腕の中で眠ってC

 どのくらい時間が経っただろう。

「あ゛っ、あ、っ、はあっ、大志っ、たいしっ、あ、ぅ、っ……! はっ、はぁっ……!」

 カーテンを締め切った暗い部屋の中で、荒い呼吸音と共に、ぐちゅぐちゅと濡れた音が響く。さっきから挿入された化野の、……っ、違う、大志の、大志のちんぽが、僕の中をこつこつとノックする。いつもとは違う、ゆっくりとした動作に、僕は力なく声をあげた。震える体が、じっとりと汗ばんでいた。さっきから、ずっとこの状態だ。
 僕は大志のベッドの上で、横になった状態で、片足を持ち上げられ、ハメられている。その快楽に耐えるようにベッドのシーツに爪を立てると、ぬるぬると緩く行き来する陰茎が、内壁を擦り、前立腺をカリでひっかいてきた。

「……っ〜〜〜!」

 イ、きそう……っ、でも、足りない。気持ちいいのに、達するには徹底的に何かが足りない。焦らされたままのような状態が、もうしばらくの間続いていた。ちょっと前を擦れば、あるいは、中を刺激されれば、イケそうなのに、ギリギリのところで止められる。
 僕は舌を出したまま、情けない声を上げた。

「う、あ゛っ、はっ……――〜〜〜〜〜〜……っ」
「気持ちいい? いつも俺が好きにしちゃってるから、今日は正義ちゃんが気持ちよくなるように、どうしてほしいとかあったら言ってよ。ほら、どこが好き? その通りにしてあげる」

 笑い声が、耳に響く。持ち上げられた足に唇を寄せられ、赤い痕がついた。ぐずぐずに解された体に、頭の中が溶けていきそうだ。
 さっきから、何度も、何度も。あと少しなのに……っ。

「……っ、化野、僕、も、もうっ」
「だーかーらー」
「あ゛っ、や、あっ」
「違うでしょ? ほら、なんだっけ? 教えたよね」
「た、たいしっ、たいし……っ、たい、しっ」
「そうそう、間違えないでって」

 そうだ、なんで僕は間違えるんだろう。
 ずっと呼び続けていたから、慣れてしまったというのがあるのかもしれない。でも、そんなのは理由にならない。
 大志が、間違えるなって言ってるのに、間違える僕が悪い。いや、僕が悪いのか? チカチカと眩しい視界の先で、一瞬疑問に思った。けれど、そんな疑問もすぐに潰える。………………そう、僕が、悪い。間違える僕が、駄目なんだ。
 大志、大志、大志、大志、大志。
 頭の中で何度も大志の名前を唱える。間違えるな、あだしの、という言葉を口に出すな。
 だって僕達は恋人で、恋人同士なら名前を呼びあうのが普通で、……いや、大志がそうしたい、そういうものだって、言うから、そうしなくちゃいけないんだ。ぐらぐらと煮立った頭を、教え込まれた言葉が支配する。あれ、……僕、なんで、こんなことしてるんだっけ? なんで…………。……? なんでだっけ。

「何考えてんの」
「あ゛っ」
「ぼんやりしてないで、こっち集中しないと」
「んあっ、あっ、う……っひ」

 そう、だ、こんなこと、考えてる場合じゃない。
 僕はただ、大志の言うことを享受すればいい。
 熱くなった体を捻り、繋がったままうつ伏せ気味にシーツを掴んだ。中に入った大志のちんぽは、僕の中に入ったまま動かない。少し動かれれば、達せそうなのに、大志は僕の足を持ち上げたまま、止まっている。……っ、なんで、いつもは、動いてくれるのに……っ。
 僕は懇願するように大志を見た。大志は、僕を見ながら笑っている。

「どうしたの?」
「う、動いて欲しい……っ」
「なんで?」
「…………なんで、ってっ、あ、う」
「気持ちよくなりたいから?」
「………………っ」

 大志の問いに、僕は小さく頷いた。
 そう、気持ちよくなりたいから。だって、こんなことをする理由なんて、それしかない。子供も出来ない男同士で、こんなことをする理由なんて、一つしか無いだろ。これは愛を確かめる行為って大志はいうけど、僕達に、愛なんて。
 理性を捨てるように、何度も頷くと、大志は笑う。

