16



「っ、ぅうう……っ、っ……!」

 ぬちゃぬちゃと、下腹部で湿った音がする。艶めかしいその音は、わざと聞かせるようにあげているようにも思えた。聞くのが嫌で、耳を塞ぎたかったけれど、人形にそれは許可されていない。
 体の痺れは、すでに取れてきはじめていて、動かそうと思えば動かせる。けど、抵抗しようとした俺に対して、志熊は「もう一度当てたら人形っぽくなるかな」とスタンガンを眼前で振った。
 それだけで、俺の体は簡単に萎縮した。だって、もう一度あの感覚を味わいたくない。
 喉の奥がひくりと震え、志熊から目を逸らすと、それだけで力関係は証明されたようなものだった。
 俺は志熊に言われるまま、ベッドの上で大人しくすることにした。
 人形役になった俺の片手に、志熊はパイプベッドを通して手錠を繋ぐ。こんなのつけなくても逃げられないとわかっているけど、保険らしい。手錠は、ごつい金属質のものではなく、フワフワなファー素材がついた手錠だった。
 これ、手首が痛くならない奴、と志熊は笑っていたけれど、そんなことよりも配慮すべきことが沢山あると思う。
 逃げ出すことは許されない。
 抵抗することも許されない。
 今ここで逃げ出したところで、捕まってもっと酷い目に遭う。
 せめてもの反抗として、こんなことをすれば星を失う、課題中なんだろ? 犯罪だとわめき立てれば、志熊は嬉しそうに、課題なら今日終わったと教えてくれた。
 ついでに、さっき俺がした、キスを強請る動画まで見せてくれた。
 志熊を陥れようとした俺の行動は、そのまま志熊に利用されたのだとそこで知った。
 俺と志熊は、大々的に恋人と宣言された上に、校内でも恋人と認識されている。その上こんな動画まで用意されたら、俺が何か言ったとしても、有耶無耶にされてしまうかもしれない。どこまでいっても、志熊の手のひらの上だった。

 そうして、動かない人形の役を与えられた俺は、必死に耐える。
 せめて少しでも志熊を喜ばせないように、と声をあげないよう、自分の口元を両手で押さえた。眉間に皺をよせ、口を真一文字に締め上げた。
 指にゴムを嵌めた志熊の中指が、俺の中に入り込んで、中をかき回してくる。内壁を擦り、ローションのぬめりを借りて、奥へと入ってきた。

「デルタぁ、別に声あげてもいーよ」
「…………っ……っ」

 ぬち、ぬち、と指が中を行き来する。
 人形は喋ることも動くことも許されない。ならお前の言う通りにしてやるよ。その代わり、そんなことしても俺はお前のこと好きになんてならないし、お前だって空しいだけだって思えば良い。
 そう思って、睨みつけて口を抑える。

「……ま、いーけど。あ、乳首勃起したじゃん。よかったね〜」
「……っ……!」

 かち、と志熊が手元にあったボタンを操作すると、胸に取り付けられあお椀カップのようなものの吸引力が強まった。

「っ……――!」

 キュイイ、と振動音を立てながら、胸が吸われた。
 搾乳機的なものなのかもしれないけど、俺からすれば馴染みがないのでよくわからない。志熊が放り投げた玩具の中に混ざっていた。
 胸に取り付けるタイプの玩具は、肌に吸着して、乳房を吸い出す器具らしい。ぴったりとくっついたカップの中で、陥没気味だった乳首が両方とも赤く尖っていた。 外して欲しい。痛くはないけど、じんじんする。
 気持ちよくもないし、むしろ気持ちが悪い。 
 きゅう、と皮膚ごと吸い上げられる感覚に、声を上げそうになる。けど、必死で堪えた。

「っ……ふ……ぐぅ……っ!」
「まー、ココは後々としてぇ、こっちはどう?」
「…………っん……っ」
「あーキッツ、初めてじゃなかったらそれはそれで許さねえけど、キツすぎるでしょ」

 ぐちぐちと慣らすように志熊の指が俺の中を行き来する。中指で探りながら、指の根元まで入ってくる。根元まで埋め込むと、奥を触るように中で指が蠢く。それから、ゆっくりと抜かれてまた繰り返し。
 奇妙な排泄感に、俺は体を揺らした。しかし、志熊の指はどこまでも追いかけてくる。マジで最悪だ。よく他人のそんな所を触る気になるよな、本当に気持ち悪い。と罵ってやりたい気持ちを抑えて、鼻で呼吸する。
 志熊の指が、陰茎の裏側を撫でた瞬間、ぞわぞわとした感覚が体を襲ってくる。き、気持ち悪……っ!

「……っ……ふ…………っ」
「なー、デルタぁ」
「………………っ」
「いや喋れよ。俺が喋れっつってんだから。ハイ人形終わり!」
「ん゛っ」

 ぎゅっ、と萎えてる陰茎を力強く握られ、肩が跳ねた。俺は口元に当てていた手をそっと外して、涙混じりの声を漏らす。

「……なに……」
「俺さー、わかってると思うけどデルタのこと好きなんだぁ、一目惚れだったし」
「は…………?」
「だから、デルタの言うことも聞いてあげたいなあって思って
「………………」

 なんだ、何考えてんだこいつ。
 俺の言うことを聞いてあげたいっていうのなら、今すぐ俺を解放して、二度と俺に関わるな。頼むからこういうことを二度としないでくれ。けど、そんな願いは叶わないんだろうな。
 疑いの目を向ける俺に対して、志熊はにこにこと笑みを浮かべている。ケツに突っ込まれたままの指が、ぞり、と内壁を擦った。鉤状に曲げられた指が、陰茎の裏辺りをぐりぐりと押し潰した。

「ひっ、いっ……」
「デルタのここさあ、ぎちぎちのキツキツ。初めてだから仕方ねえかもしんないけど、指なんて一本しか入んねえし、頑張って二本ってとこじゃん?」
「…………」
「だから、今いきなり突っ込んだら、デルタのケツが流血沙汰んなっちゃうの、ちょっと可哀想かなーって思うわけ」

 突っ込む、という単語に、背筋が凍った。
 実際、ここまでされたら馬鹿じゃないし、これからされるであろうことの予想はついていたけど、それでも心のどこかでまだ大丈夫と思っていた。いや、言い聞かせていた。だって、認めてしまえば耐えられなくなりそうだったから。
 しかし、現状目の前の志熊の股間が膨らんでいるのははっきりわかるし、興奮してるのなんて人目でわかる。頬を紅潮させ、興奮気味に口元に笑みを浮かべている。
 俺には逃げる術が用意されていない。状況は絶望的だけど、志熊の言い方はどこか含みがあった。

「な、何が言いたいんだよ……?」
「だから、デルタに選ばせてあげようと思って」
「…………?」
「痛くないように、今日から毎日アナル開発してくださいって懇願するか、それとも今ここで俺の突っ込まれるか、どっちがいい?」
「………………」

 絶望の二択だった。
 この間の選択も地獄だったけど、今回の方が更に深い絶望を感じた。だって、逃げ道なんてどこにもないんだから。
 あの時のキスの選択肢が生ぬるく感じる。
 志熊は身に纏っていた服を目の前で脱ぐと、裸体が目の前で晒される。うっすらとついたバランスの良い綺麗な筋肉と、その下方にはガチガチに隆起した陰茎がはっきり主張を果たしている。全裸になった志熊の体は、客観的に見れば綺麗なのかもしれないけど、俺からすれば恐ろしいものに見えた。はっきり言って、デカい方だと思う。ちんこを凝視してそう思った。
 こんなの突っ込まれたら壊れる。死ぬ。
 青ざめる俺に対して、志熊は明るい笑みを浮かべた。

「どうする? デルタ」
「ど、するって……」

 ここで首を振れば、コレ、無理矢理突っ込まれるの? 死ぬだろ。絶対死ぬだろ。
 かといってこれから毎日こいつにこういうことをされるのも、それはそれで死ぬ。無理すぎて死ぬ。どっちにしたって死ぬ。
 何も言えずに俯いていると、志熊が穴から指を抜いて、腹にちんこを乗せてきた。

「ひっ……」
「全部突っ込んだらここくらいまで入るなー」

 まるで距離を測るように、俺の腹にちんこを乗せたところへ手をあててきた。ぺたり、と乗せられた手のひらは熱いけれど、相対して俺の体は冷たくなっていく。いや死ぬ。絶対死ぬ。腹とケツが避けて死ぬ。
 怖じ気づいて怯える俺に、志熊は言った。

「デルタにも頑張って貰うけどぉ、デルタがどうしてもってお願いするなら、今日は素股で勘弁してあげる」
「…………っ、そ、そも、そも、突っ込んだら、お、お前のだって痛いじゃん……っ?」

 青くなりながらも、悪あがきを見せた。
 そう、そうだよ。慣れてもいない俺の尻に無理矢理突っ込めば、お前のそのちんこだって絶対無事じゃ済まない。千切れるぞ! 痛いに決まってる! 俺も痛いし、お前も痛い。そんな行為に意味あるか? ないだろ! やめろ、やめよう。
 自分の発言に少し期待すると、志熊は考える素振りを見せた。

「まー、確かに痛いかもね」
「だろ、な、なら……」
「でも、別にいいよ。デルタので痛くなるなら最高じゃん! あはっ、それに、無理矢理広げる道具だってココにはあるっつーの」

 ベッドの上に転がっている道具を志熊が掲げた。怪しげな道具は、使用用途が不明のモノばかりで、見るからにグロテスクなものまである。無理矢理広げる? 無理矢理……。使われる自分を想像して喉の奥で悲鳴を噛み殺した。
 普通に考えれば使わないだろうけど、志熊だぞ。そんな常識があれば、元からこんなことはしてこない。
 腹に乗せられていたちんこが移動して、ずり、と尻の合間を滑る。

「っ、や、やめ」

 ローションのせいでぬるつく穴に竿が挟まれ、そのまま先端がくっついた。

「めっちゃくちゃ痛いかもしんねーけど、ごめんね?」
「いや、志熊、じょ、冗談だろ? 絶対入んないし……っ」
「壊れたらちゃんと面倒みっからねー」
「……っ――!」

 ぐ、と肛門に陰茎を強く押しつけられた瞬間、俺は反射的に謝った。

「ご、ごめんなさい!」
「ん?」
「ごめ、ごめんなさい、志熊くん、ちゃんと言う、言うから!」
「言うって何を?」
「お、俺のあ、穴、開発してください。痛くないように、今日から…っ!」

 両足を掴まれ広げられた状態で押しつけられていた志熊の腰が、少し下がった。どうして、こんなことを言ってしまうんだろう。自分でもわからないまま口走っていた。
 まるで、本能のように。
 体が小刻みに震えている。笑う志熊の姿は、小学生時代と被って見えた。
 逆らえない。
 逆らってはいけない。
 だって、俺は志熊のものだから。
 お前、今日から俺の玩具決定ね、と言われたあの日から、俺はずっと抜け出せていないのだ。
 徹底的に教えられた過去の記憶が蘇ってくる。ひゅうひゅうと喉の奥から空気を漏らすと、志熊が笑顔を見せてきた。

「いいよぉ デルタがそんなに言うんなら、聞いたげる。その代わり、ちゃんとわかるように俺にお願いしてみ? 俺のが入るまでってさ」
「…………っ」
「早く」

 怖い、怖い、怖い。
 ドクドクと荒ぶる心臓の音を聞きながら、俺は震える手をぎこちなく自分の下腹部へと持ってきた。
 足を広げた状態で、さっきまで突っ込まれかけていた穴を、手で軽く広げた状態で押さえた。

「俺の、こ、ここっ……し、志熊が入るまで、開発してください……っ!」
「はい、よくできましたぁ〜

 ちゅっ、と音を立てて額にキスをされた。あとで、今すぐ突っ込まれた方がましだったと思うかもしれない、けど、恐怖心には勝てなかった。
 そう、そうなんだ。
 俺は一生、志熊に勝てない。
 理解した瞬間、心が打ちのめされていく。ぼろぼろと涙を溢すと、志熊はあやすように頭を撫でてきた。まるで、優しく取り繕うようなその手のひらに、俺の心が揺れ動いた。

「デルタ、まあた泣いてんの? ほんっとしょうがないな〜」
「し……」
「んじゃ、自分で足広げた状態で支えとけ? 俺がやりやすくて、見えるようにな?」
「………………」

 志熊にも慰めるという人の心があるのか、と期待した俺が馬鹿だった。こいつにそんな心があるはずないのに。鼻を啜って、俺ははい、と声を溢した。足を広げて、膝の裏から手を突っ込むと、広げた状態で見えるように支えた。


****


 それからしばらく中を指で弄られた。はっきり言って気持ちよくなんてない。ただ、ひたすら異物感と不快感があって、前立腺、というところを触れられると、鳥肌が立つ位だった。マジで無理。
 それから指で中を広げるとローションが継ぎ足され、穴の中に、一番小さいサイズであろうバイブが押し込まれた。指よりは太いけど、志熊のより大分小さい。それだけでもかなりの圧迫感があった。内臓が押し上げられるような苦しさに、呼吸が整わず、荒い息を吐いていると、開いた口に蓋をするようなキスをされた。
 唾液が溢れ、舌が絡め取られると、腔内くまなく犯される。酸素不足なのか、段々と頭の奥がぼやけてきた。
 志熊からもキスするように指示されると、俺はもうどうでもよくなって舌を伸ばす。もう、何度もしてきたことだ。躊躇いはなく、それよりも早く終わって欲しかった。

