リセットボタン

たとえば俺の目の前に人生のリセットボタンがあったとしよう。そうしたら、どうする?
どうするっていうか、まぁ押すよね。押しちゃうよね。むしろ連打? みたいな。

高卒ニートで、引きこもり。もはや三十目前のこの俺に、この先どんな未来があるっていうんだ。生憎、この国は、脱落者が這い上がれるほど生易しくなんてない。想像しても最悪なイメージしか浮かんでこない。やり直せるか? 人生を。
そんなに簡単なものじゃないんだ。やる気と運と気力と根性があれば、可能かもしれないけれど、生憎俺にはそのどれもが備わっていない。

だから俺はリセットボタンを押すだろう。
だけどそれは、俺が今まで無駄に過ごしてきた人生の記憶を残していることを前提としての話だ。湯水のように流れた取り戻せない時間。
あの時ああしていれば、こうしていれば、そういう後悔って誰にでもあるものだろ? 記憶を残していたのなら、避けて通れる。間違わなかった人生を送れる。だから俺はボタンを押すのだ。今の俺にならない為に。

だけど、今までの俺の記憶を全部消して、再び新しい人生が始まるとしたらどうだろう?
まったく別の「俺」としてやり直す。それはそれで魅力的な話だ。
だけど、それで俺がまた道を誤らないとどうして言える。俺はまた同じ過ちを繰り返して、結局また後悔する日々を繰り返すんじゃないだろうか。そうして、やり直してもやり直しても、自分の人生の分岐点を悔いるのだ。
その場合は果たしてリセットボタンを押しただろうか。それでも、やはり押していたかもしれない。
ありもしない可能性に賭けて、違う自分になれることに縋り付く。

本来ならば、こんな心配は全て杞憂だ。
何故って、人生にリセットボタンはないからさ。ゲームじゃないんだ。やり直しはきかない。ラスボスに負けてリセットボタンを押せる小学生時代は終わった。
ならば、どうしてこんなことを考えているのか。そりゃあ、失敗してしまったら、あの時ああしていれば、と考えるのは人間の性ってものだ。
だけど、今は少し違う理由がある。

「おめでとうございます! 貴方は選ばれました!」

目の前に、俺の人生のリセットボタンが差し出されている。
とても奇妙な光景だ。
食い終わった食事の残骸に雑じり、埃やらゴミが転がっている。閉め切られたカーテンから漏れる僅かな光。その光の中で笑うのは、タキシードを着た中年の男だ。メタボリックな体系に、顔には貼り付けたような笑みを浮かべている。どういう訳か、口には女のような真っ赤な口紅を塗って。

「そのボタンを押したらあなたの人生はやり直せますよ。さぁどうぞ、さぁさぁさぁ!」

男が嘲笑するようにニヤニヤと笑うと、呼応するように髭が揺れた。肉付きのいい掌の上には、正方形の箱があり、その中心には青い出っ張り……ボタンがある。材質はまるでプラスチックのように、安っぽいものだった。これが俺の人生のリセットボタンとは、随分チャチな作りをしているものだ。
男は俺の目の前にそれを突きつけ、もう片方の手で口元の髭をいじった。でっぷりとした赤い唇をつり上げ、再び「さぁ!」と笑う。

夢だと思った。
当たり前だ、これが夢以外のなんだっていうんだ。
俺の部屋には、俺以外誰も入ってこれない筈で、入ってこようとすらしない。母親の顔だって、もう何年も見ていないんだ。唯一ある外界との繋がりは、毎日送られてくるメールのみ。そのメールも、もう開いていない。開きたくなんてない。何も見たくないんだから。
俺が狂ってしまったか、そうでなければ夢だ。夢に決まっている。本当に夢?
……じゃあ、いっそ夢に縋ってみてもいいんじゃないだろうか。やり直せるものなら、やり直してみたい。
縋れるものがあるうちは、縋ったっていいだろう?
そうやって縋ることばかり考えているから、俺はクズなのだ。