「じゃ、どうしてほしい?」
「…………い、いつもみたいに……がいい」
「いつもみたいにって?」

 わかっているくせに、なんで聞くんだ。

「……っ〜〜〜……! や、優しくするって言った……っ」
「優しくしてるよ? だーからー、いつも俺が勝手に動いちゃってる分、今日は正義ちゃんがしてほしい風に動いてあげるってば」
「…………っ」

 体が羞恥に赤く染まり、体温が上昇していく。部屋の中は冷房が効いていたはずなのに、こんなことをしているせいで、熱く感じられた。
 外ではまだ雨が降っているし、雷も鳴っている。今が何時かもわからないけど、この閉じた部屋に居ると、まるで世界に二人取り残されたみたいだ。
 
「ほら、俺にどうしてほしいか言ってみて」
「…………」

 壁一面に取り付けられたお面に行為を見られながら、僕は口を開く。このままの状態は、辛い。早く、イきたい。
 顔を熱くしながら、僕は大志の顔を見ずに言った。

「……たっ、大志の、のちんぽで、僕の、中、す、好きなところ、突いてほしいっ……いっぱい気持ちよくして……っ」
「エッチ〜」
「…………っ…………!」

 恥なんてない。恥ずかしくない。恥も理性も捨ててしまえばいい。どうせ、僕には何も残ってないんだ。そんなもの、全部捨てろ。全部いらない。
 大志が居れば、もうそれでいい。だって、そう約束した。
 大志しか見ない。大志にしか興味がない。だって僕は大志のことが好きだから。そう思え。思え思え思え思え!

「でも、正義ちゃんのお願いは、なんでも聞いてあげたいからなー」

 中に入っている大志のちんぽが、ゆっくりと下がっていく。ぬりゅぬりゅとローションを纏ったまま、ゆっくり抜かれていくたびに、ゾクゾクとした刺激が体に走った。

「っ、あ、はぁっ……!」
「正義ちゃんの気持ちいところってどこだっけ? ちゃんと、教えて」
「…………っ、ん、うっ……んっ」

 何度も頷いて、シーツの上に爪を立てた。再び中に押し入ってきた大志のちんぽが、亀頭を埋め込み、みちみちと肉を押しのけ侵入してくる。内臓を押し上げられる感覚に、浅く何度も息を吐いた。
 ゆっくり、ゆっくりと、形を覚えさせるかのように挿入される。ふ、普段は、こんな風にゆっくり入れてこないのに……っ!

「…………っ!」
「どこかなー」
「……ふっ…………っ」
「気持ちよかったら、ちゃんと言ってね? わかんないから」

 その言葉に、夢中で首を縦に振る。いいから、もっと。肉壁が擦られ、ひどく遅い、ねっとりとしたピストンに、体の奥が疼く。もっと、早く、ちがう、そこじゃ、なくて……っ! もどかしさに息が詰まりそうになって、僕は手を自分の股間へと伸ばす。

「こーら、ここは触っちゃ駄目だって」
「…………っ、だ、って……っ!」
「仕方ないなあ、ほら、ね?」

 言いながら、大志のちんぽが、僕の前立腺をぎゅうっと押しつぶす。それと同時に、掴んでいたシーツが波打ち、体が仰け反る。

「んっ、あっ!? っ、そこ、っ……!」
「ここ?」
「んっ、っ……!」

 今まで散々してきたんだから、わかっているくせに、敢えて大志は僕に問いかけてくる。僕の口から、言わせようとする。
 ぐりぐりと亀頭で前立腺を押しつぶすと、体が小刻みに震え、僕は唇を戦慄かせながら何度も頷く。視界が涙でじわりと滲んだ。シーツの上に丸い薄染みを作りながら、押し寄せる快楽にはくはくと空気を求める。ちゅぽちゅぽと音を立てながら、行き来する大志のちんぽに、ピク、ピクッ、と体が俄に痙攣する。
 大志が腰を動かしながら、笑顔で僕に問いかけてきた。