「ふーーっ……ふぅ……っ」

 ちゅくちゅくと唾液を交わしながら口づけていると、中に突っ込まれたバイブが抜けないように固定され、四つん這いの体勢にさせられた。足を閉じるよう指示され従うと、太腿の隙間から、志熊のモノが顔を出す。

「あ〜〜〜、肉付きよくねえなあ、デルタ……っ」
「……っごめ……」
「はぁ……っ、いいよ、っ、でも、昔の方が、絶対よかったのになぁ……っ」
「…………っ……っ」

 それは、肉厚的な意味で言ってるんだろうか。痩せたせいか、太腿をぴったり閉じたとしても、隙間は出来る。
 まあ……どっちでもいいし、どうでもいいか。だって、されることに変わりはないんだから。
 にゅるにゅるとローションの滑りを借りて、志熊のが俺の太腿の中を行ったり来たりする。同時に、俺のちんことぶつかって、陰毛と一緒に擦れた。悪寒めいた感覚が背中を駆け巡る。

「っ……っう……っ」
「はぁっ、デルタぁ……っ!」

 にちゅ、ぐちゅ、と濡れた音が股間を行き来する度に響く。萎えたままの俺のちんこを、志熊が掴み、擦れ合うように手の平の中に閉じ込めた。

「や、やめ……」
「ほら、デルタもさあ、勃起しろよ、な?」
「…………っ――!」

 背後から志熊に囁かれ、俺の体は反応する。
 気持ち悪いと思っている、心底嫌だと思っている。だけど、俺の体はそれが当たり前のように志熊への従順さを示した。

「ほら、いい感じっ……!」
「う、……っあ、……っ」

 硬くなってきたちんこを擦りながら、志熊が腰を振ると、ぱちゅ、と肌のぶつかる音が響く。別に本当に志熊のちんこを中に入れられてる訳じゃない。でも、バイブが入っているせいか、まるで中に突っ込まれて、セックスしているみたいな錯覚を覚える。誰とも、こんなことをしたことなんてないのに。
 荒くなってくる呼吸に、汗が流れた。じっとりとべたつく肌が触れると同時に、俺の幹がどんどん硬度を増していく。

「は、は……! イ〜イ眺め……っ!」
「あ゛っ!」

 ばちゅっ、と腰を打ち付けられ、手の中で志熊のと俺のが擦れ合う。突っ込まれたバイブを、上から押し込まれた。

「っ、あ、ぃあっ」

 喉の奥から掠れた声が溢れると、気分を良くしたように志熊の腰振る速度が少し上がった。手のひらの熱で溶けていくような感覚に、心拍数が上がっていく。

「はぁっ、はぁっ、はぁっ……!」
「デルタ、デルタ……っ!」

 譫言のように俺の名前を呼ぶ志熊の声を聞きながら、気がつけば精を放っていた。……最悪だ……っ。
 こんな風に擦られただけで、イってしまった。
 四つん這いになり、犬のような体勢で、閉じた太腿の隙間から、志熊のが引き抜かれた。

「……あれ〜、デルタ、もうイっちゃった?」
「…………っ……」
「ふは、デルタって、結構早漏だよね」

 その言葉に、顔が熱くなる。
 ……俺は、ダイエットするに当たって、常に禁欲を心がけていた。色々と。その延長で性欲もなるべく抑えていて、処理をしないことが多くて、だから、そのせいで。志熊みたいに万年発情したりしてないだけだ!
 それなのに、なんで俺が恥ずかしくならなくちゃいけないんだろう。俯く俺の背中を、志熊が撫でる。

「あ、別に貶してるわけじゃねーよ。すぐイくデルタもかわいいなーって。だから沢山イっていいよ」
「るせ……も、いいだろ……っ」
「は? いや俺まだイってねえし。ってか、デルタ肉なくなっちゃったから、素股してもちょっと硬いし緩いんだよね」

 言いたい放題言う志熊は、やっぱり悪魔だと思った。
 人の体を好き勝手使っておいて、言うことがそれかよ。怒りを覚えていると、胸に取り付けられていたカップが外された。吸着していた部分が赤く痕になっている。