「おやぁ、押さないんですかぁ?」
「………………」

だけど、そんな性格、直せるものならとっくに直している。
俺は何も言わず、ボタンへと手を伸ばした。

「押すんですね。押すんですね!?」
「…………」

カチ、という無機質な音が響いた。

「おめでとうございまぁす! あなたはやり直す権利を手に入れました!」

その言葉を最後に、俺の目の前は真っ暗になった。









懐かしい。とても懐かしい音がした。耳に響くのは俺が昔よく聞いた音。いや、今でも窓の外からはたまに聞こえることもある。そう、学校のチャイムの音だ。
学校を卒業してもう何年も経つけれど、この音だけは何年経っても変わることはない。
その音が聞こえてから、俺はゆっくりと目を見開いた。周りからざわめく人の声が聞こえる。続いて、俺を呼ぶ男の声。

「……や、………んや………」

肩を揺すられて、ゆっくり身を起こす。
体がとても重かった。風邪をひいた時のように、ずっしりとした重み。俺は目を擦る。まだ眠い、夢の中にいるみたいだ。

「しーんやって!」

声の主に、背中を叩かれたらしい。軽い衝撃が走り、完全に目が覚めた。すると、信じられない光景が広がっていた。

「う…………?」
「ハヨー、伸也、お前寝すぎじゃね? 数学の茂ちゃんだったから見逃してくれたけどさー」
「お前…………や、八代!?」
「は? なに当たり前のこと言ってんの? 他にどんな八代がいるってーの」

目の前には、懐かしい景色が広がっていた。最初は幻覚かとも思った。けれど、幻覚にしてはリアルすぎる。
それは見間違う筈もない、俺の高校時代の教室だった。理解するのに、少し時間を要したけれど、黒板に書かれた数式に、掲示板に提示されている連絡事項。外では体育をやっていたらしい。窓からジャージを着た生徒達が校舎内に入ってくるのが見えた。
今はどうやら授業終わりの休み時間のようだった。何人かの生徒が、教室で話したり、廊下でふざけあっている。

呆気にとられた俺は、自分の姿を改めて見た。
今じゃどこに消えたのかもわからない、高校の時の学ランを着込んでいる。それから、机。悪ふざけで削ったらくがきが残っている。机の中には、教科書も。
今度は、自分の掌をまじまじと見つめた。一度握って、それからもう一度開いた。確かに自分の手の感触はあるし、声も、リアルに聞こえてくる。これは、夢か? でも、それにしてはあまりにも鮮明じゃないだろうか。
ぼうっとしている俺を不思議に思ったのか、八代が俺に話しかけてきた。

「おい、伸也。お前なにしてんの? さっきから自分を見たり教科書確認したり……あっ、わかった。宿題忘れたんだろ? お前いつもそうだよなー」
「八代……」
「まっ、そんな時のためにこの八代くんがいるんですけどねえ、ほら、見せてやるからノート出せ。次は古文の訳だろ」

八代が悪戯っぽく笑いながら、俺にノートを差し出してきた。芝居がかった立ち振る舞いは相変わらずだ。だけど、懐かしさに笑みを零せるほど、俺に余裕はなかった。

「……八代、今って西暦何年?」
「……はぁあ? さっきからなんだよ、未来人かお前は?」

あながち間違っていない質問だ。不審そうに見る八代に、いいから、と言い募る。すると八代はたじろぎながらも答えてくれた。その日付は確かに十数年前のもので、これが夢でないのなら俺は記憶だけが過去にタイムスリップしたということになる。
俺はタキシード姿の、奇妙な男を思い出した。つまり、あのリセットボタンは俺の人生そのもの全てをやり直すものではなく、ある一定の場所からやり直すというものだったらしい。あるいは、そういう夢を見せているのか。

