オフ会



「ねぇ笠原君、渦見君のこと、まだ誘ってくれないの?」

 宇都宮が、口を尖らせたように言った。
 渦見を自分が入っているサークルに連れてこい、と言われてからどれくらい経つのだろう。あまり覚えてないけれど、宇都宮はそれなりに楽しいキャンパスライフを送っているらしい。こうやって、大学内で会う度に、そのサークルの楽しさを伝えてくる。

 正直かなり鬱陶しいけど、それ自体はいいことだと思うし、渦見にそのサークルに入ってもらっても一向にかまわないと思う。何のサークルかはよく知らないけど。
 ただし俺を巻き込まないでくれ。会う度渦見くん渦見くん、と言われて、実は俺が渦見くんじゃないかと錯覚し始めるレベルで渦見渦見言われてもな。
 その癖自分では話しかけないんだから。あと俺が渦見を誘うこと前提で話すのやめろ。

「だから、誘ってねえって」
「なんなら笠原君も一緒に入ってくれてもいいよー」
「いや、遠慮するわ」

 サークルなんてやっていたら、バイトする暇がなくなる、それはイコール、俺の生活に支障を来す。

「ってか、毎度思うんだけど、自分で誘えばいいだろ」
「何言ってるんだよ! 渦見くんに僕なんかが話しかけられる訳ないじゃん、無理無理無理無理! 神すぎて無理!」
「俺はその言い訳が無理だよ……」

  なんだ神って。あいつはどう控えめに見てもただの変人だ。しかし、ある種の人間には、変梃な行動も神懸かり的なものに見えるのかもしれない。俺には見えな いので、目の前で顔を赤くして首を振る宇都宮はちょっとおかしいな、としか思えないけど。っつーかその言い方だと話しかけられる俺はなんなんだよ。

「まぁ、今日は諦めるけどさ、次は誘ってよね」
「だから、自分で誘えって」
「それは無理って言ってるだろ!? いい加減わかれよ!」
「す、すみませんでした……」
「うん」

 逆切れされたので、反射的に謝ると、宇都宮は満足そうに頷く。俺は納得が行かなかった。なんで俺が謝らなくちゃいけないんだ。

「そういえば僕、この間オフ会行ったんだ」
「へー、オフ会ね、オン会とかもあんの?」
「笠原君、僕の話、真面目に聞いてる?」
「だってお前の話、会う度聞かされるけど毎回よくわかんないんだよ」

 ツイッターだとか、スカイプだとか、ネットに疎い俺にはいまいち耳に馴染まない。スカイプは今は携帯でも出来るんだよ、と教えてもらったけれど、別に電話なんだからそれは携帯でも良くね? と伝えると、宇都宮曰く、スカイプは知らない人と話が出来るそうだ。
 知らない人と話すことなんてないだろ……。

「オフ会ってのはさあ、まずネット上で同じ趣味の人と交流するでしょ?」
「いや、でしょ? って聞かれても……、俺パソコン持ってないから。何回も言うけど」
「で、その仲のいい人たちと、リアルで集まって会うことをオフ会って言うんだけど」
「へー……」
「今回はみんないい人達でさ、楽しかったよ。笠原君も今度参加してみる?」
「いや、いい」
「えー」

 そもそも、俺はよく知らない人と会って話す程、暇じゃない。今日だってこの後はバイトが入っている。その後は、どうせ渦見が飯を食いに遊びにくるんだ。だから、そういうのはいいです。そういった意見を伝えたつもりだったのだが、宇都宮はへらへら笑っているだけだった。
 思えば、この時、ちゃんと断っておけばよかったのかもしれない。
 俺は、オフ会なんて興味ないと。






「じゃあ、右端から自己紹介していこうか」
「さんせーい」

 それなのに、どうしてこういうことになるんだろう。

 俺はオフ会なんて興味がなかったのに、というか、別に今も特に興味はないのに。そもそもこれはなんのオフ会なんだ。
 ぱちぱちと、流れに身を任せて拍手とかしてみたけれど、場違い感は否めない。
 視線を動かしてと右側の男を見る。スポーツマンタイプの、ガタイのいい男だった。目が合うと、にっこり笑ってくれたので、俺も乾いた笑みを返した。誰だよあんた……。

