15

****


 翌日、学校へ行くと、誠の席で、佐々木と誠が話していた。

「にっしー! 停学お疲れ〜!」
「停学じゃねーよ、謹慎だよ」
「いやどっちも同じっしょ! も〜、にっしーがいなくてアタシ寂しかった〜ん」
「なんでカマ口調よ」
「はははっ、いやマジさ、大志とも仲直りしたっぽいし、よかったわー、も、空気重くてっ」
「あー、悪かったな」

 その光景を見て、僕はほっと胸を撫で下ろした。
 ……よかった、仲直りしたんだ。もしかしたら、仲直りしてくれないかもと思っていたけど、佐々木の言葉に隅っこで安堵する。
 佐々木も心なしか嬉しそうだし、井上もいつも通り話していて、空気はピリピリしていない。元の教室に戻った感じがした。
 僕の机は今では全く汚されていないし、嫌がらせの一つも起こらない。心配していたあの写真も、結局出回る事はなかった。やっぱり、きっとこれが一番選択だったんだ。

「おっはよ〜」
「おー、大志、おは〜」
「うっわ、今日はまた随分派手な……」
「セイの停学明け記念ヨ」
「……だーから、停学じゃねえっつの……」

 道化師のお面をつけて、化野が登校してきた。
 もう、僕と同じ狐面はやめたらしい。化野曰く「やっぱりこれは、正義ちゃんのが似合うよね」とのことで、そもそもどうして僕と同じお面をつけていたのかも、結局聞けず仕舞いだった。
 化野は僕の後ろの席につき、背後から声をかけてくる。

「正義ちゃん、おはよー」
「…………」

 僕は教室ではもう喋らないことにしたので、小さく会釈だけして次の授業の準備をする。どうせ、化野とは後で散々喋るのだから、教室で喋らなくても、そっけなくても、文句は言われない。
 ちなみに、散々ぼろぼろになっていた教科書に関しては、化野が新しいのをくれた。というより、自分のものと交換してくれた。どうせ使わないからあげる、と言われたけど、よかったんだろうか。
 まるで一度も使ってないものかのように、新品同様綺麗な教科書。
 逆に、化野はぼろぼろにされた僕の教科書を机の中に入れっぱなしにしていた。
 化野が登校すれば、今度は化野の周りに人が集まってくる。

「大志おはよー、今日はピエロ?」
「うけんだけど」
「おいおい、そろそろサーカスデビューか?」
「大志、体育だけは5だしな〜」

 なんて、笑い声が飛んでくる。まるで、居るだけで笑いを起こして周囲を和やかにする、いい意味で本当のピエロみたいだった。
 でも、その人気が、本当に化野自身によるものなのか、今となってはわからない。化野曰く、人には線があって、その琴線に触れれば簡単に揺らぐと言っていた。ひょっとしたら、僕みたいに、望まないままの人も居るかも知れない。
 けれど、ちらりと目をやったが、化野を取り囲むクラスメイトは本当に楽しそうで、そんなようには見えなかった。
 …………僕が、自分に都合のいいように、考えているだけなのかもしれない。

「おい、小波」
「…………」

 ふいに、後ろから誠に声をかけられた。コナミ、と以前の呼び方に、少しだけ胸が痛む。僕が望んだことだから、当たり前なのに。それより、話しかけないで、と言ったはずなのに。と思ったが、誠は前のように僕に接してきた。

「席、ちょっと借りて良いか。俺の席使って良いから」
「…………」

 その言葉に小さく頷くと、化野が、不満そうに口を尖らせた。

「え〜〜、セイが前とか邪魔で黒板見えねーよ〜」
「お前どうせ見ねえだろ。俺さー、謹慎中暇でずっとゲームしてたから、すげえレベル上がったんだよ。あとちょっとでラスボス倒せるからお前らも手伝え」
「にっしー意外とゲーム好きよな」
「あー、それ井上もやってるやつ」
「お、にっしーもやってんのそれ。俺がススメたやつじゃん。やろやろ」
「んじゃ次の時間はゲームな。井上も席移動すれば」
「おー、そうするわ」

 なんて言って、当たり前のように勝手に席を交換していた。いいのかな……と思ったけど、誰も何も言わなかったから、いいんだろう。
 僕は誠の席で一人、ぽつんとその光景を眺めていた。
 羨ましいな、と思わないでもなかったけど、きっと僕はあそこには入れない。入る資格がない。
 だから、もう見ないようにしないと。

 だって僕は、化野とは友達じゃなくて、恋人になったんだから。

****

「あ、あっ、あ、あ、……っ!」

 だから、こうするのも、自然で、当たり前のことなんだ。

「正義ちゃん、きもちい?」
「……っ、きもち、い……っ」

 いつもの場所。
 いつもの秘密基地。
 ぎしぎしと揺れるソファの上で寝そべる化野の上に跨がり、僕は腰を振っていた。化野が、たまには騎乗位も試したい、と言ったから、そうなった。
 こういうことをする度に、前に誠と話した、好きな女の子のタイプがという話が、笑い話に思えてくる。何が、好きな女の子、だ。
 女の子みたいに、人のちんぽをお尻で咥えながら、腰を揺らしてる男が、彼女なんて出来るはずもないのに。
 眉間に皺を刻み、唇を結んで、僕は無心で腰を振る。ぱちゅぱちゅと肉のぶつかる音が、部屋の中に響いていた。

「ははっ、絶景〜」

 カシャ、と音が響いて、スマホの中にその光景が収められる。
 写真を撮らないで欲しいけど、流出させないことを約束して、結局許可してしまった。化野の腹に手を付いて、腰を振っていると、ローションでぬるついた指で、化野が僕の乳首を扱いてきた。人差し指と中指で挟み、にゅるにゅると引っ張る。火照った体に、硬くなった乳首を扱かれると、口から声が漏れた。

「あ、ゃ……っ」

 化野の与えてくる刺激に、散々慣れきってしまった僕の体は、そんなことにも反応してしまう。

「んっ……!」

 ピクン、とびくつく体に、化野は弄る手を止めなかった。

「ほらぁ、もっと気持ちいい所探して、腰動かしてよ」
「ん、はぁっ……うんっ……」

 ぐりぐりと、自分の中を刺激してくる陰茎に、僕は快楽を貪るように腰を振った。普段はいい様に突かれるナカも、自分で動けば、少しは余裕が出るから、こっちの方が楽かも知れない。
  犬のように、口を開いて呼吸をしながら、一心不乱に腰を動かす。

「はぁっ、は、はっ……」

 ぽた、と化野の上に汗が落ちた。元々血管が浮きやすい薄い皮膚は、すでに真っ赤になっている。腰を上げれば、ぬるるるる、と出てくるちんぽを、再び腰を降ろして飲み込む。前立腺を引っ掻きながら、こうして腰を上下に振るだけで、頭が真っ白になりそうな悦楽が襲ってくる。
 たん、たん、と音がして、無心で腰を振った。
 化野の喉仏が上下して、興奮するような息づかいが聞こえてくる。もしかしたら、僕の息かもしれない。もう、どっちがどっちかもわからなかった。汗と精液の臭いが混じって、頭がクラクラする。でも、これでいい。
 だって、こっちの方が、何も考えずに済むから。
 最初は、抵抗があったこの行為も、慣れてしまえば、大丈夫だと思えるようになった。
 だって、これは恋人なら当たり前で、普通のことなんだから。
 それに、こうしている間は、別のことに気を回さずに済むので、僕ははしたなく快楽を求めた。そうした方が、楽だったから。
 ぱちゅぱちゅぱちゅぱちゅぱちゅ! 荒い息づかいと、肉のぶつかりあう音が響く中、そろそろ限界に近くなった僕は、背中を丸めた。

「はーーっ、はぁっ、はっ、はぁっ……っ〜〜〜〜!」
「あ、イキそ?」
「うん、っ……も、イく……っ」

 化野のを咥えたまま腰を降ろした瞬間、ぴゅる、と精液を溢して、化野の腹を汚した。化野はクスクス笑いながら、とろとろと精液を溢す僕の陰茎を弄ってくる。
 ぬるぬるになった陰茎を、親指で摩るように撫で、かりかりと人差し指裏筋をかいた。

「――はぁっ……!」
「すっかりメスイキが癖んなっちゃったね。とろ顔かわいーよ」

 すっかり萎えてしまっている僕の雄の象徴から手を離し、不要とでもいうように乳頭を押しつぶした。

「あ…………っ」
「いっぱい動いて疲れたでしょ、おいで」

 そう言って、化野は両手を広げて、笑顔を見せる。僕は未だに繋がったまま、化野の上に倒れ込む。
 汗でベタベタして、くっつくと気持ち悪いし、体だって熱いし、臭いだって、全然良い匂いじゃないのに、動悸はずっと鳴りっぱなしで、化野は興奮気味な表情で僕にキスしてきた。
 口の中に、化野の舌が滑り込んでくる。こういう時は、僕もちゃんとしなくちゃいけない。だって、恋人だから。
 求めるように口を開いて、舌を絡めた。舌を絡め、ちゅう、と舌先に吸い付くと、繋がったままの陰茎が少し大きくなった気がする。そっか、こうすればいいのか。
 ちゅ、ちゅ、と吸い付くように、何度も化野の唇にキスをした。唾液が溢れ、蒸し暑い小屋の中で、何度も何度も。唇を上唇と下唇で挟み、舌を絡めて腔内を舌で弄った。繋がったま唇を重ねると、脳の奥が痺れて、考える力がどんどん落ちていく気がした。
 はぁ、とかかる吐息も気にせず、小鳥の鳴き声みたいに、ちゅ、ちゅ、と何度も音を立てる。ぺろぺろと化野の唇を舌で舐めていると、そのうち、化野の方から口を離した。

「は〜〜〜、やべ、幸せ……正義ちゃん、ほんとエッチになったよね」
「……そうかな……」
「うん、自分じゃ自覚ない?」

 そんな事はない。だって、以前の僕なら、こんなことしなかった。
 こういうことは、本当は、好きな人とするべきことだろうし、本来なら僕は男として挿入する側の立場だから、こうして、男根を咥えたままの状態で話していることすら、おかしい。
 でも、仕方ない。だって僕は、化野の恋人だから、こうするのが普通なんだ。

「恋人がどんどんエロくなって、その姿は俺しか知らないってのが、さいこー」

 くすくすと笑ったまま、化野が僕の耳に触れた。
 前に開けられたピアスは、そのままになっている。一つ違うのは、僕の耳には化野が選んだピアスが、両耳に付けられていると言うことだ。お母さんは、思春期だし、オシャレに興味がある年頃だものね、と許してくれたし、お父さんも、何も言わなかったけど、勇気だけはやっぱり侮蔑の表情で僕のことを睨んできた。
 でも、これを外すことは出来ないし、あとはもう、化野を怒らせて、これ以上穴を増やさないようにすることくらいしか出来ない。
 僕が化野のことを好きで居れば、化野は僕に優しい。
 勝手に、ピアスを開けてくることもしない。
 だから、僕は化野に従順で、化野のことを大好きな恋人でいなくちゃいけない。
 とろんとした顔で化野を見つめていると、再び化野がキスしてきた。

「正義ちゃん、俺の事好き?」
「……うん、僕は、化野のこと」
「あー……覚え悪ぃな」
「…………っ、た、大志! 大志のことが、好き……」
「うんうん、だよね〜!」

 ぎゅ、と抱きしめられて、ほっとした。
 よかった、また間違えるところだった。化野と呼ぶことに慣れてしまったせいか、たまに間違えそうになる。恋人なら、名前で呼ばなきゃいけないのに。こうして考える間にも、化野と呼んでしまいそうになる。
 僕は再び化野に唇を落としながら謝った。

「ごめんね……僕、お、覚えが悪くて」
「いいよ、次から気をつけよーね!」
「うん、わかった」
「んじゃ、またチューしよ。今度は俺がいいって言うまで、唇離しちゃ駄目だよ」
「……う、うん、わかった」

 化野の言葉に、僕は唇を重ね合わせた。もう何度重ねたかもわからない唇は、柔らかくて、気持ちいい。すると、化野が腰を浮かせ、繋がったままのちんぽを突き上げてきた。
 どちゅ、と音がして、前立腺が勢いよく擦られる。

「あ、ッア!」
「ほーら、口離しちゃだめー」
「……っ」
「ちゅー」
「ん……っふ……」

 ちゅくちゅくと音を立てながら、唾液でも交換するみたいに、唇を重ね、舌を絡める。肉厚な舌を食み、ざらついた腹を舌先でくすぐる。その間にも、直腸は擦り上げられ、前立腺を下から押し上げられる。その度に、意識が飛びそうになる。キスをしていると、頭が痺れて、星が散って、目の前が真っ白になる。僕は全てのことを忘れるように夢中でキスをした。
 全部忘れる。全部いらない。
 僕にはもう、化野だけが居ればそれでいい。そう思えば、きっと大丈夫だ。
 
「……っ〜〜〜〜!」
「はーやっべ……絞りとられそ……」

 きゅうー、と中が締まると同時に、化野が達したらしく、もう慣れた感覚が腹の下を襲ってきた。また中で……。でもゴムをしてくれてるだけ、優しいのかも知れない。
 ぬぽ、と今までぎっちりとはまっていた陰茎が引き抜かれると、熱が抜けきらないようで、お尻が少しすーすーする。ひく、と収縮を繰り返す尻穴に、化野が指を突っ込んできた。

「ん……っ」

 僕と化野は唇を離し、唾液で汚れた口元を気にもせず、脱力したように化野の上に身を預ける。重くないのかな、と思ったけど、特別何か言われることはなかった。
 化野は、脱力している僕を愛おしそうに眺めながら、僕のお尻を指でちゅこちゅこと弄る。長い中指が前立腺をこりこりと揉みしだき、穴を広げるように二本指でくぱ、と開いた。

「ふ……っ」
「気持ちいい?」
「ん、き、気持ちいいっ……化野の指が、僕のお尻弄るの、き、きもちいい……っです……っ」

 ちゃんと、素直に答えないと、不正解だ。
 僕は、気持ちよかったら、それを口にして化野に伝えないといけない。そう教わったから。完全に知り尽くされ、化野によって開発された体は、いとも容易くその刺激に溺れる。
 ぐり、と指が前立腺を捏ね摘まむと、僕の体はびくんっと跳ねた。

「んっ、んあっ……! そこっ……だ、駄目っ……」
「駄目じゃなくて、好き、だろ。教えたよね?」
「……っ、すきっ……はぁっ、好きぃ……っ! 好きです……っ、お尻きもちいい……っ」
「はは、かーわい……」

 ちゅこちゅこちゅこちゅこっ、化野の指が勢いを増し、激しく中を摩擦する。その度に、僕の体はピクピクと小刻みに痙攣し、化野の足に、僕の陰茎を擦りつけた。

「あっ、あっ、はぁっ、あっ、やっ、好きっ、好きっ、すきっ、あっ」

 泣き言のように、呪文の様に、言葉を溢すと、中を弄る指が止まった。

「……勃っちゃった。もっかいやろっか」
「はぁっ……う、うん……」
「次はどの体位がいい? 正義ちゃん、乳首苛められながらバックで突かれんの好きだから、そうしよっか?」
「……あだ、……大志が好きな体位でいいよ」
「俺は正義ちゃんが気持ちよくなればそれでいーんだけどね〜」

 なんて、明るく笑う化野に、僕はどう答えるのが正解だったんだろう。嬉しいって抱きつくのがよかったのかな。これは正解がわからなかった。けれど、化野はそこまで気にすることではなかったらしく。再びキスをして、今度は化野が僕の上にのしかかってきた。
 まだローションでぬるついている穴に、化野が陰茎を押し当ててくる。

「はははっ、物欲しそうにヒクヒクしてるっ……ハメてほしい?」
「……うん、大志のちんぽ、ほしいっ……」

 ぬるぬるとローションで滑らせながら亀頭をハメては外し、外してはハメたりしていたけれど、僕の言葉に、ぬるる、と奥まで入ってきた。さっきまで散々はめていたからか、抵抗なんてまるでなかった。正常位でセックスしながら、化野が言う。

「帰りにさ〜、マックよって、なんか食ってこうか。腹減ったし」
「んっ、うんっ……!」
「そんで、俺の家よってゲームでもしよ? 今日も親いないからさ」
「……はぁっ、あっ、あっ、あっ、そこ、すきっ」
「ちんぽに夢中になってねーでさ、へーんーじー」

 ぺちぺちと足を叩かれ、僕は夢中で頷いた。

「うん、っ、わ、わかった……っ、言、うとおり、にするっ……!」
「そ?」
「はい、ぃ……っ」

 ぱんぱんと腰を振り、音を立てながら、僕は化野の腰に足を絡める。こうした方がいいって言われたから。
 全部全部、化野の言うとおりにする。

「そういえば、正義ちゃんはセイと友達やめたの?」
「…………っ!」

 けれど、熱で浮かされていた体が、その名前を呼ばれることによって、突如冷えていった気がした。

「え……」

 考えないようにしていたのに、今ここで、よりによって、こんなことをしている時に、その名前を出さないで欲しかった。
 何も考えなくて済むから、こういうことをしているのに、その名前を聞くと、逃避すら出来ない。

「…………う、うん……」

 僕が頷くと、ふぅん、と化野は鼻を鳴らした。

「なんで?」
「なんで、って……あっア」
「だってさー、欲しかったんでしょ? 友達。別に俺はもう正義ちゃんとこうしてラブラブな恋人になれたわけだし、セイが友達でも怒らないよ」

 ぎゅ、と手を恋人のように繋ぎ絡めたまま、化野は笑みを浮かべた。他の誰にも、化野にそんなことを言われたくない。僕だって、友達は欲しかった。
 でも、それを手放したのは……。

