あなたの寿命、診断します


 |寿命 |解析|

 解析中...

 診断結果:貴方の寿命は16歳です。ご愁傷様でした。

「マ、マジでぇーー!?」

 画面に表示されたその結果に、俺は叫び、ついでに頭をぶつけた。



            [>貴方の寿命、診断します。



「りょ、りょうくーん! やっべーの! マジやっべーの! 俺、今日中に死んじゃうっぽい!」

 半泣きでりょうくんの部屋に駆け込むと、りょう君はいかにも面倒くさいといった表情で振り向いた。それから、読んでいた本をベッドの上に放って、突進する俺を回避する。勢いづいていた俺はそのまま壁に激突して崩れ落ちた。

「うるせーぞスグ」

 そう言って、りょうくんは冷たい目で転がった俺を見下す。ついでに足蹴にした。鬼か。
 ちなみにスグっていうのは、俺の名前、勝(すぐる)から取ったものだ。俺とりょう君は昔から仲良しの幼なじみで、小学生の頃からこの愛称で呼びあっている。ちなみに、りょう君のりょうの字は「善良」の良だけど、猟奇の猟の方が似合っていると思うのはここだけの話。
 俺は座りなおしてまた本を読みだしたりょう君の本を奪い、ベッドの端に投げた。

「何すんだよ」
「りょう君こそ、なんで親友が死ぬって時に暢気に本なんか読んでんだよ!」
 するとりょう君は冷めた眼差しを俺に送った。
「……で? 今度は何の影響受けたんだ?」
「影響じゃねーし、今度はマジだから! い、今有名な占いサイトでさあ、俺の寿命16だって! 俺、明日誕生日じゃん? 明日で17じゃん? やべーっしょマジで、つまり俺、今日中に死ぬってこと!?」
「お前、バカじゃね」

 頭を抱えて叫ぶと、りょう君は心底馬鹿にしたような目で俺をみた。りょう君は基本的に占いを信じない。運命は自分で切り開くものだとか、どこぞのゲームの主人公のような感覚で生きている男だから。りょう君は現実主義者なんだ。
 しかし、俺は違う。元々占い好きではあったけど、昔から人の事を信じるよう、素直に生きていくよう死んだ祖父ちゃんから言われていた。
 りょう君はよく俺の事を単純馬鹿と罵るけど、俺は人を騙すよりは、信じて騙された方がいいと思っている。いや、もちろん騙されないのが一番だけど、誰も信じられなくなるよりはマシだ。
 俺は若干めそめそしながら、りょう君の隣に座って、着ているシャツの裾を引っ張った。鬱陶しそうな目でりょう君が俺をみる。

「何」
「りょう君つめてーよ。俺たち『りょう君』『スグ』の愛称で呼びあう仲じゃん……」
「俺が言う「スグ」は、スグわめく、スグ信じるのスグだけどな」
「マジかよ、16年目の真実! つーかどうしよりょう君、あと三時間で俺17歳になっちゃうよ! この三時間の間に俺は……」
「そんなよくわかんねー占い信じるなって、女子かお前」
「ちげーしりょう君、女でも占い信じない奴はいるよ。姉ちゃんとか俺の横でくっだらねってはき捨ててたんだぜ? ひどくね?」
「相変わらず似てねえ姉弟だな」
「そうそう、あとさあ、姉ちゃん俺のプリンを黙って食って謝りも……ってちげえし! そんなことはどうでもいいんだよ!」

 脱線しそうになる話を戻して、俺はりょう君に真剣な顔で詰め寄った。呆れたりょう君の目と、俺の真剣な瞳が交差する。面倒くさいということを隠しもしないりょう君は、冷たい。

「問題は、この三時間をどうやって生き延びるかってことなんだ……」
「いや、死なねえだろ。お前馬鹿じゃないの」
「そんなのわかんないだろー!」

 言いながら俺は、そのままベッドの上に転がった。りょう君は、現実主義者だ。だから、俺が言う占いのことなんて信じないし、馬鹿みたいだとも思っている。俺だって、そのくらいは自覚している。
 だけど、絶対にないなんてどうして言い切れるんだ。可能性は低くても、もしかしたら、ダイレクトに部屋へ隕石が衝突して死ぬかもしれない。突然謎の病が発生して死ぬかもしれない。よくわからないけど死ぬかもしれない。絶対にないなんて、言い切れないじゃないか。人生何が起こるかわからないんだから。
 もし、死んだらどうなるんだろう。きっと何もない。
 美味しいものも食べられないし、思考すらできない。楽しいことも悲しいこともなにも感じない。もう二度と、りょう君にも会えなくなるんだ。考えているとなんだか悲しくなってきた。
 ぐすぐすと鼻を啜っていると、呆れたようなため息が降ってくる。

