16

 最近の僕の生活は、まるで砂のお城みたいだと思う。
 必死で作り上げても、一度の波ですぐに攫われ崩れてしまう。そうして、もう一度構築し、作り上げたそれも、また波に崩され、消えていくのだ。

「…………」

 あれから、前と変わらない日々を送っている。
 誠からは、たまにラインが来たりして、それは最近の僕の心の支えだったりする。内容は他愛もない話だったり、こうなる前と同じような、日常の会話。
 隣の家の猫に、飼ってる犬が負けただとか、謹慎中に受けた課題が死ぬほどわからないだとか、今何してんのとか、そういう、普通の。
 別に特別な話なんてない。学校での話もしない。暇つぶしのような、友達同士のライン。
 学校では、もう話さなくなってしまったし、学校の外でも、もう言葉を交わすことはないけど、これくらいは許されるだろうと思って、僕は何日かにたまに来るこのラインを楽しみにしていた。
 未練がましいと思うかも知れないけど、コレは、前からしていたことだから、きっと化野も許してくれる。だって、喋っても怒らないって言ってたし。実際に喋ると、頼ってしまうかもしれないから、こうしてラインだけで繋がっている。
 それだけでよかった。それだけで十分だった。
 別に喋らなくてもいいし、会って話さなくてもいい。極端な話、これがbotとかでも、僕は満足したかもしれない。
 スマホの画面に映った文字をなぞって、口元に笑みを浮かべる。
 文字を返して、それが既読になる。それだけで、満足だった。昨日来たメッセージを読み直して、温かい気持ちになる。

 その時、ピコン、と音が鳴った。
 今度は、化野からだ。
 ……ああ、そうだった、準備しなくちゃいけないんだ。僕はスマホの電源を落とし、ゆるゆると起き上がると、部屋にかかっている制服に袖を通した。今日は日曜日なのに、学校に行かなくちゃいけない。
 出かけるべく下へと降りていくと、丁度、パートの昼休みに帰ってきたらしい母親と遭遇した。

「あら正義、今日、日曜日だよ。制服なんて着て……」
「ちょっと学校でやる課題があるから……」
「そうなの? 今日雨降るみたいだから、傘持っていきなさいよ」
「うん、行って来ます」

 スニーカーを履いて、お母さんの言いつけ通り傘を持ち、約束の場所へと僕は向かう。
 何も、休日まであそこに呼び出さなくてもいいのに、そう思ったけど、それを僕が伝えることはなかった。

****

「やっほ〜、正義ちゃん、準備してきた?」
「……うん。あの、この布、何?」

 小屋に入ると、のれんのように大きな毛布が上からぶら下がっていた。タダでさえ狭い小屋が、更に狭くなっている。

「あ、これ? ちょっと整理中なの。奥ぐちゃぐちゃだから、見ないでね。ここ暑いし、充電式の扇風機とか置こうと思って」
「……私物化しまくりだね」
「まっ、使ってないしいーっしょ」

 小屋の中でケラケラと笑う化野に、僕は嘆息した。私有地だから、いいということはないと思うけど、でも、この学校なら許されてしまいそうだから恐ろしい。ここが暑いことは確かだし。
 ソファに座ると、化野が買ってきたのか、コンビニの袋に入っているチューペットをくれた。

「ここ、人こねえのはいんだけどさ、暑いから二人で食べようと思って」
「……ありがとう」

 パキン、とチューペットを二つに折って、半分を僕にくれる。そうして、適当な雑談をしながら、チューペットを食べる。こうしている分には、化野は普通だ。話す内容も面白いし、ちょっとした気遣いだって出来るし。ただ……。
 チューペットを口に咥えながら、これからしなくちゃいけないことを考えると、今から憂鬱になる。

