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「良介くん、ご飯の時間やでー」
「……っ…………ふぅ、あッ……」
「あらら、お楽しみやね」

 暗闇の中、灯の声が聞こえた。
 俺は、自分の中を動き回るそれに気を取られていて、戸が開いたことにも気づいてなかった。しかし、今は近くに灯の声がする、多分、すぐ隣にでもいるんだろう。視界は相変わらず奪われているので、どこにいるかまでは把握できないけれど。
 それよりも、俺の中で動き続けるこの物体を、今すぐにでも止めてほしかった。もう、気が変になりそうだ。

「……とも、すッ……」
「なんや? 色っぽい声だして」
「中の、抜……っ、うぁ、あぅッあ」

  言ってる最中で、また跳ねた。機械音が俺の中で一定のリズムで響くと、思考がぐんにゃりと歪んでいく。見えないはずなのに、チカチカとした光が見えてく る。俺の中のある一か所に当たる度、身体がびくびくと震えた。もう、何がなんだかわからない。そもそも、本当に、灯はここにいるのか? 俺の幻聴とかじゃないよな?
 不安になっていると、両手が、俺の尻たぶを広げるようにして掴まれた。それから、中に指が入ってくる。卑猥な音が聞こえて、中の玩具が引っこ抜かれた。

「あっ!? あ、ぁあ、あ……!」
「あーあー、もうとろっとろやん。良介くんは見かけによらずエッチな子やなあ」

 くすくすと笑う声が聞こえたが、俺は異物感が身体から抜けた事に、安堵の息を漏らした。

「はぁっ……は……っ」
「良介くん、あいつらに変な事されへんかった? 僕、中まで洗う様言うとったんやけど」
「ぅ……」
「今の君、やばいで。めっちゃエロいもん。しりとりってそう言う意味のしりとりちゃうからな」

  笑い声と共に、灯の手が、俺の頬に触れた。中を洗う、か。ああ確かに洗われたよ。あれから、何度も中にお湯を入れられて、やめてくれって言ったけど、結局 やめてもらえなかった。最後の方なんて、もうなりふり構わず懇願したような気もするけど、なんだか意識が朦朧としていて覚えてない。
 ただ、終わった後は尻穴とか胸とか、色んな所に変な薬みたいの塗られて、中に玩具入れられてここに放置されたんだ。

「すごい恰好やなあ、普段が普段なだけに」

  今、俺が着ている、というより羽織っているのは、あの白い浴衣くらいだ。と言っても、ただ羽織ってるだけなので、服の意味なんて成してない。もうさっきまでのお香の匂いはしないが、身体は熱いままだし、思考回路もぼやけたままだ。少しは動けるようになったけど、思ったよりも力は入らないし、腕は縛られてい た。こんな風に縛ることないだろ。何より、どこかを触られる度、上擦ったような、変な声が上がる自分をぶち殺してやりたい。

「ほな、そろそろ目隠しとろか、なんや、びしょびしょやん」
「っ……うっ……くそッ……」
「わーお」

 目隠しが取られ、ようやく視界が明るくなった。俺がいたのは、元の監禁部屋の布団の上だった。目の前で、灯が笑っている。多分、俺は酷い顔をしているだろう。けれど、何が楽しいのか、灯は俺を見て、ニヤニヤ笑っていた。

「……なんや、想像以上によかったわ。はいチーズ」
「っやめ」

  制止する言葉も待たずに、写真を撮られた。フラッシュに目を細める。普段の姿ならまだいい、けれど、こんな状態の自分を写真に撮られたくないし、俺の人生の記録として残したくない。だが、手を伸ばして奪い取るにも、俺の腕は塞がれている。俺には、灯を止める術がない。灯が、撮った写真の画面を、俺へと見せ てきた。画面の中には、だらしない顔をした俺の顔が写っている。