「伸也?」

八代が、俺のことを不思議そうな顔で見た。健康的に日焼けした顔。浅黒く、あどけなさを残しながらも精悍な顔立ちをした八代。そういえばこいつは、こんな顔をしていたっけ。俺の中で高校時代の八代の存在は、こんなにも和やかではなかったから、忘れていたのかもしれない。

俺たちは幼なじみで、小学校の時、隣の家に八代が越してきた時から、ずっと一緒の腐れ縁だ。
だから俺は八代のことはある程度わかっているつもりでいたし、八代もそうだと思っていた。だけどそれは違った。俺が知っている八代なんて、ほんの一部だけだった。
そのことは、俺だけが知っている。今の俺だけが知っている。

「伸也ー……おい、聞いてる?」

俺は過ちを犯した。それは俺の過ちだったのかもしれないし、あるいは八代の間違いだったのかもしれない。今となっては仕方のないことだと思う。
だけど、いや、だからこそ、俺はもう間違えてはいけないのだ。選択して、選択して、正解への道を歩まなければいけない。でなければ、俺はまた悲惨な未来を歩むことになる。それだけは、阻止しなければいけなかった。

「…………八代……」
「ん?」
「あのさ、俺、八代のことが好きなんだけど。付き合って」
「は……?」

一瞬、教室内が静まり返る。

「な、えっ、あ……は?」

しかし、すぐにからかうような野次が教室中を包んだ。男子校なので、こういう他人の色事はいいネタになる。それがたとえ、冗談でも、冗談じゃなかったとしても。要は話の種ができればいいのだ。
隣のクラスからも、何事かと覗いてくる者までいた。みんな暇なのだろう。最初に動いたのは八代で、顔を赤くして机の上に置いてあった俺の手を勢いよく掴み立ち上がった。
ぱくぱくと口を金魚のように動かしながらも、その行動は早かった。

「八代」
「ばっ、おま……なんてこと……ちょっとこっちこいいい!!」

口笛と笑い声と声援に見送られながら、俺たちは教室を抜け出した。それは見ようによっては、青春映画のワンシーンのように見えたかもしれない。しかし、そんな綺麗なものじゃないことを、俺はよく知っている。
例えばこれが夢でも、夢でなかったとしても、ただ後悔しないようにしたかったのだ。



教室を抜け、人気のない科学準備室にたどり着いた時には、八代の顔はさらに赤くなっていた。視線を様々な方向に彷徨わせ、誰もいないと確認すると、肩で息をしながら、じと目で俺の方を見つめてきた。

「誰もいないみたいだな……」
「うん」

すると、八代は少し不審な顔をして俺の顔をのぞき込んでくる。大きな瞳は、どこか疑うような目をしていた。

「なぁ……お前、本当に伸也?」
「なんだよ……、それ」
「いや、普段に比べて、なんか妙に冷静だからさ……」

それじゃあ普段の俺は全然冷静じゃない慌て者ということになる。しかし、思い返せば、高校生の時はそうだったかもしれない。周りに合わせて、笑って、鈍くさくて、今もそのこと自体は変わっていない。ただ、記憶が残っているだけだ。

「そうかな」

俺は薄く笑った。笑う以外にないだろう。誰が信じるんだ、俺は実はもう三十寸前のうだつの上がらない男で、あることをきっかけに人生をリセットして高校時代にタイムスリップしてきました、なんて。あり得ない話だ。
しかし俺が笑ったことで、少し安心したのか、八代が口ごもりながら俺に話かけてきた。

「ところで伸也……お前、その、さっきのアレ……、マジで言ってんの? 冗談だったら……」
「冗談じゃない、マジだよ」
「……マジ? 訂正すんなら今だぞ」
「マジだって」
「マジかよ……」
「マジだ」

鸚鵡のように繰り返すと、八代はなんとも言えない顔をした、彷徨わせていた視線を俺に戻し、口元を強く結ぶと、肩に乗せられていた手に力がこもった。
それから、少し目を伏せて、もごもごと口の中で呟く。

