3


*****

 なんだか、変な音がする。ぐちゃぐちゃと濡れるような音。粘着質な液体がぶつかるような水音。それに、妙に下半身がすーすーして、ねばついて、気持ち悪い。
 ………………。
 …………あれ、俺、寝ちゃってた……?

「ん……」

 うっすらと目を開けると、暗闇の中に誰かが見えた。黒い人影が、俺の足の間に居る。…………健翔?

「あれ、アキ兄ちゃん起きちゃった?」

 じゃあ電気つけよ、といいう声と共に、部屋が明るくなる。

「え…………」

 一瞬俺は、自分に何が起こっているのか認識出来なかった。
 ピ、と音がして、部屋の灯りがついた。暗かった部屋が、一気に明るくなったので眩しさに目が眩んだというのもあったけど、そんなことは些末なことだ。自分の格好を見たら。

「!! ……は!? なっ、健翔おまっえ何んぐっ!」
「シィー、アキ兄ちゃん、今深夜だから」

 大声を上げようとしたところで、近くにあったらしいタオルが口の中に詰め込まれた。そのまま後頭部下あたりでタオルが結ばれ、俺はくぐもった声をあげる。うーうーと声をあげるが、舌がタオルにへばりついて、言葉にはならなかった。
 気がつけば腕は頭上で結束バンドのようなもので繋がれていて、さらにその結束バンドはもう一本の結束バンドで健翔のベッドに繋がれていた。
 腕を動かすことすらままならず、暴れようと足に力を入れたが、服も下着も脱がされた足は健翔に強く押さえ込まれた。それどころか。

「っ!」
「皆寝てると思うけどさー、壁、そこまで厚くないし、アキ兄ちゃんが大声あげてアキ兄ちゃんちまで聞こえたら、困るでしょ?」
「ん、ぅうっ!」
「大分良い感じになってきたから、もうちょっとね」

 健翔の、指が。
 尻穴から俺の中に入っていた。さっきから響いてきたぐちゃぐちゃという水音は、そこから響いていたらしい。長い指が、存在を知らしめるようにねっとりと絡みつき中を掻いてくる。
 いつからそうされていたのか、気付かない俺もどうかしている。尻穴に健翔の中指と人差し指がねじ込まれ、ローションの滑りなのか中をごりごりと指で穿られる。

「っ……! っ〜〜〜!」

 息を呑んで、俺は目を瞑った。なんだこれ、何が起こってるんだ。ドッキリ? 悪戯? いや、それにしては度が過ぎている。
 考えもまとまらぬままの俺を無視して、健翔は当たり前のような顔で指を動かし、ぐちゃぐちゃと音を立てて指を抜き差しした。

「もう一本増やすね〜」
「ん、ぐうぅっ!」

 三本の指が、無理矢理俺の中に入ってきて、前立腺を掠めた。

「っ!」
「てかさー、アキ兄ちゃん普段ここ自分で弄ってる? 俺、もうちょっと時間かかるかと思ったのに、結構あっさり指入ったし、ここで反応してるし、実は普段から前立腺オナニーとかしてたりして」
「…………っ」
「あははっ、顔真っ赤だ。当たり? 俺の周りにも結構居てさあ、ハマると癖になるらしいよね。俺はしたことないんだけど、どう?」

 こりゅこりゅと中を指で押し潰され、反射的に体が跳ねた。開かれた足がにわかに痙攣する。俺は口にタオルを咥えたまま、健翔の問いには答えなかった。答えられなかったというのもあるけど、例え口を塞がれていなくても、その質問には答えなかっただろう。
 だって、図星だったから。
 長年恋人がいなくて、童貞こじらせた挙げ句、ネットで見てハマった前立腺オナニーをしているなんてことがバレたら、恥ずかしさで死ねる。誰にもバレたくないと思っていたのに。
 最初は、ほんの好奇心のつもりだった。めちゃくちゃ気持ちいい、と書いてあって、どんなものか試してみようって、それだけだった。でも、気がつけば気持ちよくてハマっていた。そこを刺激して射精する感覚は、扱いて射精する感覚とはまた違う。
 どうせこっちを使う機会全然ないし、という後ろ向きの考えもあったのかもしれない。けど、今となっては最悪だ。
 健翔の指が、俺の弱いところを擽るように指の腹で撫でてくる。とん、とん、と軽く叩くようにノックしたかと思えば、強い力で押し潰してくる。