「か、返せッ、撮るな」
「ええやん別に、今日は似たような写真何枚も撮るんやから」
「は……?」
「終夜に見せたら、あいつなんて言いよるかな」

 あり得ない事を、笑顔で言い放つ灯に対して、俺はあんぐりと口を開けた。何、言ってんだこいつは。しかしその間抜け面が気に入ったのか、灯が俺の頭を撫でてきた。

「せやから、言うたやん。大人しくしてくれたら酷いことせえへんって。でも良介くん抵抗しよるから、こうするしかないねんで?」

 腐ったような理論を喋りながら、灯は俺の胸へと手を伸ばしてきた。触れた瞬間、声がでる。

「うあっ」
「乳首、立っとるなあ、気持ええ?」
「んな、わけっ……」

  ぐにぐにと、両方の手で、乳首を摘まれ、抓られる。気持ちいい訳ない。そんなこと、あるはずがない。なのに、触られる度に熱が集まって、頭がぼうっとして くる。変だ、こんなの。こんなのは、俺じゃない。灯の親指が、転がすように俺の乳首を押しつぶす。その度に、頭がどうにかなりそうだった。薬のせいか? だって、普通、こんなことにはならない。
 なのになんで。

「あっ、ぅあ、あ」
「……えー声やなあ、良介くん」
「っ……、とも、す」
「そういえばさっき君、僕の事変態ホモ野郎言うとったな? そのホモ野郎に乳首触られて感じてはる変態はどこのどいつやろなあ」
「くぅッあ、あッ、ち、違う、これ、俺はっ」
「何が違うん? 下もこんなにおっ勃てて、ほんまはしたないわ」
「うぅっ……!」

  違う、違う違う違う違う。俺はこんなんで感じたりしないし、感じる訳ない。男にこんなことされて感じる様な変態じゃないんだ。これは俺じゃない、これは俺の身体じゃなくて、別の誰かのだ。
 訳の分からない事を考えて、自分を落ち着かせようとするけれど、身体はどうしようもなく反応する。抓まれた乳首が引っ張られ、その度に体が揺れる。なんで? おかしい、こんなの俺じゃない。顔に熱が集まって爆発 しそうだ。羞恥心で死にそうになっていると、灯が顔を近づけてきた。

「んっ」
「ふはっ……今度は噛まんといてな」
「ふ、あ」

  滑り込んでくる舌が、あの時みたいに俺の中を這いずり回る。気持ちいい、違う。気持ちよくなんてない。気持ちよくなんてならない。こんなのおかしいことな んだ。舌が口の中を蠢くと、食む様に貪られた。くち、と水っぽい音がして、熱い体温が伝わってくる。咥内で絡みあう舌が外れると、唾液が口を離すのを惜しむように伸びていった。息が上がる。ぼやけた思考がもっとほしいと強請った。……違う、欲しくない。 頭の中が真っ白になりそうなのを堪えて、灯を見据えた。

「と………灯……」
「なんや、とろけそうな顔してはるなあ、気持ちええんや?」
「ち、がう……」
「何が違うん? 良介くん、今の自分の顔見えへんからそんなん言えるんやで」

 灯が、近くにあったカメラのシャッターを切った。

「ほーら、見てみい自分。気持ちよくてたまらんって顔しとるやん。もっと犯してぇって顔しとんで」

 デジカメの画面の中には、緩んだ顔をした俺がいる。目や頬を赤くして、求めるように口を開いた、だらしない俺がこっちを睨んでいた。こんなの、見たくない。こんな俺は見たくない。これは俺じゃない。薬だ、薬のせいなんだ。そう思っても恥ずかしいことは変わらない。意思と気を強く持て、と思っても、身体が反応するんだ。
 顔に熱が集まるのを感じて、俺は目を瞑った。

「違う、俺じゃない、おれじゃ……」
「違わないで。君は本当はこういう事されるの好きな淫乱やねん。男に犯されるのが好きなんや。せやから、ここも喜んではる」
「ッ、あ」
「なあ、終夜はこんなん、君にしてくれへんやろ」

 ぬぷりと、俺の中に灯の指が入ってきた。さっきのあいつらのせいで、すっかり慣れてしまった俺の尻穴は、灯の細い指を難なく飲み込んだ。一本、二本と増やされ、中をぐにぐにと刺激されると、出したくもない声が上がる。

「あ、ああっ、あッ、ぅ、あっ」
「ははっ、ええ声やなあ、良介くん! なあ、終夜は、こんな君見たことないやろ? 僕が最初やろ? ああ、気分ええ! あいつが欲しかったもん取るんは、ほんま気分ええわ! はー、楽しい! 良介くん、ほな笑ってー」
「!? や、やめっ、撮るな……っうあ、あ」

 パシャリ、という音と共に、またシャッターが切られた。目の前がチカチカと眩しいのは、カメラのせいか。星が散っている。だめだ、撮るな。こんな所、誰にも見られたくない。けれど、中の指が動くたびに、声が出る。ちがう、俺、こんな声なんて出したくないのに。なんで、なんでだよ。