「おい」
「うぅ、りょう君、俺、りょう君のこと大好きだったよ。俺が死んでも、忘れないでね……」
「いいから、俺の布団に鼻水つけんなグズ」
「せめてスグって言えよぉ……」
「お前って本当馬鹿、あり得ない可能性ばっか考えてても仕方ないだろ」
「あり得ないとは言い切れねえじゃーん……」

 りょう君の手が、俺の髪を撫でた。昔から、俺が落ち込むとりょう君はこうやって頭を撫でてくれる。別になにも言わないんだけど、いつも冷たいりょう君がたまに見せる優しさ。ツンデレってやつだ。
 そう思っていたら、突然髪を掴まれて俺は布団からひっぺがされた。

「ふぎゃっ!」
「だから俺の布団をお前の鼻水と涙で汚すなよ」
「一瞬でも優しいと思った俺が馬鹿だったよ……」

 りょう君はやっぱりりょう君で、ぐずる俺に鋭い目線を寄越し、俺はそんなりょう君にたじろいだ。怖い。りょう君はいつだって怖い男だ。
 そうして、しばらく俺を観察するような目で見ていたりょう君だったけど、涙でぐしゃぐしゃになった俺の顔が面白かったのか、突然吹き出しやがった。変な顔とかいいながら笑ってるし。
 こいつ本当に鬼だ。もしかしたら、俺が親友と思っているだけで、本当はりょう君は俺のことが嫌いなのかもしれない。こっちは生死をかけて悩んでいるってのに!
 しかし、そこで俺はある結論にたどり着いて、立ち上がった。そしてそのまま扉の方へと歩いていく。

「おいスグ、どこ行くんだ?」

 笑うのをやめて、りょう君が聞いてきた。こんな鬼みたいなりょう君でも、俺にとっては大切な親友だ。例えりょう君が俺のことを親友と思ってなくても。

「りょう君を巻き込んで死ぬ訳にはいかないから……じゃあね」
「何電波なこと言ってんだ。こんな夜遅くにお前みたいな単純馬鹿のボケナスが一人で歩いてみろ。カモがネギ背負って鍋にダイブするようなもんだぞ」
「そんな必要以上に罵ることなくね!? ばーかばーか、りょう君のばーか!」

 捨て台詞のように叫んで、俺はりょう君の部屋を取びだした。部屋を出ると、りょう君のお母さんと玄関近くではち合わせる。りょうくんのお母さんは、走ってきた俺を驚いたような顔で見た。

「あら、勝くん。もう帰るの? 今日は止まっていくかと思っておばさんお布団持ってきたのに……」
 その言葉に、なんだか目頭が熱くなってきた。この人とももう会えないのか……。
「おばさん……今までありがとうございました! 料理とかすっげ美味かったです! おばさんは俺の第二のカーチャンみたいなもんってか……でも、巻き込むわけには行かないから……」
「勝くん、また何か暴走してるの? ちょっと良! なんとかしなさい!」
「なんで俺に言うんだよ。おいスグお前……」
「失礼しましたっ! じゃあなりょう君!」

 答えを聞かず、りょう君宅を飛び出した。俺の家とりょう君の家は斜め向かいに位置している。そのまま家に帰ることも考えたけど、もし残り時間中に隕石が落ちてきたら、俺は周りの人間を巻き込んでしまうかもしれない。
 口うるさいカーチャンも、寡黙なトーチャンも、冷たい姉ちゃんも、大切な家族だ。巻き込む訳にはいかない。
 俺は家に置いておいたチャリに跨って、暗い夜道を走り出す。後ろから声が聞こえた気がするけど、かまっている暇はない。タイムリミットはあと二時間四十分。その間に、逃げなくちゃいけないんだ。
 逃げるって何処に?