「ん゛う゛ぅううっ……!」

 いつからされていたのかはわからないけど、少し触れられれば反応する程に、俺の中は敏感になって解れていた。なんで? 俺、確かに眠ったら中々起きないけど、流石にこんなことされてて起きないってのはおかしいだろ。
 震えながら健翔を見ると、俺の中から指を抜いた。ローションで解れたらしい穴がひくつき、健翔との間にローションの糸が垂れている。

「ふっ……、ふぅううっ……!」
「ちょっと待っててねアキ兄ちゃん」

 言いながら、健翔は自分の息子にゴムを装着していた。おい、待て、ちょっと待て、嘘だろやめろ。おいおいおいおいおい! お前まさか!
 俺は目を見開いて、全力で首を横に振った。

「んーー! んぅう!」

 お前、お前ふざけんな! いっくらお前の貞操観念がおかしいからって、俺にこういうことしていいはずないだろ! 前立腺オナニーはしたことあっても、ちんぽ入れたことはねえよ!
 足も暴れさせると、健翔が困ったように眉を下げた。

「アキ兄ちゃん、しぃー。何か言いたいことがあるなら聞くから、おっきい声あげないでね。わかった?」
「………………」

 健翔が、子供の頃のような無邪気な笑顔で、言い聞かすように告げた。ここで首を横に振れば、健翔はこの行為を強行するかもしれない。無理矢理ハメられる自分を想像して、顔を青くする。
 ……それはダメだろ。人として、弟分として、超えてはいけない境界線だ。
 別に健翔は、狂ってはいないみたいだし、話せばわかってくれるかも、と少しだけ冷静さを取り戻して、ゆっくりと頷いた。
 ここで大声をあげるのは簡単だけど、それですぐに誰かが来てくれる保証もない。来た所で俺がピンチなことにも変わりはない。
 何より、相手は健翔だ。ちゃんと言い聞かせれば、わかってくれるかもしれない。健翔にとって、セックスはただの遊びで、俺とも遊びたいか言う、子供っぽい理由かもしれないし。
 俺が頷くと健翔は俺の口の中に入っていたタオルを外してくれた。
 口いっぱいに酸素を吸い込んで、大きく深呼吸した。手は繋がれたまま動かないし、逃げることは出来ない。でも、喋れるのと喋れないのは大きな違いだ。

「……健翔」

 俺は落ち着いて、あくまで冷静に健翔の名前を呼ぶ。
 けど、頭じゃ落ち着いているつもりでも、実際に呼ぶ声は、震えていたし掠れていた。ショックだった。っていうか、昔から一緒に居る年下の男にこういうことされてショックな奴いないだろ。
 でも、今はショックを受けている場合じゃない。

「なーに? アキ兄ちゃん」
「あのさ、う、腕解いてくんない? そもそも、なんでこういうことしてるんだよ? 俺相手に楽しいか? お前にとって、こういう行為は遊びかもしれないけど、俺は」
「遊び? 違うよ、全然違う」
「え……」

 俺の言葉を遮って、健翔は俺の両足を掴んだ。閉じた足を無理矢理開かれ、尻穴に健翔のモノが押しつけられる。ゴム越しにもわかるその存在感に、俺は身を捩らせた。

「っ! 健翔! やめろ!」
「なんで?」
「な、なんでって」

 聞くまでもなく、おかしいってわかるだろ。お前が、こういうことを誰とでもするのは、もういい。付き合っても居ない女の子とこういうことをして、遊んでいるのもわかった。不誠実だけど、双方同意なら別にいい。
 けど、同意のない相手にこういうことをするのは、相手が誰だろうとダメだ。
 そう言い聞かせようと、口を開く。

「こういうことは、好きな人としかしないって!」
「俺、アキ兄ちゃんのこと好きだよ。アキ兄ちゃんも俺のこと好きでしょ? ならいいじゃん」
「よくない! そういうんじゃない……っ」

 俺は確かに健翔の事は好きだ。
 ずっと昔から知っている、可愛い弟分。でも、こういうことをしたいという願望を抱いたことは一度もない。健翔が遊びでこういうことをしてるのは、俺が口を出すべきことじゃないかもしれないけど、相手が俺なら、俺には拒否する権利がある。
 なのに、健翔は一向にやめようとはしなかった。すりすりと割れ目の間を擦りながら、萎えたちんぽと玉に健翔の亀頭が当たる。

