友情ってなんだろう。

 中学生の頃、疑問に思って辞書を引いてみたことがある。今思えばその行為自体が、友達のいない可哀相な奴がする行為にも思えるけれど、別に友達がいなかったわけじゃない。多分思春期にかかる病みたいなものだったのだろう。まぁ、今もたまに見たりするけど。しかし結局、答えはいつも変わらない。国語辞書さん程クールな奴もそういないよ、と先日知り合いに言ってみた所、すごく可哀相な人を見る目をされた。ついでに「元気出して」とか励まされた。なんだか心が挫けてしまいそうだ。
 友情【ゆうじょう】(名)友達として、相手のためにつくすこと。まごころ。
 真心、真心ね。そんなものは空想上のもので、実際にはない。少なくとも、俺の周りには一切ない。

「やっぱさぁ、罰があたったんだよ、樹(たつる)」

 自室のベッドに横たわる痛々しい俺の姿を見て、友人である森(もり)が最初に放った一言は、そんな血も涙もないものだった。
 携帯を弄りながら、どうでも良さそうに呟く友人に腹が立つ。いや、むしろこいつなんてもう友人じゃない。国語辞書さんの言うところによると、友情とは真心を介して結ばれるものらしいからな。俺と森の間に真心は存在しないので、ただの知人ということになる。敵と言っても過言じゃない。というか敵だ。恨みがましい視線を送っても、その事にすら気づかず、だらしなく口元を緩めて携帯を操作している。今のこの俺の現状を見て、なんとも思っていないようだ。
 女の子のアドレスが大量に詰め込まれた携帯とラブラブ状態。死ねばいいのに。

「ん? どうしたんだよ、樹。そんな怖い顔して」
「ここで俺が笑顔だったら拍手送るよ、俺自身にな。どれだけ慈悲深いんだ俺は」
「そんな怒るなってー」

 笑いながら言う森に対して、俺の怒りはさらに募っていく。その片手で携帯カチカチすんのやめろ、俺は今怒っているんだと言ってるのに、どうしてそんなに軽いんだよ。喧嘩を売っているのか。

「お前がやろうって言い出したのに、見捨てて逃げやがって。本当ないわ。今のお前の態度もありえない」
「だーから、悪かったって何回も言ってるじゃん?」
「今初めて聞いたよ。ついでに言うなら、悪かったの一言で済まそうとしているお前にもびっくりだ!」

 ギプスを巻き固定された状態で、三角巾に釣られている右腕を、空いた腕で押さえながら立ち上がる。叫ぶと同時に鈍い痛みが響いた。二週間程で治ると先生は言っていたけれど、二週間も右腕が使えなかったら色々支障が出てくるだろう。それなのにこいつの態度と来たら……。

「まぁまぁ樹、腕の一本や二本や三本くらいで喚くなって。すぐくっつくんだろ?」

 そろそろ俺は己の拳にGOサインを送ってもいいと思うが、生憎右腕は休業中だ。

「俺の腕は二本しかねえよ。いや違う、そもそもお前と知り合ったのがまず間違いだったんだ。くそっ、中学生の時に戻って自分を止めたい!」

 大体、なんでこいつの誘いになんて乗ってしまったんだろう。俺の馬鹿馬鹿ヘチマ野郎! と心の中で自身を罵り、その倍くらい森のことも罵った。
俺と森は中学生の頃からの付き合いで、入学式の時、出席番号が近かったから、とか、なんかそんな理由でよくつるんでいた。俺の苗字が山川で、こいつが森、ついでに俺の名前が「樹」なものだから、よく「自然環境コンビ」という意味不明なくくりで呼ばれていた。
 森は自他共に認める色男で、日本人にしては色素の薄い色の目をしていた。違う国の血が混じっているとか、いないとか。奴は明朗快活で社交性もコミュニケーション能力も高かったから、少しだけ地味系で、友達の数も控えめな俺との組み合わせは、傍から見れば異色だったのかもしれない。しかし森とは意外にも馬が合い、大学に入った今もたまに遊んだりしている。結果としては、それが良くなかった。