「正義ちゃん、今日やることわかってるよね」
「うん……」
「準備してきたんだっけ。偉い偉い」

 まるで幼子を褒めるかのように頭を撫でられる。だって、準備してこないと、辛いのは僕だし。がじがじと歯でアイスをかみ砕きながら、化野は自分の鞄を漁り、アイマスクを僕に向かって投げてきた。
 ごくり、と唾を飲み込んで、念のため化野へ訊ねる。

「……ほ、本当にするの?」
「うん、だって見たいし。約束したでしょー?」
「そう、だけど……」

 もしかしたら、気が変わってやめてくれたりしないだろうか、という僕の希望は、すぐに打ち砕かれる。わかってたけど、やっぱりやらなくちゃいけないんだな。それが条件だから、仕方ないってわかってはいるけど、それでも恥ずかしいものは恥ずかしい。
 ちゅる、とポリエチレンの中に入っているアイスを歯で噛み砕いて中身を吸い出しながら、僕は自分の制服のボタンに手をかけた。

「あ、上はそのままでいいよ」
「え?」
「下だけ脱いで」
「…………」

 溶け出しているチューペットを口に咥えたまま、僕は制服のベルトをかちゃかちゃと外していく。ベルトを引き抜き、留め具を外して、ジッパーを下げた。衣擦れの音に、外から響く蝉の声が混じり合う。
 最近、少し痩せたからますます貧相になった。こんな体を見て、化野は何が楽しいんだろう。ズボンを脱いで、下着へ手をかける前に、アイスを食べ終えてゴミ箱へと捨てる。
 それから下着を脱ぎ、近くに畳んで置いた。慣れてきたこととはいえ、下半身を露出した状態で居るのはやっぱり恥ずかしい。
 僕は顔に熱が集まるのを感じながら、この小屋に置いてあるローションを手に取る。化野は、未だにアイスを囓っていて、僕のすることを満足そうに眺めていた。
 ぶちゅ、と音を立てて、ローションを手に取り、自分のアナルへと持って行く。とろみを帯びた粘液が、ひたりと穴へと触れる。ぬるぬると、指で縁をなぞる。

「…………っ……」

 家で、一応準備はしてきた。解してもきた。そうしないと、時間がかかる。出来れば早く終わらせたいから。
 アイスを咥えながら、僕の自慰を見守る化野の視線が痛い。中指を中へと埋め、くちゅくちゅと音を立てながら指を動かす。それから、指を増やして、二本指で前立腺へと触れる。

「……っ……」

 そうこうしている内に、化野もアイスを食べ終わったらしい。再び鞄を漁り、今度は陰茎を模したような、茶色の玩具を取り出した。ディルド、というやつだ。

「はい」
「た、大志…………っ、僕、こういうの……」
「大丈夫、いつも通りすればいいから」

 化野は笑いながら言う。いつも通りと言っても、道具を使って、こんなことをしたことななんて、ないのに。まるでさも僕がいつもやってるかのように言わないで欲しい。道具じゃなくて、いつも挿れてくるのは化野なのに。

「……わかった……」

 化野に、自慰が見たい、と言われたときは、顔から火が出ると思ったけど、それで誠に何も言わないならと了承した。
 僕はディルドを受け取り、化野の希望通り、顔にアイマスクを付ける。外は明るいはずなのに、一気に視界が闇で覆われた。

「……お面、つけていい?」
「いや、駄目でしょ。何も見えねえじゃん」

 ……見えなくて良いのに。流石にそれは許して貰えなかった。
 諦めてソファの背もたれに背中を預け、足でなるべく見えないように恥部を隠した。膝同士をぴたりとくっつけ、足で化野からの視界を塞ぐ。くち、くち、と濡れた音が耳に届く度に、変態みたいなことをしているという事実がじわじわと僕の中で湧き上がってくる。
 だって、自慰にしても、前には触れずに、後ろだけで、それも道具を使ってイくところが見たい、なんて。それに頷く僕もどうかしていると思うけど、断るという選択肢は、化野の前で元々用意されていない。

「ふっ……ぅ……」
「おーい、見えないよ、足開いて〜」

 ちょっと遠い位置から、化野の声が聞こえる。ガタガタと荷物をどけるような音が響いた。遠くから見られてるのかな……。こんな、酷い格好を?
 ぞわ、と背筋が粟立ち、僕は小さく唇を噛んだ。

「ほーら、早く足開いて、おおきーくね」
「…………っ」

 化野の言葉に、僕はゆっくりと足を開いて、露出した性器も、指を突っ込んでいる自分のお尻も露わにした。ひゅう、と喉奥から空気が漏れる。くぷりと埋め込んだ指の間から、さっき塗り込んだローションが溢れた。指を動かす度に、肛門がひくひくと収縮する。
 開いた足がにわかに震えた。へ、変態だ、こんなの……っ。

「ほら、ちんぽも舐めて、準備しなきゃ」

 ……弄っていない方の手で持っているディルドのことだろうか。こんなの、使った事なんてないのに。
 僕は先っぽを少しだけ口に含む。コンドームはかぶせてあるものの、全体の臭いなんだろうか、樹脂のような、ゴムのような、変な味がした。それから、竿を唇で挟み、満遍なく舐める。舌を伸ばして、竿を擦り、舌の腹で亀頭を押しつぶす。
 見えないから、どこを舐めているのかよくわからないけど、舌で感じる形的に、多分ここが亀頭で、ここら辺は竿だろうな、と言うところを舐める。僕は口が大きい方ではないので、いっぱいに咥えると、どうしたって頬の形が歪んでしまうから、ちょっとずつしゃぶった。舌を出し、ぺろぺろとアイスキャンディみたいに舐めていると、少しずつ体の奥がむずむずしてくる。

「はっ…………」

 口から離すと、唾液であろう体液が、首筋まで垂れてきた。

「いいねー、それじゃ、そろそろ挿れてみよ?」
「…………んっ……」

 化野の声に従い、僕は先端部分を自分の穴へと押しつけた。そこまで大きい物ではないから、多分入るだろうけど、こんなことをしている自分が嫌になる。どうして、こんな自慰を見せなきゃいけないんだろう。しかも、扱くのではなく、中に挿入するような変態じみた自慰を……。これなら、化野とのセックスの方が、マシなくらいだ。
 ディルドを持つ手に力を込めると、にゅる、と亀頭部分が中へと入りこむ。

「あ゛っ、ぁっ……!」
「すげー、丸見え。正義ちゃんのアナにちんぽ入ってるとこ」
「う、ぅう……っ」

 少し手を押し進めると、びくん、と体が仰け反り、反射的に足を閉じてしまった。けれど、すぐさまたしなめるような声が飛んでくる。

「ほら、足閉じてる、開いて。見えるように」
「……う、……うぅっ……はぁっ……」

 化野の指示に従い、再び足を大きく広げた。先端部だけ入り込んだディルドを、ゆっくりと自分の中に埋めていく。ぞりぞりと内壁を擦って中に入り込んでくる感覚に、もどかしいような、歯がゆい衝動が襲ってくる。道具を使って自慰なんてしたことはないけれど、自分で動かせるなら、少しは余裕が出るかも、と思っていたのに。

「ふーっ……はぁっ……はぁっ……!」

 根元まで埋め込むと、ぶるぶると体が震える。内臓が押し上げられる感覚は、いつまでも慣れないけど、これ自体はそれほど痛い代物でもない。いつも挿入されてる化野のよりも、小さいし。けれど、それよりも、この全ての視界を閉ざされている中で感じる視線が嫌だった。
 今、どんな顔をして見ているんだろう。
 どんな気持ちで、僕のことを見てるんだろう。
 そう考えるだけで、泣きたくなるのに、やめることもできなかった。根元まで咥えこんでしまったディルドを持つ手が、震える。

「ほら、手、止まってるよ」

 化野の声が聞こえる。
 やらなくちゃ……。こくりと頷いて、僕は、ディルドを持つ手を動かした。いつもされているように、抜き差しし、中をごりゅごりゅと擦り上げる。前立腺が押しつぶされ、快感にぶるりと体が痙攣した。
 段々と、動かす手が止まらなくなってくる。

「正義ちゃん、気持ちいい?」
「う、んっ……あ、きも、ちぃ……っ」

 肉壁を擦り、肉を割いて挿入してくる異物が気持ちいいなんて、どうかしている。どうかしているのに、僕の体は、難なくこの異物を受け入れた。享受し、快楽へと変換する。浅ましい自分の体に、泣きたくなった。

「はっ……、はぁっ……あっ、あっ――……!」
「今、正義ちゃんのちっちゃい穴が、おっきく広がってちんぽ咥えこんでるとこ、丸見え」
「ふーっ……はっ……」
「一人エッチで気持ちよくなってるとこもぜーんぶ、ははっ」

 くすくすと、化野の笑う声がする。熱い。体が、すごく熱い。きっと、今全身真っ赤になってる。目の前は真っ暗で何も見えないけど、こういうことをするといつも真っ赤になる。
 ディルドのカリ首が、前立腺を擦ると、ひくひくと自身の穴が収縮するのがわかった。こんなところも、全部見られている……っ

「ふっ……はぁっ……、み、見ないで……」
「違うでしょ、正義ちゃん。見て欲しい、でしょ、そこは」

 からかうような声に、僕は生唾を飲み込み、小さく首を縦に振る。そうか、ここはそう言うのが正解だったんだ。

「ごめ、……なさ、……み、見て……、僕のオナニーっ……!」
「うんうん、見てるよ〜、正義ちゃんの変態オナニー」

 化野が満足そうに言った。恥ずかしい。こんな姿誰にも見られたくないのに。
 ディルドを使って、お尻の穴でオナニーしているなんて、変態だ。ちゅぷ、ちゅぷ、と下腹部から響いてくる水音に、自分の呼吸がどんどん早くなる。あ、もう、イキそ……っ。
 ぴく、ぴくん、と反応する体を前に、化野が制止の声をかけてきた。

「はいストーップ、正義ちゃん」
「えっ……?」
「なんかあ、見てたら俺も勃ってきちゃった。だから、こんどはこっち舐めてよ。それ挿れたままでいいから」

 僕の自慰を止めると、化野が近づいてくる気配がした。ぐ、と頭を掴まれ、おそらく股間付近に顔を寄せられる。ソファに座ると、中に挿れていたディルドが、更に奥へと入ってきた。

「ンッ……!」
「下で咥えたまま、こっちも咥えて」
「……っ、わかった……」

 化野の意思を汲み取って、僕はそのままの状態で、近づけられたそこに顔を寄せる。頬をおしつけられ、膨れたそこからは、嗅ぎ慣れた雄の臭いがした。発情した雄の臭い。すん、と鼻先をよせて、服の上から口づける。布のごわついた感触しかないけど、フェラするときは、こうするように教えられた。
 でも、流石に前が見えないと服がどこにあるかわからない。ぺろぺろと舌で舐めながら、場所を確認していく。

「……た、大志、ボタンどこ?」
「ん? あー、ここ、ここ」

 そう言って、化野は穿いていたズボンの留め具を外したんだろう、ぱちん、という音がした。再び、化野の手が導くように僕の口へ指を突っ込み、舌を摘まんだ。

「ほら、こっち、正義ちゃんの好きなの」
「……ぁえ……」

 おそらくジッパーだろう。硬い部分が舌に当たった。僕はそれを口に咥え、ジジジ、と音を立てながら下げていく。手を使わないで服を脱がした方がいやらしいから、そうして、と言われた。
 フェラが初めてというわけじゃない。散々教え込まれたし、覚えが悪かったら、その分もっと恥ずかしいことをされたから。だから、これくらいは簡単だった。