「何……っ! ぅあ゛っ!」
「ここ、ちょっとは敏感になった?」
「や、やめろっ、じんじんするから! 痛いんだよ! ゃあ゛っ」

 乳首を摘ままれ、上に抓り上げられた。散々吸われた乳首は赤く腫れて、陥没していた頃の面影なんて欠片もない。尖った乳頭を、志熊の人差し指の腹でスコスコと撫でられる。

「っ、う、う、っや……、やだって……」
「デ〜ル〜タ〜、あんまやだやだ言ってっと、もっとやりたくなっちゃうよ俺」
「………………」

 その言葉に、俺は口を閉じた。実際、その通りだと思ったからだ。
 人が嫌がることをやめましょう、という小学生の頃に誰もが習う道徳の授業全部受けなかったんじゃないかと思うほどに、志熊は人が嫌がることを率先してやる。
 耐えるように口を結ぶと、志熊の指が赤く熱を持った乳首への愛撫を再開する。それと同時に、耳たぶが甘噛みされた。

「ひ……」
「デルタさあ、このピアス自分で開けたの?」

 ピアスの留め具が、舌で嬲られる。頷くと、気のない声が返ってきた。あまりに近い志熊の声がダイレクトに耳に伝わってきて、体中に震えが走る。乳頭の先が、爪先でカリカリと耕されると、背中が自然と反っていく。気持ちいい、という感覚よりも、ビリビリと電気が走る感じに近かった。痛みと共に、じわじわと奇妙な快感が駆け巡る。

「俺が開けてやりたかったな〜、ここ開ける?」
「……勘弁してくれよ……っ」

 きゅっ、と抓られて、俺は怯えた。志熊ならやりかねないからだ。
 膝の上に座らせられると、勃起したままの志熊のちんこが背中に当たった。背後から伸びてきた手のひらは、乳輪の形をなぞるようにくるくると指で乳首へ触れる。それから、軽く叩くように指腹でトントンとノックされたり、指で押し潰されたりした。な、なんか背中がぞわぞわする……っ!

「じゃあさぁ、デルタ」
「…………っ……」
「もっと開発して、ここで気持ちよくなれるようになったら、つけよっか」

 背後から耳裏をべろりと舐められて、乳首を強く引っ張られた。喉奥から情けない声を上げると、ようやく志熊の指から解放される。終わった……? かと思えば、未だ勃起したままの志熊の息子が、俺の目の前に突きつけられた。

「んじゃ、デルタ舐めて」
「…………え……?」
「素股じゃイけなかったから、口でイかせてよ。大丈夫、下手くそだろうけどちゃんと教えてあげるからさ」
「や、でも……俺……」
「それとも、さっきより広がったと思うから、今すぐ突っ込もうか?」
「………………」

 脅迫めいた言葉に、汗が流れた。突きつけられた男の象徴は、むわりと雄臭く、これを口に咥える図が想像できない。固唾を呑み、目の前の凶悪な陰茎を睨んだ。
 中に入ったままのバイブへと触れる。
 ……こ、こんなの、ちょっと弄ったくらいで受け入れられるはずないだろ。今俺の中に入ってるサイズより二回りくらいデカいサイズだぞ。無理に決まってる。けど、こんなの咥えるのもそれはそれで無理だ。
 許して貰えないかと、目線だけで志熊を見上げると、志熊は優しげな笑みを浮かべてきた。

「なに?」
「し、志熊、あの……」
「うん」
「もっかい素股じゃ……だ、だめ?」
「だめ、さっさと咥えろよ、デールタ」
「………………」

 にべもなかった。俺は再び志熊の陰茎を見つめる。血管が浮いたちんこは、完勃起状態で、触れるとぶるんと縦に揺れた。他人の勃起したちんこをこんな間近で見ることになるなんて。

「志熊ぁ……おねが……」
「デルタ、俺、あんまり気が長いほうじゃねーよ?」
「………………」

 ああ、ダメだ。
 言うだけ無駄なのか。
 そう思った俺は、意を決してゆっくりと舌を伸ばした。ぴたり、と舌先が志熊の亀頭に触れると、雄臭く汗の味がした。……俺は一体、どこへ向かっているんだろう。
 志熊の手が再び俺の頭を撫でてくる。ゆっくりと、やさしく、捕食するように、丁寧に。

「今日から毎日、いっぱい練習しような、デルタ」

 瞬間、俺の脳内には、蜘蛛の巣にかかった虫の図が浮かんだ。
 志熊に逆らえない人形。
 動けない餌。
 捕食者と被捕食者。

 抜け出せないんだ、きっと。





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