「正義ちゃん、気持ちいいところは、なんて言うんだっけ? いっぱい教えたよね」
「うっ、あ゛っ、は、いぃっ……、す、すきぃっ……っ! そこ、好きっ、大志ので、ちんぽで、っ、あ゛っ、ぐりぐりされるの、すき、大志にっ、いれられるのすきっ、で、あっ、僕の中、いっぱい突いてっ、あ゛っ、そこ好きっ、あーーーはっ……あ〜〜〜〜〜〜〜……っ! うっ、すき、すきっ! すき、っ」
「……っ名前呼んで」
「大志っ、たいしっあ、あ、あ――〜〜〜っ、好きっ、すき、すきっ……たいしっ」
「……あはっ」

 熱に浮かされたように、理性も何もかもかなぐり捨てて、ただ夢うつつのごとく言葉を溢した。ぱちゅ、ぱちゅという音の感覚がどんどん早くなっていく。大志のちんぽが、僕の言うとおり、気持ちいいところばかりを突いて、捏ねて、その度に、目の前が真っ白になって、星が散るみたいに、チカチカした。

「イく時はイくってちゃんと言ってね、教えたよね」
「イ、くっ、イくっ……! イくっ」
「うん、頑張れ頑張れ、ほら、ちんぽきもちーね」
「あ゛っ、あ〜〜〜〜〜〜……っ!」

 泣きながら、僕は言葉を溢した。
 気持ちいい、気持ちいいっ。頭がおかしくなる。大志のちんぽが、そこばっかり弄るから、頭がヘンになる!
 体がビクビクと震えて、射精もしてないのに射精がずっと続いているような感覚を覚えた。体中の筋肉が、ぎゅうっと収縮しているような感じになって、喉の奥から情けない声が漏れる。ずっと、ずっとイってる……っ! やだ、やだっ! あっ、う、あっ、変だ、こんなのっ……!

「あ〜〜〜〜〜〜〜っ……」
「うわ、すげ……っ、エッロ、正義ちゃん、知ってる? これ、メスイキっていうんだってさ」
「め、めすっ……? ひっ、あ゛っや、あ〜〜〜〜〜っ……好きっ、好きだからっ!」
「好きならいいじゃん」

 イってるっ、まだ、ずっとイってるっ! もう無理だ、そこばっか触ると、あっ、あ、あっ、怖いっ、これ以上すると僕が僕じゃなくなるから!
 ふーっ、ふーっと息を吐きながら、逃げようと手を伸ばした。
 でも、逃げる場所なんてない。足を掴まれたまま大志のちんぽが、僕の中を抉ってくる。こりゅこりゅと前立腺を押しつぶされて、瞳が上を向いた。

「ひっ……う〜〜〜〜〜……っ!」
「そうそう、メスイキ、射精せずに女の子みたくイっちゃうこと。ほら、正義ちゃんがよくやるや――……つ!」
「っ……〜〜〜〜〜! かっ……は――」

 どちゅ、と音がして、足を掴んだ状態で奥まで大志のちんぽが入ってきて、ぐるん、と視界が反転する。あーーーーーー、あ゛っ、やだ、や、やめっ、やめて、もう駄目っ、うあっ、あっ、あっ、あ、あっ、わかんないっ、ぐちゃぐちゃになるっ、僕じゃないっ、こんな、のっ、僕じゃないっ、こっ、こんな変態みたいな、ちがう、こんな、あ゛っっ! きもちい、す、好きですっ、すき、すきすきすき、ちんぽ入ってくる、ぅあ゛っ、い゛やだあっ! ……好き、ちがうっ、そこやだ、だめ、おかしくなる、変になるから、もうそこやだっ、もういい゛! もういいよっ、う゛あ、っ、きもちいい、やだやだやめてきもちいきもちいきもちい、や、やめないでっ、ひ、ぐぅっ……違う、こんなの違うっ、僕は、僕がっ、あ、好き好き、すき、化野、だ、大好き、あっ、ごめんなさい、大志っ、たいしっ、ごめんなさいっ、も、もう間違えないからっ、あ゛っ、ぐっ、はぁっ、はっ、はっ、ひっ、またそこ、やだ、やだ、もうやだぁ……っふーーーーーっ……、ふーーーーっ……! メスイキする……、イくイくイくっ、メスイキしてるっ! ずっとイってるからっ……! こわれる、頭こわれちゃうよ……っ、優しくして、優しくっ、う、優しい? っ、や、優しくない、こんなっ、ちがっ、っきもちいい、好き、は、うっ、大志、大志、たい、し、あーーーーーー……っ
 瞳が揺れる。視界がぶれる。
 涙でぐしゃぐしゃになって、シーツに染みを作っているのだけがかろうじて見えた。

「ほら、メスイキしてる時はちゃんと言えって」
「ひっ、ぐ……っし、してるぅ……っ! め、めすっ、い、っ、いっ、キ……、し、してるっ……!」
「こうやってイくの好き?」
「……す、すきっ……! たいしっ……すき……っ」

 体をガクガク揺らしながら、僕は何度も頷いた。好き? 好きって何だっけ。わかんないけど、もういい。好き。僕はコレが好き。
 奥に入ってきた大志のちんぽが、深い所をぐりぐりと責めてくるたびに、僕は"メスイキ"を繰り返す。違う、僕は男であって、メスでもっ、お、女の子でもっ、ないのに、でも、頭がぐちゃぐちゃに、なって、もうっ、わかんなっ。
 視界が弾けて、部屋の中が歪んで見えた。いつの間にか仰向けになって、舌を上に突き出すと、ぽろぽろと涙が溢れていく。

「正義ちゃん、奥も結構好きでしょ」
「っ、すき、すきです……っ! はーーっ……は……っ! あ゛っや、あっ、あっ、あっ、あっ」
「気持ちいいねー、ほら、きもちーきもちー、口に出して言ってみて」
「き、きもちいっ、っ、きもちぃ……っ」

 そのまま腰を揺さぶられると、脳天を突き抜けるような快感が襲ってきた。気持ちいい、気持ちいいっ。
 体の上に降ってくる汗も構わず、僕はシーツを掴んで、声を上げた。違う、勝手に上がる。あ゛っ、イくっ、さっきからイってる、ずっと、……っ! 泣きながら譫言のように呟いた。
 教えられたことを言わないと、正しくないから。

「あ〜〜〜〜〜〜……っ! い、い゛っ、い……!」
「はははっ、正義ちゃんさ、セックス好きだよねっ……!」
「あっ、あっ、やめっ、それやだ、好きだからっ、あ゛〜〜〜〜っ、すぎっ、やっ、好きぃっあ、大志、たいしっ、たいしっ」
「さっきも、優しくしてとは言ったけど、セックスやめて欲しいとは、言わなかったしっ……! 前までこんなこと知らなかったのにね……っ」

 大志が僕の乳首をきゅうっとひっぱると、目の前で星が弾けた。ひ、っ、う! そこ、弱……っ! 好き、好きだっ。
 気持ちいいから好き!
 好きだから、好き? あれ? 好き。好き、すき、すき? うん、好き。なんだっけ。よくわからないけど、好きだから、あ゛っ、う、そこ、きもちいっ! もっと、僕をおかしくしてくれ……っ、なにも、考えられないくらいにっ……!

「……はーーっ……はーーーーっ……!」
「正義ちゃーん? トんじゃってる?」
「…………っ、あっ、う……」
「名前、呼んで」
「……た、ぃし……っ」
「俺のことは?」
「す、すき……っ」
「俺たちは?」
「こ、こいびとで、……だい、大好きっ……」
「よくできました」

 嬉しそうな大志の声が聞こえる。
 よくわからないけど、褒めて、貰えた。涙で歪む視界の先で、大志が笑っているのが見えて、僕もなんとなく笑った。

「あ、はは……っ」
「…………ふふふ」

 伸びてきた手が、僕の涙を拭う。拭って、その涙を舌で掬い、嬉しそうに笑う。……あれ、僕、なんで泣いてるんだっけ? わからないけど、別にもう、思い出さなくてもいいよね。だって、これは好きでやってることなんだから。
 頬に寄せられた手に唇を寄せて、ちゅうと吸い付いた。こうするといいよって、言われたから。……誰にだっけ? 誰でもいい。僕はこうしなくちゃいけないんだ。
 頬をつん、と突く大志の指を咥えて、唇で挟むと中の舌を動かした。根元まで咥えて、細く骨張った指をしゃぶりながら、歯で軽く噛む。

「あは……っ、かわいーね」
「…………っ……んっ」

 ちゅぽんと音を立てて抜き取られた指を舐めると、大志が僕の体を倒して両足を掴む。入っていたちんぽが一度引き抜かれ、再度深く挿入された。う、あ、あ゛っ、またっ……!

「……っ〜〜〜〜〜あ゛っ……!」

 そのまま大志の体が傾けられて、唇がくっついてきた。

「ん、う゛っ……」
「くち、っ、あけて……っ」
「あー……っ」

 大志に求められ、親から餌を求めるひな鳥の様に口を開けると、中に大志の舌がねじ込まれた。柔らかな舌が、僕の口に入ってきて、舌先が上顎を擽る。顔を赤くして、目を細めた大志が、舌を出して笑ったから、僕も同じように舌を伸ばす。キス。もっと、もっとほしい。もっと、もっと……っ!
 何もかもどうでもいいんだ。だってもう、全部なくなった。何も考えない! だから、今度は全部僕にちょうだい。ほしい、ほしい、ほしい! 大志が僕を欲しがるなら、僕にだって大志を欲しがる権利がある。僕が大志しか見ないようにというなら、大志だって僕しか見ないと平等じゃない。それが大志の言うところの愛で、恋人の関係なら、僕達はきっと、そうあるべきだ。
 大志には、僕だけのものになる義務がある!

「…………っは……」

 熱い。かかる息も、体も、全部熱くて、頭の中が溶けていく。
 全部ぐるぐるの、ぐちゃぐちゃになって、なにもかもが溶けていく。ここ、どこだっけ……? 恋人の部屋。
 ちゅ、ぢゅう、ぢゅ、という水音だけが、耳に届いた。口の端から溢れた唾液が、頬を伝って落ちていく、舌を出したまま口を離して、目の前で、大志が笑う。額がこつん、とぶつかった。

「すきだよ」

 べろりと唇を舐められた。
 僕は目を細めると、大志の背中に手を伸ばして、体を抱き寄せる。足りない、もっと。もっとちょうだい。からっぽなんだ、僕。だから、全部大志で埋めて。自ら唇を寄せて、柔らかな唇に合わせた。ふに、とした感触に、面白くもないのに、笑えてしまう。
 ……何してるんだろう。いや、考えるな。考えるな考えるな考えるな!

「あはっ、ふ、大志……っ」
「っ、は、まさよし、かわい、好きっ……」

 ちゅう、と唇を吸われると、中に入り込んだ舌先にべろを絡めて、息を吐く。ふーーー、ふーー、と荒い呼吸の音が届いた。大志の手が、僕の髪を撫でてくる。目に入った腕には、噛み付かれたような痕が残っていて、青紫に変色したそれは、すごく痛そうだ。可哀想に。痛いのは、辛い。痛いのは苦しい。苦しいのは、悲しいよね。わかるよ。……わかる? なんで? だって僕は今、幸せなのに。
 腕を掴んで、その痣を舐める。唇を尖らせ、ちゅ、と口づけると、中に入っている大志のが大きくなった。

「あ゛〜〜〜〜〜〜……やっべ……」
「あ、はっ……! な、中出てっ……!」

 奥まで入っていた大志のから、大志の精液が出てる。とくとくと注がれる感覚を覚えながら、僕は背中に回していた手に力を込めた。

「すき、好きっ、すき……っ」

 譫言のように繰り返す。
 好き。
 好き。
 好き。
 好き。
 好き。
 好き。
 好き。
 好き。
 好き好き好き好き好き。
 好き好き好き好き好き好き好き好き!
 好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好きすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすき……………――
 くるくると回る天井。僕を笑うお面達を見ながら、口元に笑みを溢すと、大志が僕の耳を塞いだ。うっとりと幸せそうに笑って、唇が何かを呟く。
 耳を塞がれていたから、なんて言ったかは聞こえなかったけど、僕も微笑んでキスをする。

 だって僕達は"恋人"だもんね。

 きっと、こうあるべきなんだ。
 それが、普通だから。



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