「そういうんじゃないって何? なんでダメなの? 好きなのにしたらダメなの?」
「ダメだろ! ってか、俺がダメって言ったらダメ!」
「でもさあ、俺考えたんだけど、アキ兄ちゃんって昔から、なんでも出来たし、何でも俺に教えてくれたでしょ? 俺のこといーっつも子供扱いして」
「……な、なんだよ」

 なんでも出来た、というのには語弊がある。それはあくまで健翔の目から見ての話で、実際俺は大したことは出来なかったし、同年代に比べて要領がよかったわけでもない。それでも頑張ったのは、健翔に格好良いと見られたかったからだ。
 それに、健翔が子供っぽいのは誰から見ても明らかだったし。瞳が揺れる。もしかして、俺がしてたことって、ただの俺の自己満足で、健翔にとっては迷惑だったのか?
 しかし、そんな疑問を打ち消すように健翔は続けた。

「あ、別に子供扱いが嫌だった訳じゃないよ。甘やかしてもらったのもわかってるし、俺の特権だったから」
「なら……!」
「でも、一度くらいアキ兄ちゃんが知らないことを、俺が教えてあげたいなって。こっちなら、俺の方が知ってるし」
「……っ〜〜〜〜!」

 めちゃくちゃ余計なお世話だった。それに、教わるにしても抱かれる側で教わるのはどうかしている。前立腺オナニーは、気持ちいいし、刺激があるからしているけど、別に男に抱かれたいという願望を持ったことはない。
 青ざめた顔を何度も横に振った。

「待て、だめだ、確かにしたことないけど、俺は別に教えて欲しいとか思ってない!」
「痛くしないよ、俺結構うまいんだ。だからお願いアキ兄ちゃん、俺に挿れさして?」
「いやダメだろ!」

 冷静に突っ込んだ。
 可愛らしい、昔から変わらない健翔のお願いポーズ。俺は昔からそれに弱かった。昔から、お願いアキ兄ちゃんって、この顔で言われると、仕方がないなって断れなかった。甘やかしてきた。そのツケが今ここに来ている。
 でもこれは流石にダメだろ。お前の両親にも顔向けできないし。っていうか、この状況をそのお願いでなんとか押し切ろうとしているのもちょっと問題がある! こいつには色々と話さないとダメだ!
 勢いのまま、俺は口を開く。

「ダメって言ったらダメなんだよ! 言われたらごめんねって謝ってやめろ! 昔からそう言ってるだろ、お願いしようがダメなもんはダメ! いやお前を甘やかしてきた俺にもちょっとは責任があるかもしれないけど、でもこれは……っあ゛っ」

 ぐに、と喋っている途中で、尻に押し当てられていた健翔のちんぽが、俺の中にねじ込まれてきた。まだ先っぽだ、でも、先っぽだろうがちんぽはちんぽだろ。急に入り込んできた男性の象徴に口を噤み、息を止めると、健翔が笑う。

「それで? アキ兄ちゃんは喋るの続けて良いよ」
「な、お前、ちょっと入って……っ」
「うん」
「まっ、やだ、入ってくんなぁ!」

 両足を抱えられた状態で、健翔の物が俺の中へ徐々に押し入ってくる。まるで、俺が良い言い訳を考えるのを待っているみたいに、少しずつ侵入してくる。でも、逆にそれが健翔の存在感を知らしめてくるようで、恐ろしかった。目線を少し落とせば、健翔のがゆっくり俺の中に入っていくのが見えた。
 ヒュ、と息を呑み、首を横に振った。

「やめろよ健翔。抜いて……、抜けって!」
「うんうん、それで?」
「っ、あ゛っ」

 亀頭を飲み込んだ所で、軽く前立腺を掠めた。仰け反る体を押さえつけて、ずぷずぷとまた奥へ入ってくる。
 少しずつ、でも確実に俺の中に入ってきている。
 怖い。入ってくる健翔のをどうにか抜こうと、俺は腰を引いた。けど、足を掴まれて無駄な抵抗として終わる。ローションが足され、散々解されたらしい中は、俺が想定していたよりも、痛くはなかった。むしろ。

「あ、あ゛っ、あ、あ〜〜〜っ……!」
「この辺、気持ちいい?」

 こりゅ、と前立腺を亀頭でぐりぐり押し潰され、俺は必死に首を振る。気持ちいい、と一瞬思った自分を恥じる。
 違う、こんな、健翔はこんなことしない。現実逃避に目を瞑った。けれど、すぐに前立腺を擦られて反射的に目を見開く。

「っ――!」

 全部は入れないで、亀頭から竿の半分まで入れた状態で、健翔が俺に微笑みかけてきた。

「アキ兄ちゃんが抜いて欲しいなら、抜いてあげようかなー」
「は、早く……」

 少しだけ腰を引いて入っていた陰茎が引き抜かれる。ほっと息をしたのもつかの間で、すぐにまた奥に入ってきた。

「でも、なんでダメかってちゃんと聞いてないからな〜」
「あ、あ゛っ!?」

 腸壁を擦り、閉じた穴を広げるように陰茎が、更に奥に入ってきた、でも、まだ全部入ってない。まだ、まだ間に合う。何が間に合うのかもわからないまま、俺は涙目で呼吸を乱した。
 説明を、説明をしないと。健翔はこんなだから、納得する説明をしたら、ゆ、許してくれるかも。別に俺が悪いことをした訳じゃないのに、この状況から解放されたくて、大きく息を吸った。

「け、けんと」
「ん?」
「あのな、お前はこういうのに抵抗ないのかもしれないけど、お、俺は初めてで、それに、男同士でこういうことするのもどうかと思って……、いや、健翔がそうしたいならすればいいよ、同意の上なら構わないけど、俺はダメだ、あ゛っ、まっ、で……っ!」

 俺が説明する間も、健翔は少しずつ、ゆっくりと腰を進めた。たまに止まることもあれば、焦らすように抜いて再び腰を押し進める。最初よりも確実に中に入ってきている。苦しい。いくら尻つかってオナニーしてるっていっても、別に男のちんぽ入れたことがあるわけじゃない。痛みはそこまで強くないけど、単純に苦しい。
 でも、言わないと。呼吸を荒くして言葉を続ける。

「健翔! た、例えばだ、お前が無理矢理俺にこういうことされたらどう思う!?」
「嬉しいけど?」
「そっ、いや……そうじゃなくて、ひっ、やぁ、あ゛っ……はっ……なかっ……! 擦っ、あ」
「沢山慣らしたから、中柔らかくてきもちーね、アキ兄ちゃん」

 嬉しそうに笑う健翔は、昔の笑顔そのままだ。なのに、俺はその笑顔が怖くて、それを見た瞬間今までかろうじて保っていた糸が切れた。
 昔も、こういうことがあった。健翔は悪戯のつもりかもしれないが、俺にとってはとんでもないってこと。あの時は、叱りつけて泣かせた。俺がキレたことに驚いて泣いたのかも知れないけど、ちゃんと悪いことは悪いって言わないと。

「っ……いい加減にしろ! 嫌だって言ってんだから、素直に言うこと聞けよ! なんでもお前の望む通りになるわけないだろ! いつまで子供っぽいことしてんだよ、今なら許してやるからっ――――あ゛っ?」

 さっきまで、竿半分くらいまでだった健翔の陰茎が、一気に奥へとねじ込まれた。たん、と肉のぶつかる音がして、俺は睨みつけていた瞳を、結合している下腹部へと移した。
 下半身が密着して、健翔の陰茎は見えなくなっていた。え、これ……ぜ、全部、は、はいっ……。

「あーあ」
「っ〜〜!」
「残念! 全部入っちゃったね、アキ兄ちゃん」

 悪戯っぽい顔をして笑いながら、健翔は言った。そうして、その悪戯っぽい笑みを打ち消すと、繋がったまま俺の腰を持ち上げて前のめりになり、俺の方へと首を伸ばしてくる。体勢のせいか、中に入っていた健翔のちんぽが、更に俺の奥へと入ってくる気がした。

「あ、や、あ、ああ、あ――!」
「アキにーちゃんっ、俺もう、アキ兄ちゃんの言うことならなんでも聞く子供じゃないんだよ」

 にぃ、と笑って、そのまま俺の唇を塞いでくる。くぐもった声を上げて首を捻ろうとする俺の唇に噛み付き、無理矢理舌をねじ込んできた。

「んぐ、ぅぐっ……!」

 唾液が溢れ、着たままだった部屋着のシャツを汚していく。逃げようとする舌を強制的に絡まされ、繋がったままの奥が淫らな音を立てた。ぐちゅぐちゅと音を立てて唇を貪られると、頭の奥が痺れてくる。酸素がうまく吸えなくて、酸欠になっているのかもしれない。しばらくそれを繰り返すと、ようやく唾液が糸を引いて離れていった。
 俺はもう何も言う気にもなれず、ただ、反射の様に、力なく首を振り続ける。健翔が、濡れた俺の唇を舐めて薄く笑った。

「っ……っ、は……っだめ……」 
「あーあ、やだやだって泣いて首振って、アキ兄ちゃんの方がちっちゃい子供みたい。アキ兄ちゃんって、子供っぽいなぁ」

 やれやれ、とでも言わんばかりの空気に反論したくないわけじゃなかったけど、それよりも、中に詰め込まれた健翔のが苦しくて、何も言う気にはなれなかった。腹、苦しい、体あっつ……!
 涙と同時に鼻水が出てうまく鼻呼吸が出来ず、口で息を吐いていると、健翔が告げた。

「でも大丈夫! 今までアキ兄ちゃんには散々お世話になったし、今度は俺が教えてあげる!」
「けん……っ」

「俺がちゃーんと大人にしてあげるから、安心してね、アキにーいちゃんっ」

 昔と変わらないなのにどこか凶悪な、可愛らしい笑みを浮かべながら、健翔が笑った。


****

「あ゛っ、あーーっ、やぁ、あ゛っ、っ――!」

 ぎ、ぎっ、とベッドが揺れる度に、俺は布団にうつ伏せになって声を上げた。ベッドに腕を繋いでいた方の結束バンドは、健翔がハサミで切ってくれた。腕自体の拘束は解かれていないけれど、もうそんなことどうでもよかった。
 腕が自由になっていようが、どの道逃げる気力もなく、バックから突かれて、その度にちんぽから白濁が溢れベッドシーツを汚していた。

「う、あ゛っ、はぁっ、あっ……っ!」

 これで、何回目になるだろう。ベッドの端に見える口の縛ったゴムを見て、朦朧とした意識の中で考える。苦しかった圧迫感は少しずつ薄れ、代わりに快楽へと昇華されていった。痛くしない、とは言っていたけど、これなら痛い方がましだった。健翔の下で喘ぐ自分という存在が、自分じゃないみたいで、気持ち悪い。

「っ〜〜〜〜!」

 前立腺を擦られ奥の方を突かれて、びくっと体を震わせて、もう何度目かわからない射精をする。色も薄くなって、量も少なく、情けない物だった。そのまま力を無くしてへたり込むと、俺の体をひっくり返して、まだ元気な健翔のが侵入してくる。すっかり健翔の形に広がった孔は、最初はキツかったけれど、今は容易く飲み込んでいく。

「あ、あ〜〜〜〜〜……」

 小刻みに痙攣する体を、暴くように押し入ってくる健翔の陰茎は、俺の中で硬さを増した。こんな明るい部屋の中で、こんなに情けない顔を晒して、俺のプライドも矜持も、完全にズタズタだった。鼻を啜って、なんとか声を抑えようとするが、腰を掴まれ、肉のぶつかる音に声が漏れる。

「ひぃっ、あ゛っ」
「……アキ兄ちゃん、ちょっとこっち向いて」
「やだ、健翔、撮るな、あ゛っ」

 気がつけば、健翔が俺に携帯のカメラを向けていた。照明のついた明るい部屋の中なら、さぞかしばっちり撮れるだろう。結合部を移すように手を動かされ、俺の中に残ったなけなしの理性が悲鳴を上げる。未だ拘束されたままの腕でなんとか顔を隠そうとした。

「とるな、とっ、あ゛っ、やぁ、めっ……! 健翔っ、はぁっ!」
「ダメ。アキ兄ちゃん、すっげー可愛いね……」
「ひ、っ、う」
「好き、好きだよ。アキ兄ちゃん」

 俺の足を広げて、器用にカメラを回しながら笑う健翔の顔には、もう小さい頃の面影なんて、どこにもなかった。

 そうして、俺は、俺たちは、昔一緒に過ごしたこの部屋で、してはいけないことを沢山した。



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