紬くんと嘉門くん


 そもそも、俺と嘉門はもともと仲がいい方ではない。悪いってわけじゃないけど、ただのクラスメイトというのが一番正しい表現だ。
 大体、同じクラスではあるけれど、属するグループが違うし、喋ったことも数回くらいなもの。内容も、友達同士の会話とかではなくて、クラス内の連絡網というか、業務的なもんだ。
 だから、この状況には「なんで?」首を傾げそうになる。

「つーむぎくーん、女子たち来ないねー」
「はあ、そうスね……」
「なんで敬語!?」
「いや、なんとなく……」

 そう、なんとなく敬語。なんとなく目を逸らす。
 あんまり喋ったことのない、派手系男子と喋るとそうなるのは、俺達地味系男子の習性だ。ただ単に俺がヘタレているだけかもしれないけれど。
 嘉門幹広は、俺のクラスメイトだ。茶色い髪にパーマをかけているのかセットしているのか知らないけど、ふわふわした頭をしている。顔はいい。明るいし気さくな奴だとは思うけど、俺は少し苦手。席は近いけど、話すことは滅多にないし、どちらかというとリア充というか、クラスの明るい系グループに属しているからだ。
 クラスは女子も男子も大抵グループが分かれていて、明るいリア充グループ、ギャル系ギャル男グループ、オタクグループ。地味系グループ、そしてどこにも属さないぼっち。
 俺は一応地味系のグループに属しているから、こうやって嘉門と一対一で話す機会なんて、普段は滅多にない。

「俺あの二人にもちゃんと今日会議やるって伝えたのになー、メールしたのに返ってこねーし」
「そうですか……」

 そして、俺と嘉門は、現在教室で学校祭の舞台で何をやるかを決めている最中だった。俺たちの学校祭は、クラス装飾から、広報新聞作り、屋台、クラス全体が参加する舞台、絵画、いろいろと部門が分かれている。
 俺と嘉門は、その舞台部門の実行委員だった。とは言っても、もともと実行委員は男子と女子の二人ずつで、俺は無理やりその実行委員を押し付けられただけだった。
 しかし嘉門が先生に「舞台はやっぱり学祭の華だし、大変だから実行委員はもう一人ずついても良くないスか?」とかよくわからないことを言い出して、結局うちのクラスだけ四人という形になった。
 実行委員は俺ともう一人の女子だけど、嘉門ともう一人は副実行委員みたいなもんだ。
 確かに舞台は学校祭で一番盛り上がるところだけど、実行委員なんてただ面倒な委員会とか、雑用を押し付けられるだけなのに、わざわざ嘉門がやりたがる意味がわからない。物好きな男だ。

「ってか敬語とかやめてよー、俺ら同じクラスじゃん?」
「あっ……うん」
「つっか、サーヤもりっちゃんもおせー。もう二人だけで始めちゃう?」
「うん……そだな」

 今日は放課後、その実行委員と、副実行委員四名でこれからの予定や、クラスTシャツの作成、演目など、色々なことを話し合う予定だったのに、その女子二人がいつまで経っても来ないのだ。
 どちらもギャルっぽい娘だったし、サボってどこかに行ってしまったのかもしれない。女の子二人がいたところで気まずさに変わりはなかっただろうけど、かといってこの状況もどうよ。
 結局俺と嘉門はA4サイズのノートを机の上に広げ、これからのことを話し合うことにする。
 学校祭まであと約1ヶ月。舞台の上で何かを披露する時間は1クラスにつき十五分程度、例年、歌やダンス、劇、あとは漫才なんかが多いけど、せっかく全員参加するんだったら、全員が参加できるようなものがいいだろう。

「嘉門くん、何かやりたいことある?」
「あー、なんだろうねえ、三組は映画やるって言ってたけど、機材集めるのとか面倒っちーし」
「歌とか、踊りは?」
「紬くんが歌って踊るの?」
「いや、俺だけじゃなくてクラス全員で……」
「紬くんが頑張って踊るとかめっさウケル! それ良くね!?」
「……他のにしよう」

 当たり前だけど、そう簡単には決まらない。ただ今回の話し合いは、俺達実行委員で意見を出し合い、それをクラス会議で多数決をとって決めていくことになっているから、意見をただ出していけばいいだけだ。
 実際屋台、というかクラスでどんな店を出すとかも決まっていないんだ。

「去年の先輩とかは何やったんだっけ? 嘉門くん、資料そっちにある?」
「あー、これね。ハイハイ」
「やっぱりダンスが多いんだ。あ、組体操なんてのもあるけど」
「俺的には組体操なんて見ても全然面白くねー」
「……じゃ、嘉門くん、他に何かある?」
「さー、ま、適当でいんじゃね? どうせここで出たのを後で皆で決める訳だし」
「そうだけど」
「じゃ、もうやめて帰ろうぜ、その資料に書いてある奴候補に挙げてさ。どうせ他のクラスだってあんまり決まってないって」

 その通りだけど、一応実行委員として話し合った方がいいじゃないか。しかし嘉門はさっさと帰りたいのか、すでに荷物をまとめていた。集まった意味がまるでない。そもそも集まってもいない。
 仕方なく俺はノートにその候補を書き留めておいた。今まで出た意見、ダンス、歌、映画、劇、組体操、漫才……。どれもあまりやりたいとは思えない。

「紬くんって字ーめっちゃうまいね」
「……そう?」
「うん、俺紬くんの字好き」
「ありがと」

 字は昔習字をやっていたからか、褒められることが多いけど、このタイミングで褒められるとは思ってなかった。
 しかし、あと、クラスTシャツとか、これからの日程を決める予定だったんだけどな。でも、面倒くさそうだし、家に帰って一人で考えておこう。
 鼻歌でも歌わんばかりの嘉門を見て、俺も荷物をまとめると、教室から出ようと扉の方へ向かった。

「あれ、紬くんどこ行くの?」
「え、帰る……けど」
「一緒に帰ろーよ、クラスTシャツのデザインとかこれからのスケジュールとか考えなきゃじゃん」
「あれ、え、ここでやるのは……」
「やー、俺教室とか好きくないんだよね。腹減ったしマックいこーぜマック」

 あれよという間に、手を引かれて、俺たちは学校を後にした。
 正直、話すなら教室で全部話し合ってしまいたかったし、学校外で嘉門と話すことなんて今までなかったから緊張する。そもそもどうしてわざわざ一緒に帰るんだ。嘉門の家がどこにあるか知らないけれど、俺と家が同じ方向だったような覚えはない。
 しかし結局、俺たちは学校近くのファーストフード店に着くと、再びノートを広げていた。さっき俺がメモしたばかりの文字が並んでいて、嘉門はメニューを決めかねている。

「紬くん、なんか頼まねーの?」
「俺はいいよ」
「ふーん、じゃあポテト一緒に食う?」
「いやあの、……やっぱ頼む」
「何にする?」
「えーっと……」

 なんてことをやっているから、結局話し合いはあまり進まない。
 頼んでいたメニューが来て、二人で他愛もない雑談をした。ほとんど学祭のことには関係のないことだ。

「紬くんて兄弟いるの?」
「妹が一人いるけど」
「俺は姉ちゃんいんの。俺も下が欲しかったわー」
「いや、妹も生意気だし、あんまりいいことないよ」
「ふーん、あ、紬くんが頼んだのって新発売のじゃん、一口もらってもいい?」
「いいけど」
「サンキュー」
 という、どうでもよさそうな話ばかりが続いて、食べ終わった頃ノートに書かれていたのは「Tシャツのデザインに関しては、クラスの美術部の子に頼む」ということくらいだった。
 スケジュールに関してはまたクラス会議の時に決めるという風にはなったけど、結局問題を全部先送りにしただけのような気がする。
 嘉門はなんで俺とこんな所に来たんだろう。元々嘉門の中で、話し合う気なんかなかったというような気がするんだけど、俺の気のせいだろうか。
 そうして食べ終わった後には、雑談していたせいもあってか、陽が落ちかけていた。
 
「じゃ、そろそろ俺帰……」
「紬くんこれから暇? ゲーセンいかない? 欲しい人形取ってあげる」

 女子か!
 え、別に俺欲しい人形とか別にないですけど。そんな風には言えないけれど、正直わけがわからなかった。なんで特に仲も良くない嘉門と、ゲーセンに行かなくちゃいけないんだろう。

「いや、いいよ……」
「っつーかやっぱさ、他のことも話し合わなきゃじゃね? 何の店出すかとか決まってねーし、ゲーセン着くまで話し合おうぜ」

 それも今ここで話し合えばいい気もするけど、多分言っても嘉門は無視しそうだ。俺は諦めて嘉門に連れられ、結局話し合うことは特にせずゲームセンターで遊ぶ。あまりゲーセンには行かないけど、シューティングとか一緒にやった。嘉門はどのゲームも無駄にうまい。
 ちなみに、クレーンゲームでは微妙な顔をしたペンギンのぬいぐるみをもらった。
 俺は一体何しているんだんろうと思ったけれど、意外にも結構楽しかった。嘉門は人と話すのがうまいんだと思う。

 帰るころには、俺たちはそれなりに仲良くなっていた。

「じゃー、紬くん、また明日ー」
「うん、また学校で」

 そういって、手をふって別れた。
 まあ、それが今から1ヶ月くらい前の話だ。





 月日が経つのなんて早いもので、あっという間に学校祭の日は迫ってきていた。当初はほぼ何も決まっていなかった日程や演目も、会議が長引くと帰るのが遅くなるという自分勝手なクラスメイト達のブーイングによりトントン拍子で決まっていった。
 悩んでいた舞台演目は結局今流行のアイドルグループを模したダンスということになり、それは嘉門が中心となって皆で練習した。

 嘉門は教えるのが結構うまく、俺はダンスも歌も苦手というか下手だったけれど、教えてもらってからはそれなりに踊れるようになった。クラスTシャツもすでに出来上がっており、友人の多い嘉門のTシャツはすでに落書きだらけになっている。

「つむちゃんもなんか書いてよ俺のTシャツ」
「えー……」
「なんでもいいからさー」
「んー」

 ちなみに、女子二人は相変わらず会議に出ないことが多かったので、俺達二人は練習したり話し合うことが必然的に多くなり、嘉門とは以前よりも仲良くなっていた。
 少なくとも、一緒にゲーセン行くのは面倒くさいとか思うような関係ではない。今ではよく一緒に遊びにいったりするのだから。俺はTシャツに「実行委員、一緒にやれて楽しかった!成功させよう!」とありきたりなことを書いて嘉門に手渡した。

「ありがと。やっぱつむちゃんの字キレー。話し合いのノート、学祭終わったら俺にちょうだーい」
「別にいいけど」
「いよいよ明後日は本番だねー」
「ん、まーね。っていうか嘉門、その呼び方はやめろよ」
「いいじゃん別に。こう呼ぶのなんてどうせ俺一人なんだから」

 現在、俺たちは最初の話し合いの時と同じく教室で机に座りながら向かい合っていた。放課後だし、陽も暮れ始めているので、もう校内にほとんど生徒は残っていない。
 内容は最終的な調整みたいなもんで、当日の打ち合わせとか、休憩時間の割り振りとか、そんなものだ。
 最初と違うのは、嘉門も俺も結構真剣に取り組んで話しているということ。ちなみに、今回も女子二人は来ていない。
 最終調整くらい出ろよと言いたいけれど、意見出来るほど話かけやすい女子ではないし、嘉門もいるから一人じゃないので、別にいいかと思って呼び出しはしなかった。嘉門がメアドを知っているらしいから、やろうと思えばできたんだろうけど。

「つむちゃーん、ノートノート」
「あ、うん」

 最初の頃から使っていたA4サイズのノートを開く。さいしょは真っ白だったノートのほとんどのページが埋まっていた。たまに落書きとかも交えつつ、それなりに真面目に話し合いした軌跡が残っている。
 仲良くなり始めてから、嘉門は俺のことを妙なあだ名で呼ぶようになった。嫌なわけじゃないけど、なんだかか恥ずかしい。

「じゃあ、休憩時間の割り振りはこんなもんでいいかな?」
「いいんじゃね。これコピーして黒板に貼っておけば皆見るでしょ」
「えーと、じゃあ各部門のタイムスケジュールは……」
「あ、こっちにまとめたのあるわ、つむちゃん」
「ありがと」
「いーえ。広報新聞とクラス装飾、絵画は当日やることねーし、店番をローテーションで組んだよ」
「うん、俺らは実行委員だからちょっと休憩少なくなるけど、嘉門大丈夫?」
「何が?」
「いや、嘉門も友達と回るだろうし、俺も他の奴らと回るし、一人でできないこともないから……」

 そう言うと嘉門は口をはの字のままにして固まった。

「あり得ねえ……」
「え、なに?」

 何か呟かれたような気がするけれど、それは相手の笑顔によってかき消された。

「つむちゃんさ、俺と一緒に周ろうよ、学祭」
「いや、でも俺他の奴と約束したし……嘉門だって一緒に周るやついるんじゃないの?」

 嘉門とは割と仲良くなったといっても、いつもつるんでいる程大の仲良しってわけじゃない。元々属しているグループが違うんだ。ここ一か月は実行委員だし、一緒にいることが多かったけれど、普段の学校生活では、嘉門は向こう側のグループ、俺はこちら側のグループで過ごしている。 だから、違う人間と回るというのはごく普通だと思うんだ。一人で回る奴もいるかもしれないけど、俺は生憎いつも遊んでいる友達と回る約束をしていた。

「ご、ごめんな……?」

 むくれている嘉門に対して、なんだか悪くて謝った。嘉門のグループと俺のグループが一緒に周るっていう選択肢もあったけど、休憩時間の割り振りに問題があるし、そもそもタイプが違うから性格も合わないだろう。きっと最初の俺と嘉門のような、微妙な空気になるに違いない。

「まさか嘉門が俺と一緒に周ってくれるなんて思ってなかったから……」
「俺は最初からつむちゃんと周りたいと思ってたけど、つーかそうじゃなきゃ実行委員とかやんねーし」
「え? あ、うん。ありがと……」
「ねー、つむちゃん、どうしてもだめ?」

 ぐ、と手首を掴まれたと思ったら、予想以上に嘉門の顔が近くにあった。いつもは人懐こい瞳が妙に鋭くなって俺を捉えている。まるで蛇に睨まれた蛙のように、俺はなんといえばいいのかわからなくて、目を逸らした。
 別に一緒に周るのが嫌ってわけじゃない。むしろ楽しそうだって気はする。嘉門とは結構仲良くなったし、話してて面白い。
 ただ、最初からしていた約束があるし、それを破るのは人としてどうだろう。
 小さくゴメン、と言うと、嘉門はそれ以上何も言わなかった。

「あの、嘉門……」
「……タイムシフト、コピーしてくる」
「うん……」

 悪いことしてしまっただろうか。窓の外を見ると、すっかり陽も暮れ始めていて、教室中が夕焼けの赤に染まっていた。俺は戻ってきたら帰るだろう嘉門の荷物と自分の荷物をまとめて、ノートを見直していた。
 そういえば、嘉門と最初に話したのっていつだっけ。たしか同じクラスになった時に、席が近かった気がする。
 そんであいついつも寝てたから、「ノート貸して」とか言われたのが最初だったような……。あの後あいつすごいいい顔してノート返してきたな。そういえばその時も、字を褒められたような……。あいつ、字下手だからな。
 ぼんやり思い出していると、嘉門が戻ってきた。さっきまでのことなんて忘れたかのような笑顔で、少し拍子抜けする。

「ただいまー、つむちゃん帰ろうぜ」
「あ、うん。コピーは?」
「してきた。明日俺が貼っておくから大丈夫」
「そっか……マック寄ってく?」
「おっ、つむちゃんから誘うなんてめっずらし。いーよ、行こー」

 鞄を肩に持つと、俺たちは教室を出た。学校祭が終わるのももうすぐ。それが終わったらこんな風に嘉門と一緒に帰ったり、帰りに寄り道したりすることもなくなるのかな、そう考えると、少し寂しい気がした。







 学校祭当日、何故か俺は友人に謝っていた。

「なんだよ紬ー、休憩時間いっしょになるようにするっつったじゃねーかよ」
「いや、ごめん、俺もなんか……見落としてた」
「まーしょうがないけど、一人で周るの?」
「あー……」

 組んでいたタイムシフトが、何故か少し変わっていて、俺と一緒に周る予定だった友達と俺の休憩時間がずれていた。俺が店番の時、友達は休憩、俺が休憩のとき、友達は全員店番、といった感じに。
 一昨日見たときはこんなことになってなかったのに。
 友達は少し残念そうにはしてくれたが、俺が実行委員ということも手伝って笑って許してくれた。しかし、問題はこのシフトを誰が変えたかだ。実行委員は俺を含めて四人いるけど、その内の二人はほぼ参加していないようなものなので、変えられるのは担任か、あるいは嘉門くらいなものだろう。
 といっても、担任は割と放任主義なところがあるから、シフトは俺達生徒に一任しているはず。なら……

「つむちゃんはー、俺と一緒に周るよね」

 ぽん、と肩を叩かれて、振り返るとそこには嘉門がにこにこと笑っていた。
 友達らは皆嘉門が苦手な人種だからか、「そうなんだー」と若干青くなりながら引いている。タイムシフトが変わっているといっても、誰かに頼めば変更できるから、皆と一緒に周ることができないわけじゃないのに。
 皆嘉門と関わりたくないようで、足早に去って行った。追いかけようと手を伸ばしたけれど、その腕は掴まれ、行き場のない手は宙を掴んだ。。
 俺は少し呆れた視線を送りながら、嘉門を睨んだ。

「……あれ、変えたのって、嘉門だろ」
「うん」
「なんでそんなことすんだよ」
「あれ? 俺言ったじゃん。つむちゃんと一緒に周りたかったって」
「でも断ったろ」
「俺はわかったなんて言ってないし」

 ああ言えばこう言う。嘉門はニヤニヤしながら俺を見ていて、からかわれてるのかとも思ったけど、今日は学祭本番で、喧嘩するような余裕もない。時間もない。そもそもやらなくちゃいけないことがたくさんある。
 それに、実行委員なら、一緒にいた方がなにかと都合がいいことも事実だ。
 俺はため息をついて、どこから見ていくのか聞いた。

「もういいよ……」
「つむちゃんって諦め良くて好きだー、じゃ、まずさ、たこ焼き食いたい。つむちゃん食券何買った?」
「3組のロコモコと6組のお好み焼き……」
「そんじゃ、まずは一階から見てこー」

 手を引かれて、歩き出す。その掴まれた手が妙に痛かったので、俺は離せと言うことがなんとなくできなかった。

「店番の時間まであと何分くらい?」
「一時間くらい……かな」
「ふーん、サボる?」
「おいっ」
「ウッソー。でもそれまで二人っきりなんて嬉しいなー。つむちゃんと学祭デートだし」

 冗談なのか本気なのかわからないことを言いながら、嘉門は笑う。というか、冗談じゃなかったらやばいだろ。しかし、握られた手の熱さが、それを否定している気がした。

「俺ねえ、つむちゃんのこと好きだよ?」
「そりゃどうも……」
「ははっ」

 この学祭が終わったら、俺と嘉門の仲はどうなるんだろう。今まで見たいに、また元のグループ同士で話すようになるんだろうか。それとも……。考えるのが、少しだけ怖くて、俺は嘉門から視線を外した。

終わり

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