 とりあえず、人のいないところ。隕石が俺に衝突しても、巻き込まないところ。
 




 しばらくチャリで駆け抜けて、わき目も振らず夜道を走った。しかし、人がいない所は、俺の住んでいる地域だとなかなかないらしく、それどころかチャリで走るにつれどんどん人通りの多い場所に出ている気がした。そもそも、移動手段がチャリだけっていうのは、無理があったのかもしれない。せめて財布くらいは持ってでるべきだった。携帯も財布もない、身一つで飛び出してしまったことを、俺は少しだけ後悔した。
 腕時計を見ると、時刻は十一時近くを指している。自転車とは言え、全力疾走したせいか、シャツは汗だくだ。季節は九月。猛暑は過ぎたけれど、まだまだ暑い。俺は一旦チャリを止めて、その場に座り込んだ。
 ここ、どの辺なんだろう。ネオンがやたら多いし、建物も結構あるし、人も多い。繁華街かな、それじゃあ困るんだけど。

「よっと……」

 ぶっちゃけ、一時間以上走っていたせいで結構疲れていたし、喉も乾いた。けどお金がない。やっぱり財布くらい持ってくるべきだった。
 しばし自販機の前でぼんやりしていると、見知らぬおっさんが声をかけてきた。

「君、一人?」

 背広を着たサラリーマンっぽいおっさんは、酔っているのか、酒の臭いがする。俺が首を縦に振ると、そのおっさんはピースサインをして俺の前に突きつけてきた。

「これでどう?」
「え?」
「だめ? 君可愛いから、じゃあこれならどう?」

 そう言って、指の数を増やす。普段りょう君に単純馬鹿だの世間知らずだの、とにかく馬鹿と罵られる俺だけど、今おっさんがなにを言わんとしてることくらいはわかる。
 つまり俺は今、援交してる人に見られているのだ。売春ってやつ? そう思った瞬間、血の気が引いた。ぶんぶんと首を横に振る。

「いやっ、俺、そういうんじゃないんで!」
「え〜〜〜、遊ぼうよ〜、ほら、おじさん何か買ってあげるからさ」
「俺、み、未成年だしあと、まっ、巻き込む訳にはいかないし……それじゃ!」

 そのままチャリに跨って、再び全速力で走りだした。心臓がばくばくと音を立てている。なにあれ、夜の街こええ! 俺、そんなカモっぽくみられたのかな。あながちりょう君が言っていたことも間違っていないような気がしてきた。道中、似たような人に何度か声をかけられたけど、聞こえない振りをして、全力で突っ走った。途中から、逃げているのか、人のいないところに行きたいのかよくわからなくなったりもしたけど、明かりのない方向へと進んでいくと、だんだん人気もなくなり、俺は河川敷のような所へ辿り着いた。

 夜の川は暗く、なにも見えない。きょろきょろと周囲を見渡したけれど、周りにも人はいないようだった。俺は橋の付近に自転車を止めて、そのまま河川敷の下へと降りていく。水面に映る自分の顔は、随分と汗だくだった。
 腕時計を見ると、時刻は十一時半過ぎ。

「……あと少しでこの世界ともお別れか……」

 なんて、感傷に浸ってみたりした。思い返してみると、辛いこともあったけど、楽しい思い出も多かった。家族との思い出、友達との思い出。走馬燈のように蘇ってくる。そういえば、りょう君とはいつも一緒にいたなあ。
 りょう君は俺のことを馬鹿だとかいいながらも、いつも一緒に遊んでくれたし、何処に行くにも大抵一緒だった。猟奇の猟くんとか思っててごめんな、りょう君は俺の親友だよ。うん、やっぱり巻き込まなくてよかった。
 でも、最後が喧嘩っぽくなってしまったのは、少し悲しいかもしれない。

「手紙とか、書いておけばよかったなぁ……」

 水面に映った星を手で崩しながら、ぽつりと呟いた。すると、ふと、目の前が陰る。

「その前に謝罪しろこの馬鹿!」
「え」

 声が聞こえたと思ったら、肩を強い力で押されて、俺の上半身は川の中へと突っ込んだ。

「ばびゃびゃびゃびゃ!?」

 水中でもがいていると、着ていたシャツを引っ張られて、俺は水中から脱出する。し、死ぬかと思った……。
 河川敷の上に転がると、上からりょう君が鬼の形相で睨みつけていた。下の砂利がめっちゃ痛いという感想よりも、その顔が怖いという気持ちの方が多かった。
 俺はぽかんと見上げると、りょう君が俺の腹の上を土足で踏みつける。そう強い力ではなかったけれど、反射的に声を上げた。

「ぎゃふっ」
「心配かけさせてんじゃねーよ馬鹿スグ!」
「りょう君……なんで此処にいるの?」
「なんでだぁ……?」

 ぎろりと眼孔が鋭くなり、俺は恐れ戦いた。堅い砂利の上に、反射的に起き上がって正座する。夜のせいか、いつもより顔が怖い。すると、りょう君は俺の眉間に指を突きつけて怒鳴った。

「スグが飛び出したときから俺もチャリで追いかけたんだよ! 声かけても気づかねーでガンガン進むし、変な奴には捕まってるし、テメー喧嘩売ってんのか!」
「売ってません! ごめんなさい!」
「まー、途中見失ったけど、お前行動が馬鹿だからすぐわかったわ、チャリもそこに止めてあるし」
「あ〜……」

 りょう君が指さした先には、確かに俺の自転車が止めてある。昔「ダサイからやめろ」と言われたにも関わらず買った蛍光オレンジ色のよく目立つママチャリだ。確かに、途中後ろから声が聞こえたような気もするけど、まさかりょう君だったとは。俺がなんとなく納得していると、りょう君が俺の両頬を思い切り引っ張った。

「ひたひひひたひ!」
「おまけに、ようやく見つけたと思ったら入水自殺か、お前の馬鹿な所は好きだけど、そこまでいくと救えねえぞ」
「ひがふひがふ!!」

 俺はりょう君の手を振りきって、ぶんぶんと首を横に振った。俺は入水自殺なんて考えてない。というか、りょう君が俺を川に突き落としたりしなければ、こんなにびしょ濡れになることもなかった。頬がこんなに痛くなることもなかった。

「何が違うんだよ、川覗いてただろ」
「じ、自殺しなくても俺はあと三十分の命なんだ! 少し世を儚んでただけだロォー!」
「お前、まだそんなこと言ってんの?」

 心底呆れた、という表情で、りょう君が嘆息した。しかし、りょう君にはどうでもいいことでも、俺にとっては重大なことだ。

「りょう君こそなんで来たんだよ。せっかく人がいない所まできたのに! 意味ねーじゃん!」
「あ?」
「俺めがけて隕石が降ってきたらどうすんだよ……りょう君まで死んじゃうだろー……」
「……あのなあ、スグ」
「俺、りょう君に死んでほしくない……」
 時計を見たら、残り時間は十五分を切っていた。このままじゃ巻き込んでしまう。目を潤ませると、りょう君は何かを言いかけて、それから、諦めたように瞼を閉じて、ポケットを探る。

「おい、スグ」
「なに……? りょう君は今からでも逃げた方が」
「お前には黙ってたけどな、俺、実は魔法使いなんだよ」
「…………は?」
「だから、今から魔法かけて、お前の寿命を伸ばしてやる。それでいいだろ」

 一瞬、俺はりょう君の頭がおかしくなったのかと思った。りょう君は、超が三つつくくらいの現実主義者だ。占いはもちろん、幽霊も、超能力も、魔法も、神様ですら信じていない。頼れるのは自分だけを地で行く男だ。そんなりょう君が、自分は魔法使いだなんて言っても、冗談だとしか思えない。

「お前が見た占いサイトって、ここだろ」

 俺が呆気にとられていると、りょう君は自分の携帯を出して、俺がさっきまで開いていたWebページを見せた。俺は言われるがままに頷く。

「あ、うん。そう。ここね、すごい有名なんだ、寿命診断以外にも色々あるんだけど、全部当たるって……」
「もう一回やれ」
「え?」
「もう一回やれっつったんだよ、その寿命診断」
「……無理だよそれ。だって俺、何回かやったし。けど、結果変わんなかったから、りょう君占いやったことないからわかんないんだろうけど、人の運命ってのは」
「うるせえ! いいからやれ!」
「はい!」
「俺が魔法かけたから、結果も変わってるよ」

 言ってから、りょう君は恥ずかしくなったのか、顔を逸らした。俺はりょう君らしからぬ物言いにもしかしたらこの人、別人なんじゃと疑ってしまったけれど、突然人を川に突き落としてくるような輩がりょう君以外にそんな何人もいたら困るということで、自分を納得させた。
 りょう君の携帯を操作して、画面に自分の名前を打ち込む。簡単な診断はあるけれど、基本的に結果は変わらない。俺だって、りょう君に泣きつく前に何回もやったんだから。どうせ今回もまた同じだろう。
 しかし、現れた文字はさっき見たものとは違っていた。

 [診断結果:貴方の寿命は95歳です。末永く元気に]

 95歳?
 思わず二度見したけれど、やはり結果は変わらない。

「どうよ」
「……りょ、りょう君!」
「ん」
「りょう君ってマジで魔法使いだったの!? スゲくね!? やばくね! 俺、魔法使いと友達とか!」
「うるせえな、ひねり潰すぞ」
「なんで!?」

 しかし俺は、これで死ななくてもいいのだという喜びに、思わずりょう君へ抱きついていた。時計を見ると、十二時五分前、ぎりぎりセーフ。これで、俺は助かった。もしこの診断をやらなければ、今死んでいたかもしれないのだ。

「な、おま、抱きつくな! 濡れるだろ!」
「りょう君が川に落としたんじゃん!」
「お前が死のうとかするからだろうが! 心配させてんじゃねーよスグのくせに!」
「だから俺別に自殺とか……っ、あれ、りょう君、俺のこと心配してくれたの?」

 ハッとしたように、りょう君は口元を抑えた。それから、なぜか俺を睨みつける。睨むのはりょう君の癖みたいなものだから、あまり気にならない。けど、顔が赤いからそれが図星だとわかって、なんとなく俺はにやけた。

「えっ、マジで? マジで! 俺のこと心配してくれたの?」
「してませんけどぉー、全然!」
「うわー! してくれたんだ! りょう君、今まで猟奇的な猟くんとか思っててごめん!」
「テメェ、そんなこと思ってたのかよ。ぶっ殺すぞ」

 再び両頬を引っ張られて、俺は痛みに喘いだ。しばらくすると飽きたのか、りょう君は俺の頬を離すと、立ち上がって手を伸ばした。

「ほら、帰るぞ」
「……うん」

 俺はその手を取って歩き出す。まるで子供の頃に戻ったみたいで、少し嬉しかった。

「はー、それにしても俺魔法使いと友達なんて……嬉しいなー」
「お前、まさか信じてんの?」
「えっ」
「なんでもねーわ」

 ニヤニヤと笑うりょう君に、騙されたような気がするけれど、俺は何も言わないことにした。だって、信じている方が楽しい。そのまま、俺達は手を繋いで、自転車の所まで歩いた。

「りょう君、俺、寿命95だって。超長生きじゃね!?」
「おー」
「そんな長生きだったらさあ」
「なんだよ」
「りょう君ともっとずっと一緒にいられるよな!」
「おっ……」
「俺、りょう君のこと大好き! マジで!」

 走馬灯の中で、駆け巡った思い出の中には、いつもりょう君がいた。俺は、りょう君と過ごした日々が本当に大好きなんだ。りょう君も、少しでいいから、俺と同じ気持ちでいてくれればいい。そう思ってりょう君を見たのだけど、彼にしては、珍しく狼狽えていた。

「う、っ……」
「りょう君? ど、どした」
「うるせーよ馬鹿! 馬鹿スグ! 俺だっ、お、お前なんかなっ……なんでもねーよ! ハゲ! カス!」
「えええーー!?」

 何故か酷く罵って、りょう君は俺よりも先にチャリに乗って走って行ってしまった。ハ、ハゲじゃねーし!
 俺も負けじと後を追う。そんな俺達の後を、月がいつまでも追いかけてきた。





 結局その後、俺達はりょう君の家に戻り、何となく誕生日を祝ってもらってそのまま泊まった。りょう君からは「おめでと」の一言だけだったけど、俺は嬉しかった。
 翌日、朝起きてから俺は自分の携帯から再びあの占いサイトにアクセスした。もしかしたら、また自分の寿命が元に戻っているんじゃと不安になったからだ。
 しかし、もう診断することは出来なくなっていたて、代わりに画面一杯にこう書かれていた。

『やたら信じる馬鹿がいるんで、やめます。お前のことだよ。
 これに懲りたら、少しはまともに生きろ』

 俺は少しだけ笑って、まだ寝ているりょう君の頬を引っ張った。 
 
「いてーな」
「あれ、起きてたんだ」
「今起きた」
「りょう君、なんで占いサイトやってたの? 信じてない癖に」
「…………お前、好きだろ。占い」

 だからだよ。と言って、そのままりょう君は眠ってしまった。寝ぼけていたのかもしれない。
 りょう君が言っていたことは、正直よくわらなかったけど、りょう君なりに、俺のことを理解しようとしてくれたのかもしれない。俺はそんなりょう君の心遣いに少し感動して、もっと好きになってもらえるように、別の占いサイトにアクセスした。他のも見てもらえれば、面白さがわかるかも。

 その後、起きたりょう君に他の有名なサイトを紹介して「全然わかってねーなお前!」と殴られるのは、別の話だ。



終わり

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