「う……あ〜っ……!」
「ははは、可愛ええな、良介くん。そうやって、素直なのが一番かわええよ」
「う、くっ、ぅあ、いやだ……」
「嫌なんて、嘘やろ? 君も僕と同じで、嘘つきやなあ」

 その言葉と同時に、俺の中に入っていた指が抜かれた。ぬちゅ、という音と共に引き抜かれ、異物感が無くなったことに安堵するも、代わりに、勃っている灯のチンポが、俺の尻穴に宛がわれた。
 両手で俺の足を開き、良く見えるような、向かい合わせで固定されると、これからされることが想像ついてしまった。

「っ……!」

  そして、その光景を見て、背筋が凍る。嫌だ、こんなの、絶対に無理。なのに、俺の身体は動かない。全力で抵抗すれば、少しは動くかもしれないのに、まるで 脳がそれを望んでいるみたいに。硬直したかのように動かない。はあはあと、熱い灯の息が、俺にかかる。いや、俺の息か? 混じった汗と、先走りの汁が、布 団に小さな染みを作っていく。足を掴む手が熱いのか、俺の身体が熱いのか、なんかもう、よくわからなかった。
 ただわかるのは、目の前には灯がいて、楽しそうに笑っている。それだけだ。

「ほら、抵抗せんと、入ってまうよ」
「う、や」
「首振ってはるだけじゃ、嫌なの伝わらへん。全力で抵抗してみい、なあ、良介くん」
「あ、ああああ」

 ぬぷ、という音を立てて、灯のが、亀頭が、俺の中に入ってきた。熱い、すごく、熱い。灯のもだけど、俺の身体も、この部屋も、全部。身体に捻じ込まれた異物感。押し込まれるその感覚に、汗が流れた。

「ほーら、先っぽ入ってもうたやん。良介くんが嫌がらへんし、抵抗もせんから。簡単やったなあ。ああ、もしかして挿れて欲しいん? 僕のちんぽ入れて欲しいんやね?」
「ちが、う……俺は……」
「はあ、まだそんなん言うてはるのん? 素直に僕のちんぽケツ穴にぶち込んで犯してくださいって言えばええやろ」
「あっ、あ」
「認めてまえば楽やで。なあ、良介くん、頭くらくらしてしゃーないやろ」
「はぁっ……ッ……」
「自分が自分でなくなるみたいな? ええんやで、どんな事言うても、此処には僕しかおらへんから」
「あっ、あああっ、あーー!」
「何言うても、僕しか聞いてへんから」

  ゆっくり、少しずつ進入してくる灯自身に、俺は堪らず声を張り上げた。楽になる? 認める? なんだ、なんの話だ? どんなことを言ってもいいって、俺が 何を言うっていうんだ。はぁはぁと、呼吸だけが荒くなって、だんだん、考えが、まとまらなくなる。だめだ、熱い、なんで俺、こんなところで、こんな目に あってんだろ。なんで、ここに来たんだっけ。渦見に会うため? あいつ、今何してんの。俺、あいつのせいでこんな事になってんの? もう、よくわかんねえ よ。あ、うあ、中、入ってくる。熱い。あ、ああ、ああああ。

「はぁっ、はっ、あっ、ああっ……」

 肉を無理やり押し広げられるような感覚に、体中の血液が沸騰しそうになる。くらくらして、訳がわからない。
 もうぐちゃぐちゃだ。ぬるぬるした汗が。汗? ともすが、ともすが笑っている。

「ほら、入ってくで、どんどん、はぁっ、良介くんの中……狭くて気持ちええわっ……」
「あ、ああっ、う、や、やめっ、駄目だっ、だめだだめだだめだ」
「駄目言わはる割に、抵抗せえへんのやもん。……ほーら、入ったで。咥えこんどる。ははっ……この姿もエロいなあ、一枚撮っとこ、こっち向いて、男に犯された気分は?」
「ふっ……〜〜〜う、ぁー」

 目の前が光る。多分、カメラの光だろう。また、画面を見せてきたけど、なんだか、歪んでいてよく見えない。涙のせいかな。ぼやけて見える。灯の顔も、部屋も、全部おかしい。俺が、おかしい。どうして俺、こんなことになったんだよ。あっ、中、が。

「っああ……ええなあっ……、その泣き顔。っ僕、君がそーやってわけわからんくなって、ぐしゃぐしゃに泣いとる顔、嫌いやないよっ……、なあ良介くん」

  灯が、俺の涙を舐めてきた。舌で舐めてきて、俺はそのことに対して特に何も思わなくなっていた。ただ、何となく生暖かいな、くらいで。なんでだ? 嫌だっ て、言わなきゃいけないのに。体制が崩れて、奥まで突かれて、声がでる。自分でも意味わかんねえような、声が出て、ぐちゅぐちゅという音がする。灯の口が 再び俺の口に被さってきた。上からも、下からも、似たような音がして、上下の感覚がなくなりそうだ。

「ふ、んぅ、あ、あーー」
「僕のにならへん? なあ、僕、だけのが欲しいねん、終夜やなくて、僕を見てくれはる子……、っ終夜なんて、忘れたったら、ええ」
「あ、あっああっ、アッ、ッふぁあ、ん」
「はっ……良介くん、なんやっ、感覚なくなってはる? ははっ……僕も、結構きよるねん……」
「うあッ、あ、とも、すっ……」

 ぱんぱんと、肉のぶつかりあう音と、卑猥な水音だけが部屋に響く。それ以外、何も聞こえなくなってきた。中を擦られるたび、気持ちいい。ある一点を触られると、頭が痺れて、もう、無理。何も考えられない。

「あ、あーーーーッ……はぁっ」
「はっ……、なんや、ここ、ええのん?」
「あ、っう、あぁっ」

 よくわからなくなって、頷いた。

「あはっ……ほな、気持ちええ、って言わな。は……っ素直が一番やで」
「あっ、う、き…………もち、いいっ……」
「ははは! 良介くんは、ケツ掘られて感じる変態さんやな、はぁっ……ほな、はよそう言いや」
「あっ、ああっ、はぁっ、うぅうう」
「喘いどらんで、あはっ、ちゃんと撮ったるからっ……言わないんなら抜いてまうでっ……」

  カメラが、俺の方に向けられている。言うはずない。そんなこと、あれ? でも、なんで言っちゃだめなんだっけ。だって、気持ちいい。中を擦られるのも、触られるのも、突かれるのも、すごい、気持ちいい。ぅあっ、あ、抜けてく、俺の中からちんぽが抜けてく。いいじゃん別に。言っても、だって気持ちいいんだか ら。いやだ言いたくない。……あれ? なんだっけ? 挿れられるのが嫌なんだっけ。抜かれるのが嫌なんだっけ。言っちゃだめなんだっけ、でも、言わないと抜かれちゃうから、言った方がいいのか? 言ったら駄目? なんで? ぐるぐる、ぐるぐると、渦のように思考が回る。天井も、なんだか回っている。

「ふっ……ほら、言わんと抜けてまうよ。ちゃんと言うてっ……僕はお尻にちんぽ入れられて感じる変態です〜って」
「はぁっ……、あ、お、俺は……お尻にちんぽ入れられて、感じるっへ、変態……ですっ……あっ、ひ」
「……終夜よりも、灯のちんぽが大好きです」
「し、しゅうやよりもっ、ぅあ、ともすのちんぽがっ……だ、いすき、です……っ」
「っ……ずっと、灯と一緒にいますって」
「あっ、うぁ、ず、ずっと、ともすと、い、っしょに……いますっ……!」
「ははっ…………ええ子」

 瞬間、俺の中に何かが入ってきた。液体が勢いよく中に出されている感覚が、なんとなくわかった。俺の中が満たされていく。同時に、俺も射精した。びくびくと体が震えて、その、よくわからない感覚に、ただひたすら声を上げた。

「あ――――っ! あ、あああああああっ!」
「はっ……はぁっ……あはっ、あはははは!」

 自分の精液が、身体の上にべったりとくっついた。それを見て、灯が笑っている。ゲラゲラと笑っている。なんで、笑ってんだろう。ぼんやりしている俺に向かって、灯が再びキスをしてきた。

「あはっ、はっ……なあ良介くん、約束、な」
「ぅ…………」
「破ったら、許さへんよ」

 約束。約束ってなんだ? それを考える前に、俺の意識は闇の中に沈んでいった。なんだか、体がとても重いんだ。

「僕と、ずっと一緒におってな」

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