 今、俺がいるカラオケボックスには、男女併せて計八人が座っている。皆自己紹介のようなことをしているけど、ハンネは何だとか、特技はコーレイとか、言ってることがよくわからない。
 そもそも、どうして俺がここにくることになったのかと言えば、原因は宇都宮にある。

『笠原君、今日暇!?』
『今日はバイトないけど別に暇じゃない』
『暇か、よかった、じゃあちょっと頼みがあるんだけど!』
『お前俺の話聞いてる?』
『頼むよ、今度何か奢るからさ!』
『……仕方ないな』

  安請け合いなんてするんじゃなかった。食い物に釣られると禄なことにならない。宇都宮が俺に頼んできたのは、あいつが出るはずだったオフ会の代理出席とい うものだった。外せない用事が出来たらしい。休めばいいじゃん、という俺の至極真っ当な提案は、なぜか必死の形相で断られた。
 ドタキャンなんてしたらハブられるだとか、ネットで叩かれるとか、呪われるとか、よくわからないことを、色々。
 あいつ、前にネット中毒から抜け出せたとか言ってたけど、全然抜け出せてねーじゃん。はまりっぱなしじゃん。
前に渦見が言っていたことは正しかったのかもしれない。

 俺は小さくため息を吐いた。

「つかれてるね、大丈夫?」
「あ、はい……」

 すると、隣にいた男が気遣わし気に声をかけてくれた。いい人そうな外見に、少しだけ気が緩んだ。俺は頷きながら、こっそりと問いかける。

「すみません、実は俺、今日ここに来る筈だった奴の代理出席なんですけど、これって何の集まりなんですか?」

 そう聞くと、その人は驚いたような顔をして「えっ」と答えた。

「あ、何、じゃあケンダマさんじゃないの? 君?」
「違います」

 まずそのケンダマとやらがなんなのか解らないけど、流れ的に宇都宮のことを指しているであろうことは理解できた。宇都宮め、変な名前名乗りやがって。この自己紹介の流れで俺もケンダマって名乗らなくちゃいけないのか、ひょっとして。
 ぼんやりと考えていると、男がうーんと首を捻った。

「俺ね、実はマシュマロなんだ」
「はぁ……」
「…………。驚かないってことは、やっぱり違うんだな」
「?」

 いや、突然そんなスイーツ宣言されても。首を傾げる他ないと思うんだけど。ただ、流れからすると、マシュマロというのはこの人の偽名なのかもしれない。随分と可愛い名前だな。

「そっか、違うんだ。うーん……」
「あの……」
「じゃあ、抜ける? ここから」
「えっ」
「突然きても、話とかわからないでしょ」

  それは確かに。そもそもこれがなんの集まりかも解っていないのに、突然出席しろとか言われても無理な話だ。しかし、代理を引き受けた手前、自己紹介もして いないのに帰るのはどうなんだろう。人として、なんか悪いし、完全に空気読めない奴だ。悩んでいると、マシュマロさんが手を挙げた。

「ごめん皆、ケンダマさんが気分悪いらしいので、俺送って帰りますね」

 途端にブーイングが出る。まあ自己紹介すらしてないからな。しかし、マシュマロさんはそれを笑顔で制した。

「ほら、ケンダマさんつかれてるみたいだからさ」
「あ、すみません……」

  俺も申し訳なさそうにして、頭を下げた。なるべく疲れている表情で。すると、何がどうしたのか、皆一様に納得した表情で、宇頷くと、お守りとか色々くれ た。俺の演技力がよかったのか、それとも皆がいい人なのか。中にはなんだかよく解らないものまでくれる人もいた。俺はガラスの小瓶に入った動物か何かの骨 を受け取りながら、ひきつった笑顔で礼を言うと、マシュマロさんと共にその場を後にした。なんだあれ、怖ぇー。


 カラオケから抜けると、太陽は真上に昇っていた。時計を見ると、ちょうど昼時のようで、俺はお世話になったマシュマロさんに頭を下げる。

「なんか、ありがとうございました。あとすみません。なんならマシュマロさんだけ戻っても……」
「いやいや、いいんだよ。俺もああいう空気苦手でさ、ケンダマさんが来るって言うから来ただけだし」
「あ、そうなんですか。なんかすみません……」

 申し訳なくて、再び頭を下げる。

「いや、だからいいって。それよりこれから暇? 俺の家、ここから近いんだけど、寄ってかない? これも何かの縁だし」
「あーでもそんな迷惑かけるわけには」
「迷惑じゃないよ。俺昼ご飯まだなんだけど、どうせなら一緒に食おうぜ。俺、結構飯作るの得意なんだ」
「あ、お邪魔しまーす」

 二つ返事で頷いて、ついていく。だって、飯!
 最近バイトの残り飯ばっかりで、たまには出来立ての温かい飯も食べたいと思っていたんだ。本当は、宇都宮に奢らせる予定だったんだけど、まぁいいや。後で食べるより今食べたい。あいつにはまた今度奢らせよう。
 その時俺は、タダ飯のせいで忘れていた。タダより高い物はないってこと。






「ごちそうさまでした」
「いえいえ、お粗末様でした。お茶飲む?」
「ども、いただきます」

 マシュマロさんからお茶を受け取り、ありがたく頂く。マシュマロさんの作った料理は確かに美味かった。俺も少しは料理もするけど、基本的にはあまり作らない。作っても簡単なチャーハンとかだ。そのせいか、出来立ての飯はやたら美味く感じた。
 お茶を飲みながら頭を下げる。今日の俺はなんだか頭下げてばっかりだな。

「すごく美味かったです」
「そう言ってもらえると嬉しいなあ。作った甲斐があるってもんだよ。笠原くんだっけ?」
「はい」
「ケンダマさんとは、友達か何かなの?」
「いえ、知人です」
「へぇー、でも俺、今日来てくれたのが笠原君でよかった」

 マシュマロさんが嬉しそうに俺に近づいた。

「そうですか、俺も……」
「モロ好みだからさ」
「は?」

 こんな美味い料理が食えるなら、来てよかったです、と言いかけたところで、抱きしめられた。そりゃもう、がっちりと両腕でホールドされてしまい、一瞬、脳内の思考が停止する。硬直、というやつだ。
 上ずった声で、抱きしめてくる男に問いかける。なんだこれ?

「あ、あの、マシュマロさん?」
「あいつらは偽物だけど、笠原君は本物っぽいよね。いや、期待してなかったんだけど、来てよかったよ」
「ちょちょちょ! ちょっと離してください!」

  背中のシャツを引っ張り引き剥がそうと奮闘するが、がっちり押さえ込まれていて離れない。なんだこの状況は、恐る恐る顔を見てみると、マシュマロさんはど こか恍惚とした表情を浮かべながらぶつぶつと呟いている。なんだか全然よくわからないけど、とりあえずやばそうってことだけは解った。
 逃げなくちゃ、と本能が告げる。

「俺たちが、なんの集まりかって気にしてたよね?」
「は、離っ……」
「オカルトサークルだよ。目的は主に自分の特異な能力に関する共感とか、心霊名所巡りとか、あとは除霊とか。でもそんなのほとんど嘘なんだ。みんな特殊な 自分って設定に酔ってるだけだからさ。ケンダマさんとは仲良かったけど、その類だと思ってたから、来たのが君でよかった」
「え、え、いや、本当洒落にならないんで……」

  ジィーという音がしたから何かと思えば、ズボンのジッパーが下ろされていた。ズボンのベルトをはずされたのを見て、青ざめる。なんだってんだよ! 手足を ばたつかせて身を捩るが、マシュマロさんはガタイがいいせいか、びくともしない。どんだけ体鍛えてんだよ、オカルトサークルとか入ってるなら普通はインド アだろ。やばいかやばくないかで言ったら、超ヤバイ状況だ。
 ひきつった声で叫ぶ。

「ちょ、俺、ノーマルなんで! そういう趣味ないんです! 離して下さい!」

 実はオカルトサークルとは名ばかりで、ゲイの集まりだったのか? そんな思考が頭をよぎったが、あの場には確か女性もいた。となると、この人だけがダイレクトでやばいんだろう。マシュマロさんが笑顔で言う。

「いいよ、別に。君の全部が見てみたいんだ。」
「うあっ!?」

  瞬間、足を捕まれて、俺は背中から床に転倒した。背中を床に打ちつけたせいか、変な咳が肺の奥から漏れる。ごほごほと、咽ていると、いつの間にか着ていた シャツが脱がされている。本格的にやばい、というかこの人の言動がやばい。さっきから意味不明なことばかり言ってるし、変な薬でもやってるんじゃないだろ うか。ともかく、ここを逃げ出さなければ。俺は押さえられていない方の手で、思い切り相手の頬を殴った。

「っつ……!」

 一瞬相手が怯んだ隙に、捕まれていた手を離して、抜け出す。しかし再び足を掴まれ、その場に転んだ。

「いって!」
「待ちなよ、笠原くん」
「くそっ……」

 ああくそ! 俺の馬鹿!
 なんでこんな時にもっとしっかり立ち上がって逃げないんだよ!
 そうこうしているうちに、太股あたりに跨って座られ、手は押さえられた。幽霊なんて比じゃない、恐怖に体ががくがくと震える。ぞわぞわとした怖気が、体中を駆け巡った。

「おい、これ、犯罪だぞ!」
「可哀想に……、こんなにつかれて」
「は? 何……ってちょ、いやいやいや! やだって! やめろ!」

 同情するような顔をしたかと思えば、マシュマロさんがおもむろに顔を近づけてきた。何をしようとしているか、察しがついてしまい顔を背けようとしたが、覆い被さってきたそれから逃げるのは、不可能だった。

「ふっ、ん、ぅうっ……! く……! う、あ」

 ぬる、と舌が入り込んできた。押し返そうとしても絡められ、卑猥な水音が口元から響く。気持ち悪い。本当に気持ち悪い。俺はそのままくっついてきた唇に噛みついた。

「っ!」

 ガリ、と嫌な音がして、口の中に鉄の味が広がる。心臓がうるさいくらいに早鐘を鳴らしていて、はぁはぁと肩で息をしながら、相手を睨みつけた。
 正直涙目だけど、ここで諦めたら色々な意味で終了しそうじゃん。

「……痛え……」
「離せよ、あんたこれ、犯罪だからな、マジで」
「俺は笠原君を救ってあげようと思ったのに」
「さっきから頭おかしいんじゃないか?」

 話が全然通じない。
 おまけに、言葉を紡ぐ声は震えている。救うとか言う以前にお前が怖ぇーよ。このままだと貞操の危機だ。俺はなんとか時間を稼ごうと、話を続けた。

「俺、別に救いとか必要ないから」
「君は良くないものと一緒にいるんだよ。俺はそれを祓ってあげる。大丈夫、俺なら出来るよ」
「そういうこと、あんまり他人に言わないほうがいいと思うぜ、痛いから」

 そう言った瞬間、剣呑な目つきで睨みつけられた。両腕を一つに束ねられ、空いた方の手が股間に伸びてくる。手で下着越しに触られ、嫌悪感が募り顔を顰めた。

「や、めろっ……」
「素直じゃないな。素直になれば開放されるんだよ」
「ひっ、ぅ」

 ぐ、と中心部を握られ、悲鳴にも似た声が喉から漏れた。嫌だ嫌だ嫌だ、本当勘弁してくれ。扱き上げるようなその仕草に、吐き気がこみ上げてくる中、携帯の電子音が場違いに響いた。

「!」

 その音に、少しだけマシュマロが怯む。

「っ……!」

 最後のチャンスだ。
  この隙を逃したら、俺に未来はない。全身の力を集めて体を起こすと、そのまま思い切りタックルした。不意打ちが功を成したのか、倒れたマシュマロを放置し て、そのまま玄関まで走る。後ろから怒号にも似た声が飛んできたが、聞いちゃいられない。突然の出来事に適応できてない体に対し、勇気を振り絞らせ、俺は 家から飛び出した。上半身裸で。
 どう見ても変態だけど、今なら警察に捕まってもいい。むしろ早く警察来いよ! 犯罪者がここにいるぞ!

 全速力で逃げて、近くの路地裏に隠れるように入り込んでしゃがむと、耐え切れず、膝が落ちた。体が震え、歯がカタカタと音を鳴らした。視界が滲む。怖かった。ほんっとうに怖かった。今までで一番怖かった。




「かーさはらー」

 どのくらい時間がたったんだろう。ふと、聞き馴染んだ声が、上から聞こえた。顔をあげると、渦見がいて、俺は一瞬呆気に取られる。

「渦見……」
「何泣いてんの? あっひゃ」
「泣いてない……」
「泣いてんじゃん。いや、家にいったらさー、笠原いないんだもんよー。山田に聞いたらなんかオフ会行ったって聞いたから」
「山田じゃなくて宇都宮だ……」
「どうでもいいよ。それより笠原、楽しかったぁ?」

 にやにやと笑う渦見に対して、俺は怒り気味に言葉を零す。

「……お前、今の俺の姿見て楽しんでたように見えんのかよ……」
「あひゃひゃ、ぜぇんぜん! 車、近くに停めてあるから行こうぜー」

 そう言って渦見は自分が着ていたジャケットを羽織らせてくれた。そういえば俺のシャツ、あの男の所に置きっぱなしだ。絶対取りに戻ろうとは思わないし、二度と関わりたくはないけど。そもそもあいつが何を言っていたのか、最後までよくわからなかった。
 俺を救うって、なんだそりゃ。

「手、繋ぐ?」
「……つながない」
「ああそ! じゃ、いーよ別に」

 そう言って、渦見は俺を置いて歩き出す。いつもなら無理やり手を繋いでくるくせに。だけど、俺は立ち上がろうと思っても、腰が抜けて立てなかった。情けないとは思うけど、体って言うのは本当に正直だ。どんなに口で強がっても、結局びびってるんだから。

「う、渦見!」
「何?」
「…………やっぱり繋ぐ……」
「…………。いーよ、はい」
「……おう」

 ぎゅ、と手を握って、歩き出した。不思議なことに、手を握ると体温が伝わる安心感からか、震えは少し収まった。

「なあ、なんで俺の居場所わかったんだ? 会場から近いっつっても普通わかんないだろ」
「笠原、目立つからさあ」
「ふぅん」

 確かに上半身裸の男がいたら、変質者として目立つかもしれないな。だけど、俺、常に上半身裸じゃないぞ。つまり常に目立つ男ってことか? 自分で言うのもなんだけど、あまり目立たないような気もするけどなあ。
 だけど、追求するのはやめておいた。今はただ、家に帰ってゆっくり休みたい。もうこの周辺には近付かないことにしよう。


 だって、幽霊より、人間のがよっぽど怖いよ。



***


 翌日、俺はそわそわした空気の宇都宮に会った。昨日のこともあってか、「テメー許さん」みたいなオーラを出したつもりだったのだけど、宇都宮はそんな俺のオーラに全く気づかず話しかけてきた。

「あっ、 笠原君、昨日はありがとう! そ、それでさ……ちょっと聞きたいことがあるんだけど、マシュマロさんってどんな人だった? 可愛かった? 美人だった?  僕さ、チャットで結構マシュマロさんといい感じだったんだよね、マシュマロさん料理が得意っていうし、なんか清楚なイメージだったから僕の理想そのもの で、ネゲットしたいなあって思って? で、申し訳ないとは思ったんだけど、様子見として笠原くんに頼んだんだよ。ごめんねー! あ、でも用事があったのは 本当だよ! ……で、どうだった? どんな人だった!?」
「死ね」
「えっ!? ちょっと、笠原くーーん!?」

 教訓、おいしい話には裏がある。

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