「し、伸也!」
「ん?」
「お…………俺もっ……そ」
「…………」
「その、流れで言うわけじゃないんだけど、伸也のこと、す、好きっていうか……」
「…………」
「いつからだろうな、俺……伸也のこと、好きで、あ、でもい、言うつもりとかなかった。伸也のこと、困らせたくなかったし……」
「うそつき」
「えっ?」
「いや……、なんでもない」
「でも、俺すげえ、嬉しいよ……まさか伸也も俺のこと好きだったなんて、さ、なんか、夢みてぇっつーか……」

顔を赤くしながら、八代ははにかみながら笑った。その顔は、恋が叶った少年のように、幸せそうな顔をしていて、俺は前の人生で起こった悲劇を嘲った。もしかしたら、本当に夢かもしれない。こんなこと、現実であり得る筈がないのだから。
でも、俺はそれでもいいと思っている。これは俺が見ている夢で、現実の俺はもう二度と目覚めなくても、それでかまわない。
ただ、今回だけは失敗しないようにしたかった。同じ人生を歩みたくなかった。だけど、これでもう安心だ。
だって、ここで以前の人生とは分岐したのだから。俺も、少し笑う。嬉しいという笑みではなく、安堵の笑み。これでもう大丈夫だ。大丈夫、もう、あんなことにはならないよな。
大丈夫さ。

「伸也、その、えー……」
「なんだよ」
「突然言うのもあれなんだけど……キスしていい?」
「…………は?」
「いやっ、だってお前、やっぱり冗談だったとか言いそうだし!」
「言わないって」
「でも、不安なんだよ……だめか?」
「……別にいいけど」

不安に揺れる瞳を見て、俺は目を瞑った。震える唇を合わせながら、妙に熱い手のひらを重ね合わせた。触れるようなキスだったけれど、その感触は確かに実在していて、俺は泣きたくなる。
夢にも温度って感じるんだっけ。味覚は?色彩は?
よくわからないけど、今は全てを感じるから、これはやはり現実のことかもしれない。
もう、それすらもよくわからなかった。

「へへっ……あんがと」
「うん」

唇を離すと、八代が真っ白な歯を見せてにこりと笑った。俺も笑う。二人でニコニコと笑いあった。

「好きだよ、伸也。俺と……付き合ってください」
「……うん」
「ずっと一緒にいてほしいんだ」
「わかった」
「ずっとだぞ?」
「わかってるって」

子供のように指切りをしながら、俺は心のどこかで、あの男の声を聞いた。
リセットボタンを持った男の、嘲笑するような笑い声。とても不愉快だった。

でも、大丈夫、やり直したのだから、大丈夫なんだ。









それなのに、どうしてこんな結果にしかならないんだろう。

「押しますか? 押しますよねえ? あっはっは、押していいですよぉ」

今、俺の前には二人の人物がいる。一人は寝転がっている八代。腹部は赤く染まっている。瞳孔はとっくに開いていて、淀んだ瞳は空虚を見つめている。もう事切れているんだ。
もう一人は、いつかの男。相変わらず卑下た笑みを浮かべながら、俺にボタンを差し出してくる。前回と違うところは、そのボタンの青色が血で赤く汚れているところだろうか。

俺はひとまず男を無視して、八代の前に座りこんだ。

「…………八代」

八代は何も答えない。当然だ。俺が殺した。殺さなければ、こっちが殺されていたんだから、これは正当防衛だ。俺は何も間違えていない。本当に? 間違えていなかったのか?
どうしてまたこうなってしまったんだろう。今度は大丈夫だと思ったのに。