「けど、噂って本当だったんだな。俺本当怖かったあ」
「俺の方が怖かったよ」
「いや、俺の方が怖かったって、結構怖がりだから」
「なら肝試しなんてやろうとか言うな!」

 怒鳴りつけると、また腕が痛む。動かさなければそこまで痛くないのに、こうやって叫んだり、力を込めたりすると、体全体に響くような痛みが襲ってくるから、堪らない。痛みに眉を顰め、その場に座り直すと、森は漸く携帯を弄る手を止めた。そうとも、それでいい。そもそも、誰のせいで俺の片腕が折れたと思っているんだ。俺自身の不注意もあるかもしれないけれど、直接的な原因はお前なんだからな。
そう言ってやると、森は「はいはい、わかってますよー、樹クン。あ、メール来た、ちょっと待ってね」等と笑いながら言うものだから、俺は躊躇いなく営業中の左腕にGOサインを出した。
 
 きっかけは、大学内で聞いた噂話だ。
俺の通う大学の近くには、随分昔、閉鎖になったビルが有り、鬱蒼とした林の中に佇むそのビルには、様々な噂が飛び交っていた。例えば、昔その場所には墓地があって、墓地を壊して作られたビルだから、踏み込む者は呪われるだとか、あるいは、そのビルを経営していた社長が、倒産を苦にして、一家心中しただとか、そのビルで遊んでいた男の子が不慮の事故で死んでしまったとか、不気味な建物には良くある、根も葉もない噂話だ。しかし、そんな噂話も、目撃情報が加算されれば、多少真剣味も帯びてくる。
 初めに言い出したのは、同じゼミの真面目そうな女性だった。

「この間、あのビルの前通ったら、小さな男の子が窓の所に立っていたの」

 俺は近所の悪ガキが悪戯目的か、はたまた度胸試しか何かで入り込んだのではないかと思ったが、それは違うらしく、すぐに否定された。何故ならばそのビルは入り口をコンクリートで塞いであり、小さな子供が入り込むには二階の窓までよじ登らなければいけないからだ。不気味なので誰も近寄らないが、そもそも中に入れないらしい。そうなると、窓にいた子供は誰だ? という話に発展する。
 当初は、見間違いという話もあったけれど、最初の目撃情報を皮切りに、その少年を見たという声が、次々に学内に溢れたので、その意見はすぐに消えた。と言っても、俺はあまり大学では人と話さないので、森が言った話を聞いただけなのだが。「小さな男の子がビルの窓から手を振っていた」「男の子には足が無かった」「良く見たら首の位置と体の位置が逆になっていた」「とにかくあれは、絶対に生きている人間じゃない」人の噂も七十五日とは言うけれど、大学生にもなって、どうしてそんな嬉々として話すのか疑問になるほど、学内はその噂で持ちきりだった。そうなると、噂が真実かどうか探ろうと、はしゃいで肝試しに出る輩も現れる。その内の一人が、森だ。
 夏休みも近いことだしということで、森は友人数名と、その廃ビルへの肝試しに、俺を誘った。それはもう楽しそうに、「樹、暇だろ?一緒に肝試し行こうぜ!」と、まるで俺に予定など元からないかのように。

「……そもそもどうして俺を誘ったんだよ?お前らだけでいけばよかったのに」
「いや、だって樹って友達いないからさ。俺なりの親切?」
「と、友達くらいいますぅー! 百人いるし!」
「樹って、中学の時も休み時間は一人で国語辞書とか読んでる暗い子だったからさー。いや、俺はそんな樹もいいと思うよ? あはは」
「………………」

 生暖かく笑う森から顔を逸らし、俺は聞かなかったことにした。したかった。でも、もう遅い。聞いちゃったもんね。ああそうさ、どうせ俺は友達いないよ。お前くらいしかいないよ。いや、お前も今となっては友達じゃないから一人もいないということになる。原因は主に誰かと話すのが苦手だったり、何を話せばいいのかわからず、相対すると結局無口になってしまうからなのだけど、傍から見れば俺は友達が一人もいない、可哀相な男と思われているのだろうか。でも、別に困っているわけじゃないし、余計なお世話だとも思う。