「…………なんか余計な事考えてる?」
「あ゛っ」

 低い声で呟かれ、下から強く貫かれると、背中が仰け反り、声が出た。さっきまで恋人のように繋がれていた手は解かれ、代わりに僕の口元へと伸びてきた。

「もしかして、別の意味でセイの事好きだったりする?」
「…………っ!」

 僕は必死で首を横に振った。
 違う、そんなんじゃない。そんなことに、誠を巻き込まないで欲しい。

「ほんとかな、正義ちゃん、たまに嘘つくからな〜」
「ほ、ほんと……、こういうことするのは、た、大志とだけだし、それに、西園だって僕をそういう対象として見てないと思う……」
「そう?」
「う、うん……」
「じゃあ、見てたらどうすんの?」
「え……」
「セイも、正義ちゃんにこうして、ハメて、喘がせて、啼かせて、自分だけのものにしたい、って思ってるかも知れないじゃん」
「ち、違う……そんなわけない……」
「なんでそんなのが正義ちゃんにわかんの? エスパーでもねえくせに。あ、そーだ、じゃあ今度セイに聞いて……」
「嫌だ!」

 僕は化野の提案を、言い終える前に遮った。
 知られたくなかった。こんな、女の子みたいなことをしていることも、化野の言うとおり、快楽に慣れきって溶かされてしまう体のことも、誠には知られたくなかった。だって、知られればきっと軽蔑される。
 口で気持ち悪い、とは言わないかも知れない。
 でも、心の中では思うだろう。男にこんなことされて、悦んでるなんて気持ち悪いって。こんな気持ち悪い奴とは、友達で居たくないって。
 僕は、誠とはもう友達じゃないかもしれない。でも、誠は、友達だって思ってるって言ってくれた。
 なら、僕はその糸を、最後の希望を、残しておきたかったんだ。
 どこまでも自分勝手で、卑怯だって思われるかも知れないけど、これを知られるのだけは、いやだ。
 僕は化野に縋り付いて懇願する。

「お、お願い大志、僕別に、西園のことをそんな風に思ってないし、西園だってそういう趣味はないよ。だから、やめよう? こんな姿、大志以外に、み、見られたくないから……」
「……おねだり上手になったね」

 化野が、にこりと笑いながら僕の頭を撫でてきた。
 ほっと、息を吐く。よかった、許してもらえた……。そう思ったのもつかの間で、すぐに化野は悪魔のような要求をしてくる。

「じゃあ、おねだり上手な正義ちゃんは、俺にどう言えばいいかわかるよね?」
「え……っ」
「セイにはどう言おうかなー、この録画見てもらうのもいいかも」
「あ、あ……っ」

 駄目だ、これじゃあ、また同じことになる。
 僕は恥も外聞もかなぐり捨てて、化野にキスをした。唾液を絡めて、教えられたようにキスをする。
 それから、細められた瞳をじっと見つめて、口にするのも恥ずかしい、絶対に言いたくもない台詞を言の葉に乗せた。

「た、大志、僕大志の事が大好きだから、それより僕とエッチなことしよ……っ」
「んー……」
「……っ、た、大志のちんぽ、おっきくて、気持ちいい、からっ、中ずっ、あ、ずんずんって、た、沢山突いてほしい、っ……」
「あー……」
「あ、く、口で咥えるよっ! 僕、お、覚えが悪いから、大志の形覚えさせてくださいっ、目隠しでも、大志のがわかるようになるから!」
「へー……」
「あとは、えっと……っ、えっと……」

 今まで覚えさせられた言葉を並べたてたところで、化野はどうでもよさそうに聞いている。ああ、また駄目なのかな。僕は、また不正解だったのかな。
 情けなくて、ぽろぽろと涙をこぼした。

「お、お願いします……好きだから……大志だけだから……っ」

 もう、他に何も望まないから。
 僕がそう言うと、化野は僕の頭を撫でてきた。

「ごめんごめん、必死な正義ちゃんが可愛くて、いじめすぎちゃった」
「…………あ…」
「もう言わないから」

 あやすように言われて、僕が安堵の息を吐くと、化野が耳元で囁いた。

「その代わり……」

 ぼそぼそと耳元で囁かれた欲求に、僕は顔に熱が集まっていく。
 今まで散々変態みたいなこともしたし、セックスだって、してきたのに、どうしてそこまで、と思ったけど、ここで逆らえば、意味がなくなってしまう。
 僕は小さく頷いて、呟いた。

「……わかった……」
「物わかりがいい正義ちゃんは可愛いね。んじゃ続きしよっか」
「ん……」

 そうして、時間は過ぎていく。


- 91 -
PREV | BACK | NEXT



×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -