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 血と、汗と、精液の混ざった臭いがする。

「う、あっ! あ、ぅあッ、あ、あっ……あああ、あああああ!」
「あはははっ! 泣き叫ぶ良介くんは、かわええなあ!」

 尻んなか、熱い。ぐちゃぐちゃ音がして、その度に、意識が飛びそうになる。多分、あいつが持ってた変な液体、塗られたせいだ。後ろから灯が突く度に、声が、悲鳴が漏れる。涙がボロボロとでてきて、止めたくても止まらなかった。いつかの時みたいに、頭の中が揺れている。脳味噌が沸騰したみたいに、ぐらぐら、ぐちゅぐちゅと。腕は解かれたけど、抵抗なんて出来ず、ただひたすら布団のシーツを握りしめていた。
 後ろから俺の中に挿れたまま、灯が囁く様に、耳元に口をあててきた。

「なぁ……良介くん、見て? ほら、あそこに、首転がってはるやろ」
「ひぃっ、ぐ……うっ……あ……かい、はくさ」

 畳の上に転がった彼と、目が合う。濁ったような目で、俺を見ている、まるで汚い物でも見るように。

「良介くんのせいで、ああなったんやで?」
「うっ、あ、あっ、俺の、せい……ちがうっ、お、俺は……」

 違う、俺のせいじゃない。俺のせいなんかじゃない。けれど、転がる目は、俺を攻めたてているようにも思えた。耳元で、あざ笑うような灯の声が響く。

「何が違うん? 君が逃げはるから、ああなったんや」
「あーっ、あ、うぁっ、……ご、ごめんなさ……」
「謝ったところで、お尻にチンポ入れられてあんあん喘がるとるようじゃ、説得力ないで」

 耳元で、灯が何度も何度も、俺のせいだと囁いた。
 俺のせいだ。俺のせいだ。俺が悪い、俺が、全部悪い。
 俺が逃げたから、あの人は殺された。俺がここから逃げなければ、あの人は死ななかったと、何度も、何度も。頭がおかしくなるほどに。
 囁かれると同時に奥まで突かれて、悲鳴なのか、喘いでいるのか、自分でもよくわからない声を上げた。喉から出る声は、言葉になんてなってない。覆い被さっていた灯の手が、下から鎖骨を伝って、俺の首まで延びてきた。

「あっ、うァ、はっ……あ、はぁッ……!」
「良介くん、今度逃げたら、お父さん殺すで?」
「や、やめ……も、逃げね……お、親父は関係、ないからっ……」
「なら、言って。良介くんは、誰のモノ?」
「と、灯……っあ、あ!」

 ぐちゃぐちゃと、汗と粘液の音が混ざりあって、頭がおかしくなってくる。いや、もうとっくにおかしい。ここに閉じ込められて、こいつに犯された時から、もう駄目だったのかもしれない。うなじを後ろから舐められて、ひきつった声を上げた。

「ヒ、ぃ……っ!」
「そうそう、君は僕のものやね。ほな、もう一回、君は誰のもの?」
「お、俺は……あっ、と、ともすの……!」
「せや、その言葉、絶対に忘れたらあかんよ、君は僕の所有物やからね」

 灯の笑い声が聞こえる。目の前には、転がった海白さんの目が、俺をじっと見ていた。ごめんなさい、俺が、逃げようとなんてしたから。逃げなければ、死なずに済んだのに、ごめんなさい。ごめんなさい。
 目の前がぼやけて、引きつった声が漏れる。
 俺が、悪いんだ。……俺が悪い? そうだよ、俺が悪い……。耳元で何度も囁かれる言葉に、意識が遠のいていく。俺が悪い、俺が悪い、約束を破ったから。
 俺が悪い、ここから逃げようとなんてするから。ずっとここに居ればよかったんだ。俺は、灯のものなんだから。違う。俺はものじゃない。いや、灯のものだよ、そう考えないと、酷いことになるから。

「何考えてはるん?」
「うぁ……っ!」
「なんも、考えたらあかんよ、良介くんは僕だけ見とってな。せやないと……」

 聞こえる声に反応する前に、意識は闇へと落ちて行った。




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