「乳首ぐりぐりされて正義ちゃんが気持ちよくなっちゃうのも、全然変なことじゃない。むしろ、正しい反応だって」
「た、ただ……しぃ……っ?」
「そうそう、だって、俺がこんなに開発してんのに、無反応だったら逆に傷つくしー、コレが正しいよ」
「…………っ」

 正しい? 正しいことなのか? これが本当に? 頭がふわふわして、思考がおぼつかないまま、化野に囁かれると、本当にそれが正しいような気がしてくるから不思議だ。化野の言葉に、そういう力があるような気がする。
 こすこすと指の腹で、乳首を撫でられる度に、下着の染みが広がっていく。唇を噛んで、弾ける何かに首を振りながら、僕は声を溢した。

「あ、化野っ、僕、も、もうっ……」
「もう?」
「…………っ……」

 首を捻ると、僕を覗き込んできた化野と目が合う。もう、イかせてほしい。さっきからずっと、イけそうでイけない。そもそも乳首だけで達する方が間違っている。熱さで蕩ける感情の中、化野に懇願する。

「イ、イかせて……お願い」
「…………」

 ちゅ、と化野が少しだけ身を乗り出してキスしてきた。
 けれど、決して勃起したものには触れてくれず、優しく笑う。

「このままイっていいよ」
「ま、前触って……」
「ダメー、大体」
「ひ、っんっ、うあ」
「こんなに乳首で感じてんだから、イけるっしょ」
「や――っ、あっ、あ゛っ、それ、やだっ、指でぎゅってすんのやめっ」

 きゅ、きゅ、きゅ、と何度も持ち上げられるように扱き上げられ、体が震える。やばい、このままじゃ本当に……っ
 ガクガクと震える腰に、力を入れようとしても、まるで力が入らない。化野が乳首を潰す度に、きもち、よくて……っ

「ほら、イっちゃえイっちゃえ。大丈夫、正義ちゃんが乳首で女の子みたいにイっちゃうのは、全然恥ずかしいことじゃないって」
「あ゛っ、うっ、やあ゛っ、もっ、無理、むりだっ、やだっ、こっ、イきたく、なっ」
「はは、どっちだよ、いいから、素直にこのままイっとけ……っつの!」
「っ〜〜〜〜〜……!!」

 ぎゅうーと強く摘ままれて、瞬間、乳首と下半身が直結したように、射精し、びくびくと腰が揺れた。パンツの中がぬるぬるする。僕、今、イッ……

「はい、良く出来ましたー」

 けれど、化野の手は止まってもくれなかった。そのままの状態で、再び指を動かしてくる。

「ひっ、ま、待って今、僕っ」
「このまま乳首で連続イキがんばろ」
「あ、化野っ……!」
「なに?」
「あ、化野に、挿れてほしい、もう、乳首いいから、っつ、あ、化野とセックスしたい……っ」

 ぐすぐすと泣きながらそう訴えると、ようやく化野の手が止まってくれた。弄っていた手が、そのまま下に降りてきて、ぐちゃぐちゃになってしまった下着の端に指をかける。ぐ、と力が入り、下着がずれていく。
 一度達してしまって萎えた陰茎はくたりと力を無くして、下着の中でドロドロになっていた。下着の中に手を滑らせて、化野の指が中に入ってきた。ぐちゅ、ぐちゅ、と濡れた音が響く。

「…………っ」
「ちょっと腰浮かせて」
「う、うん……」

 足が解放され、ようやく立ち上がると、そのまま下着を全て下におろされた。むっと香る性の匂いに、頭がくらくらする。
 そのまま体を押し倒され、ベッドの上に仰向けになると、化野が覆い被さってきた。足の途中に引っかかっていた下着を外され、足を掴まれ開いたまま、でんぐり返しの途中のような体勢で、体をひっくり返された。
 化野が、勃起した陰茎を、着衣したまま僕の穴へと上から押しつけてくる。ぐりぐりと布越しに、穴が穿られる。

「あ〜〜〜〜、正義ちゃんのエッロい姿見てたら、俺も挿れたくなっちゃった」
「…………じゃ、じゃあもう」
「でも、だめー」
「えっ」
「さっき、いっぱい触ってほしいって言ったじゃん? 俺、約束守るタイプだから」
「……でも」

 でも、まだ乳首がじんじんする。触れられるだけで、体が反応する。もうこれ以上触られたら……。僕は懇願するように恥もかきすて、化野に言った。

「化野……」
「何?」
「こっ、……このまま、化野とエッチしたい……化野のがほしい……、だめ?」
「………………煽るのうまくなったね」

 ぐっ、と押しつぶされるように、化野のちんぽが擦りつけられる。

「そこまで言われたら、男として断れねえよなー」
「……………」

 よかった、これでもう、胸は触られずに済む、と思ったのがそもそも間違いだったのかも知れない。

「じゃあ、このおっぱい触りながら、いっぱいエッチしようね

 にっこりと笑顔で言われて、僕は言葉を失う。




 翌日以降も、もちろん絆創膏は手放せなかった。


 

- 120 -
PREV | BACK | NEXT



×
「#切ない」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -