初夜

 結婚。けっこん。marriage。以下略。

結婚して下さい、とキングさんに言われました。
アバターである僕たちが結婚、と言っても具体的にどうなるのか分かりません。
でも、嬉しかった。
こんなちっぽけで何でもない様な自分を、好きだと。欲しいと言ってくれる、貴方の気持が嬉しくて。

はい、と答えました。
絶対に幸せにする、と言われて、涙が出ました。
その言葉だけで、僕は幸せです。
そう思ってました。

「…!」
マスターたちに与えられたプライベートルーム。
本来は各アバターそれぞれに与えられるものです。が、先日の告白の後、帰ったらキングさんのお部屋と一緒になっていました。
これは大変です。
マスターに呼び出されるか外出でもしない限り、部屋は一つ。
…つまり、寝ても覚めても夜も昼も一緒。
そう考えて、一気に顔が赤くなりました。
今開けて、そのまま慌てて締めたのは寝室の扉。
僕達アバターはプログラムです。AIです。
ですから勿論睡眠などしません。

ならば、あの大きなダブルベットは一体何だと言うのでしょうか。
それから、あの大きな枕に書かれている【YES】の文字も一体何なのでしょう。

混乱して、頭を抱えて真っ赤になっていたら、ふと上から影がさして暗くなりました。
僕は廊下にしゃがみ込んでいたので、何時もよりも低い位置から見上げる形になります。
キングさん。
そっと膝を折って、僕の目の高さに合わせてしゃがみ込んでくれました。
そっと僕の頬に手を伸ばしてきてくれたので、その大きな手を頬擦りして見ます。暖かなその手が僕を撫でてくれるのが僕は大好きなんです。でも実は、一番好きなのは撫でてくれる時のキングさんの表情なんですけど。

何度も何度も見てきた、優しいけれども何かを耐えているかの様な表情。
目の前のキングさんは僕の頬から頭を撫でてくれます。
本当に、優しくて強い人。

いえ。
本当は僕も分かっています。
この部屋を作ったのがマスターたちとかサクマとか佐久間さんだとか言うのも分かっています。
でも、問題はそこじゃないんです。

「あ、あのですねっ…。」
撫で続ける手をぎゅっと両手で捕まえると、目の前の人は大きく震えました。
ああ、本当に。
「ふ、不束者ですが、どうぞよろしくお願いしますっ!」
大好きです。

真っ赤になりながら目を閉じて、一気に言う。
驚くかな、とか呆れないかなとか思ったけど、多分コレが正解の筈。
小さくて足も手も短い、リスなのにタヌキみたいなこんな僕ですが貴方が欲しいと言うのなら、全部あげます。

がばっと抱き上げられて、キスをされて、そのまま扉が開く音がして、ぽふんと落とされたのはさっき見た枕の上。
これ僕より大きいですね、と言ったら自分の気持です、と囁かれてまた僕は真っ赤になりました。

何回もキスされて色々されて前後不覚になるまで色々されたその後、ふと枕の後を見たら裏も表もYESでした。

そんなキングさんですが、やっぱり僕は大好きです。
でももう少しだけ、手加減してもらえると嬉しいです。

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チャット中書きなぐりウサリスSS第二段でした。
まぁ行き当たりばったりでしたが、今のウサリス感の基本の様な。

20091121up
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