「八代……」

一番最初の人生で、俺は失敗した。

高校の時、震える声で告白してきた八代を、俺は徹底的に拒絶した。
あの時、告白するつもりはないなんて言って起きながら、あのまま俺が何も言わなければ、八代はやがて俺に告白していたのだ。あの大嘘つきめ。
だけど、俺は最初の人生でそれを受け入れなかった。無視して、気持ち悪いと罵った。そうしたら、八代は俺を追いつめたのだ。元々影響力の強かった八代は、俺の周りから味方をなくして、徹底的に追い詰めた。逃げ場を無くし、頼るものも無くした俺は、いじめられた。
かつて親友とまで思っていたのに、口にはできないような非道なことをも沢山された。
幼なじみの友情なんてものは、最早そこには存在しなくて、残っていたのはただ補食する側とされる側の関係性だけだった。

八代が怖かった。人が怖くなった。外が怖くなって、やがて家に引きこもり、誰とも話さなくなった。

だから、次は八代を受け入れることにしたんだ。
とことん受け入れて、優しく対応するんだ。懐柔してしまえば、もうあんなことにはならないと思った。いじめられて、追い詰められれるような真似、もう経験したくない。実際、うまくいっていたんだ。
なのに、どこでどう間違えたんだろう。

『ずっと一緒にいてくれるって言っただろ、なのに、どうして伸也は俺を裏切るんだよ!』

俺は裏切るつもりなんてなかったのだ。というよりも、最初から八代のことを愛していなかったのだから、信頼もなにもなかった。そこまで考えて、俺はひょっとすると八代のことが嫌いだったのかもしれないという考えにたどり着いた。
たどり着いた? 違う、考えないようにしていただけだ。
明るく男らしい、友達も多い八代。地味で何考えているかわからないとか言われ、友達もいない俺。両親にすら比べられた。八代はこんな俺のどこを好きになったんだろう。
こんな男をどうして拘束したかったんだろう。

『俺から離れようとするなんて、許さないからな!』

逃げたかった。多分、俺は八代から逃げたかったんだと思う。殺してでも、逃げたかった。だから、殺したんだ。

『伸也、愛してる。お前が好きだよ』

俺はずっと嫌いだった。

『お前を殺したら、俺もすぐ行くから』

そんなの俺は全く望んでいない。

『ごめんな、伸也』

「………………」
「どうかされましたか?」

不気味な男がにんまりと笑った。俺はいや、と首を振る。結局、何が駄目だったんだろう。受け入れても駄目、拒絶しても駄目。じゃあ、そもそも関わらなければよかったんだろうか?
俺はどうすればいいんだ。どうして、こんなことにしかならないんだ。どうすればいい、どうすれば。
いっそ殺されてしまえばよかった。

再び、目の前にボタンが差し出された。この男が何を考えているかまるで想像がつかないし、そもそもこの男は何者なのか。

「あんた……なんなんだ?」
「それを言ったところで、貴方様になんの関係がございましょう? ワタクシはただ、リセットボタンを提供するだけですよぉ、で、どうなんです? 押しますか?」

聞いてくる割には、男はさっきから押すという選択肢しか出していない。元々、俺が押さない筈はないと思っているのだろう。確かに、俺は押してしまうだろう。だって、また失敗してしまったのだから。
血の臭いが立ち込める部屋で、俺はそのボタンをじっと見つめていた。瞼の上に血液が流れてきたので、片手で拭う。

「さぁ、どうぞ」

虚ろな目で、ゆっくりとボタンへと手を伸ばした。










家の隣に、引越しのトラックが止まるのが見えた。やがて、そのトラックから小さな子供が降りてくる。いかにも快活そうな子供は、新しく出来上がった家をキラキラとした目で見つめていた。すると、隣の家の窓から見下ろしている俺に気づいたらしい。同年代の子供がいたことに対する嬉しさか、俺に向かって大きく手を振った。
俺は、カーテンを閉める。見なかったことした。俺の人生に、もう八代は関わらない。

「伸也ー、お隣さん、挨拶に来てるから、ちょっといらっしゃい!」
「いかない」

階下から母親の呼ぶ声が聞こえた。けれど、俺は決して是を唱えなかった。
これでいいんだ。これで。
今度は、八代が俺なんかを好きにならないように。



終わり

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