「樹さ、今余計なお世話とか思っただろ」
「思った」
「あーあー、俺は樹クンのことを思って誘ったのに、そう言われると悲しいなあ、泣いちゃうなあ」
「……でもお前逃げたよね」
「えへ」

 やめておけばよかったのだ。しかし結局俺は森が計画を立てたその肝試しに参加した。別に廃ビルに興味があったわけでも、少年が気になったからでもない。ましてやオカルトマニアな類の人間でもないし、友達だって別にいらない。ただ、そのメンバーの中にちょっと可愛いな、と思える女性が参加していたからだ。
 桜井ちなみというその女性とは、話したことは無かったが、物静かで優しそうなタイプの人だった。綺麗な黒髪は背中まで伸びていて、枝毛一つ無く、笑うとえくぼが出来るのが可愛かった。割と女性関係が派手な森にしては、珍しく清楚タイプの人間を誘ったものだと思う。
肝試しに参加したメンバーは、その桜井さんと森、俺を含め計五人。あとの奴らはあまり覚えていないけれど、確か一人が男で、もう一人が女、あまり印象には残っていない。というか喋っていない。シカトされていたような気もする。
 兎に角、俺たち五人は、夜を待ってその廃ビルへと向かった。時刻は確か夜の九時くらいだったと記憶する。
 林の中に佇む廃ビルは、外見からして不気味で、季節のせいか妙に生暖かい風が吹いており、やけに近寄り難い。
 しかし、たどり着いたは良いものの、入る術がなかった。何せ扉はコンクリートで固められているのだから、ぶち壊す訳にもいかない。結局俺たちは、二階の窓へ梯子をかけて、中に侵入した。立派な不法侵入罪だ。やめておけばよかったのに、今となってはそう思うことしか出来ない。

「中、結構黴くさかったし、建物自体が錆びてたのかな?鉄の臭いもあったよねー、いや、怖かった怖かった」
あの時、中で起こった事を思い出しているのか、森が笑ったが、俺は笑えなかった。
「お前なんでそんな暢気に話せるんだ。俺は出来ることならもう思い出したくないよ」
「俺の話に怯える樹クンが可愛くてつい」
「最悪だな。これからお前のことを馬鹿森って呼ぶ」

 廃ビルの中は当然だが真っ暗で、懐中電灯で照らさないと足元すらも見えない状態だった。おまけにそこいら中に鉄というか、黴というか、どこか嫌な臭いが充満しており、予想以上に不気味な空気をかもし出していた。
 肝試しに来たのに、女性陣はその時点で進むのを怖がり、その場に残るとか言い出した。何をしに来たのかわからない。だったら最初からガストとか行って、ガールズトークでもかましていればよかったのに。けれど、桜井ちなみにそう言われると、否定することも出来ず、むしろ少し格好つけたくて、俺は快諾してみせた。最も、実際に快諾したのは森で、俺は後ろで頷いただけなのだけど。
 女性一人を置いておくわけにはいかないということでメンバーの中の男一人がその場に残る形になった。俺はチャンス! とばかりにその場に残る人間に立候補しようとしたが、森に阻まれて断念。「じゃあ樹、一緒に行こうぜ!」としゃしゃり出る森に「あ、うん……」としか言えず頷いた。せっかく桜井さんと話せるチャンスだったのに嫌がらせか。まぁ何話せばいいかわからないけどな。
 結局、俺は森と二人、その廃ビルの中を見て周ることになった。全く、何しに来たんだ俺は。どうして男二人で心霊スポットに来なくちゃいけないんだと、自分自身に問いかけたが、俺の中の俺が「お前の要領が悪いからじゃね?」と辛らつな言葉を返してきたので、もう考えないことにした。
 それに、今戻ったらヘタレ野郎のチキン扱いだぞ、と森に脅された所為でもある。小さな物だが、俺にだってプライドくらいはあるのだ、桜井さんの前でチキン呼ばわりは避けたかった。そうして、俺達は二人、暗闇の中、懐中電灯の灯りだけを頼りに歩き出す。ビルの中は打ちっぱなしのコンクリートが壁面に来ており、触るとひんやりとした冷たさが手に伝わった。自称怖がりの森は、やけに楽しそうに進んで行く。道中、怖い話を交えながら進むその姿に、怖がりの要素はまったく見られなかったけれど。

「てか、なんであのタイミングで怖い話とかするの?嫌がらせか、あの肝試し自体俺に対する壮大な嫌がらせだったんだろ?」
「いや、雰囲気盛り上げようとしたのよ、樹がマジびびりで逆にこっちが驚いたわー」

 悪かったな、ビビリで。

 「このビルに出る男の子、目が無いって話、誰かから聞いた? 樹」懐中電灯を照らしながら、森が話し始めたのは、俺が聞いたことのない噂話だった。
 曰く、このビルに出る少年は目の部分がぽっかりと黒い空洞になっているらしい。そんな話は聞いたことが無い。大体、手を振っている少年を見た時点で、そのことは解りそうなものだけど。すると森はいやいや、と首を横に振った。

 「いやあ、俺も最近聞いたんだけどさ、ここに出るらしい男の子って、元々目が見えなかったみたいよ。聞いた話によると、見えないならこんな目いらないってくり抜いちゃったんだって。怖くね?あはは」とか言いながら笑う。この状況でそんな話をするお前の方が怖いよ。
 それにしてもなんてベタな話だ。いくら目が見えないからと言ってくり抜く奴がいるか、頭おかしいだろそいつ。どこからそういう話が沸いてくるんだか、とも思う。
 確証のない噂話を面白がって作っているとしか思えない。俺はなんだか馬鹿らしくなって、早く終わらせてしまおうと、件の、少年の幽霊が出るという噂の部屋まで入って行った。正直、怖い話が得意というわけでもないけど、そこまで苦手でもない。あまり信じていないからだ。
 わかり易く言えば、人は死んだら終わりだろう派。怨恨、思念が募ってそこに留まる幽霊の存在なんて、俺は信じていなかった。信じたくなかった。だって信じちゃったら怖いじゃん。

「樹、部屋に入ってから、めっちゃ叫んでたよなあ」

 森が見舞いの品の林檎の皮を剥きながら、あまり思い出したくないことを言う。

「お前が俺を置いて逃げた所為もあるよ」
「あはは」
「どっから来る笑いだそれは。場合によっては殴るぞ」
「冗談のつもりだったんだけど」
「冗談じゃ済まされねえよ!」
 結果から言えば、俺は腰を抜かした。情けない、チキンと罵られても仕方ないと思うけど、実際に怖かったのだから仕方ない。軋む扉を開けて部屋に入ると、相変わらず中は暗かったが、割れた窓から月明かりが差し込んでいたので、廊下よりは若干和らいだ光が注がれていた。しかし、逆にその光が無い方がよかったかもしれないと思う。何故って?
 そりゃあ、いたからさ。
 その噂の少年が、窓の所に立っていた。小学生くらいだろうか、半そでに短パンという夏休み少年の模範のような格好で、外を向いて佇んでいた。その時は後ろ姿だけで、顔は見えなかったが、俺は思わず息を呑む。まさか本当にいるなんて思ってなかったし、真実は見間違いか、誰かの悪戯だろうと高を括っていた。でも、いた。
ぞわぞわとした悪寒が背中を撫で、耳の回りで蝿が飛び回るような耳鳴りもし始めた。近付きたくない。しかし、その時点ではまだ相手が人間であろうという希望を捨てられず、俺は逃げればいいのに近付いてしまった。その時の俺の心情がわからない。チキンと呼ばれたくなかったのかもしれないし、ひょっとしたら、肝試しを盛り上げる為に森が仕込んだのかもしれないと、心の何処かで疑っていたのかもしれない。
 森はムードメイカーのようなところがあるから、俺に黙って近所の小学生を予め連れてきていた可能性や、実は人形っていう可能性もあるかもって、思っていた。今思えば穴だらけな考えだが、あの時はただ単に、自分を納得させる為に必死だった。信じたくなんてなかったのだ。
 だけど駄目だった。その考えはすぐ否定されることになる。体だけは外を向いたままで、振り返った少年の目は、確かに空洞だったからだ。喉が鳴る。からからに乾いた口からヒュ、と風が漏れるような音を発しながら、息を吸い込んだ。虚ろな穴に、奇妙な体勢のまま笑う少年、首だけがこちらを見ている、無いはずの目で、俺を見ている。堪らず、叫んだ。喉が裂けるかと思うくらい叫んで、後ろにいるはずの森を振り返ったが、そこに森の姿はなかった。

「……何度思い出しても信じられない」
「まぁまぁ、あ、林檎もう一個食べる?」
「……ところでお前、いつからいなかったの?」
「いやあ、実は最初から部屋に入って無くてさ。だって怖いじゃん」
「友達を置き去りにして逃げたお前の方が、あの時点では幽霊と同じくらい怖かったよ」
「しかも入ってすぐ樹の悲鳴聞こえたしさ、あ、これやべえなって思って」
「やべえのはお前だ! 何逃げてんだよ!」

 振り返った先に、いると信じていた友人の姿がない。その現実は予想以上に俺にダメージを与えた。俺は焦り、混乱して、言葉にならない声をあげた。へたり込んでいた足に力を入れてふらふらと立ち上がる。兎に角逃げなくてはと思った、心臓が飛び出るのではないかと思うくらい煩かった。部屋を飛び出す。後ろなんて振り向けない。懐中電灯をつけることも忘れ、がむしゃらに走り、出口を目指して、光のない暗闇の中、必死に駆けぬけた。
 何度も躓き、震える体を立たせて走った。此処から抜け出せるなら、多少の擦り傷は構わないとまで思っていた。まぁその結果、俺は階段から滑り落ち、右腕を骨折したんですけどね。

「…………はぁ」
「どうしたの、ため息なんてついちゃって」
「肝試しに行って、全治二週間。俺は、何? 笑いをとりに行ったの? 肝を試しにいったの? どっち?」
「呪われて死ななかっただけいいんじゃない?罰が当たったんだよ、きっと、むやみに霊を刺激してはいけませんっていうさー」

 ふざけるな、どうして俺に罰が下るんだ。下るならどう考えても、計画を立てたお前だろう。なのに森と来たら、開口一番に携帯カチカチしながら「罰が当たった」ってなんだそりゃ。新しすぎて怒りも通り越すわ。嘘だ。怒りは収まらない。もう最初から今の今までずっと怒ってる。

「…………」
「何その顔、もしかしてまだ怒ってる? だから悪かったって、機嫌直してよ樹クン」

 ベッド近くに置いてあったぬいぐるみを動かして、俺の鼻先で、まるであやすように左右に揺らした。そのぬいぐるみは俺がかつて、クレーンゲームで取ったぬいぐるみだったが、今となっては俺を苛立たせる小道具に成り下がった。

「怒るよ、そりゃ。怒らなかったらすげえいい奴すぎるだろ俺」
「レポートは代筆してやるし、ノートもとってやる。飯もあーんってしてあげるし、風呂で洗えないところは洗ってあげるよ?この森クンがね。ついでに夜の恋人の役目も果たしてやるってのに、一体なんの不満があるの?」
「不満だらけだ。主にお前の態度とかな。レポート代筆とノートは頼むけど、他はいいよ。あと俺の右腕は恋人じゃない!」
「あれ、違った? じゃあ夜は誰にしてもらってるの?樹、彼女いないじゃん」

 けらけらと笑いながら、下品なジョークをかます森に対し、苛立ちが倍増する。だから、なんでそんな軽いんだよ。俺は怖かったし、今も腕痛いし、日常生活において利き手が使えないのって色々大変なんだぞ。それをなんだ、日常茶飯事のように流しやがって。俺の骨折はお前にとっての笑い話か。ふざけんなこの馬鹿野郎! 馬鹿野郎馬鹿野郎馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿!



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