「っはぁ……」

 火照った顔で、下着の布越しに化野の物へと口づけた。というより、唇で竿部分を挟み、ちゅ、と吸い付く。
 下着越しからでも、血管が浮いて、硬くなっているのがわかる。鼻先を寄せると、蒸れた汗の臭いに加え、強い性臭がした。舌を出し、布越しに舌腹でタッチした。毎日こんなことをしているのに、よく萎えないなと思う。そもそも、化野なら、僕じゃ無くても、女の子にいくらでもこういうことしてもらえそうなのに、どうして僕なんだろう。
 ……化野の好みなんて、僕にはわからない。下着を口で咥えて、ずり下げると、完全に勃起した陰茎が顔に当たった。
 僕は、すりすりとその陰茎に頬ずりをする。

「ほら、しゃぶる前はなんて言うの?」
「…………い、いただきます」
「…………っ」

 上から、息を飲む音が聞こえた。
 僕は無視して、まだ引っかかっている下着をさらにずらし、根元の玉部分に顔を埋めた。
 …………? 化野って、こんな形だったっけ? 根元から竿にかけて、べろりと舌を這わせた。口に含んだ唾液を陰茎に擦りつけ、裏筋をちゅくちゅくと唇で挟み舌でくすぐると、化野のちんぽは反応するようにまた大きくなった。
 化野の笑う声がする。

「あは、相変わらず口ちっちゃいね〜、おっきく口開けて、ぱくって咥えなよ。得意でしょ?」
「…………うん」

 化野の言うとおり、あ、と大きく口を広げて、感触を頼りに先っぽを咥えようとした、その時だった。

「…………――っやめろ!」

 聞き覚えのある声が、小屋の中に大きく響く。
 一瞬の静寂の後、僕は間の抜けた声をあげた。

「………………え?」

 体中の熱が一気に引いて、冷めていく気がした。
 だって。だって今の声は。

「あ〜あ、セイ、喋っちゃったー。ゲームオーバ〜〜〜」
「…………な、んで……」

 楽しそうに笑う化野の声を聞きながら、震える手で、アイマスクを外す。同時に、外さなければよかったとも思った。
 
 だって、目の前には、顔を紅潮させ、信じられない化け物でも見るような目をした、誠の姿があったから。

「……ま……」

 思考が停止する。
 なんで? なんでここに? だって、ここは誰も来ないはずなのに。視界の端で、さっきまでかけられていた布が取り外されていた。もしかして、最初から?
 というか、じゃあ、今僕が咥えてたのは……。露出している誠の局部を見て、ザァっと血の気が引いていく。
 夢だ。これは夢。良くない夢に決まってる。
 震える唇で、違う、と言おうと思ったのに、声が出なかった。だって、何が違う? 僕が変態みたいなことしてたことには変わりは無い。
 化野とセックスして、こういうことだって出来ちゃうってことは、全て事実だ。

「お、俺…………っ、悪い……っ」

 僕が何かを言う前に、誠は早々に服を整えると、目を合わそうともせず、ばたばたと小屋の中を走り去って行った。
 かつん、と中に入っていた玩具が抜け落ちる音がした。僕はソファからずりおち、へたり込む。
 天気予報は、お母さんの言ったとおり雨模様だったらしく、ぱたぱたと雨水が小屋を打ち付ける音が聞こえてきた。

 どれくらい時間が経っただろう。放心している僕の隣で、化野がおどけた口調で笑う。

「あ〜〜あぁ、セイってば逃げちゃった。ヤリ逃げとかサイテ〜、ま、なんか正義ちゃんのこと真面目で清純で無垢、とか勘違いしてたっぽいし、しょうがないね」
「…………あ……」
「こんな淫乱なところ見せられたら、そりゃ逃げるかー。ドン引きだなあれは」
「ぼ、僕…………」
「正義ちゃんさあ」

 化野の声が、耳に重く響く。
 酷く楽しそうに、嬉しそうに、耳元で囁いた。

「セイに嫌われちゃったね!」

 終わった。
 こうして、作り上げた砂の城は、何度だって化野の波に攫われる。


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