IF・サンプル
ともあれ、問題は自分を相手が『指名』してきた事だ。理由がまるで分からない。心当たりがない。
『どうぞお楽しみ下さい。』
普段であれば何て事の無い言葉が、今は奇妙な色を帯びて耳にこびり付く。
その物思いを断ち切る様に、不意に軽い音を立てて、スポットライトが灯った。
右と左、本来であれば前方へと向けて照らす為の照明器具の角度が変えられているらしい。適度に間隔を空けて配置されている椅子の群れの中、ぽかりと開けられた空間に、3条の灯りが集中して円状の舞台を作り出す。
そこには何時の間にか、奇妙なものが置かれていた。
しいて言うならば、鉄製の四本足の椅子。その座面は分厚く四角い長方形で、分厚く黒いビニールレザーに鋲が打たれて固定されている。椅子には足置きの様に横にぐるりと細い鉄棒が渡されているが、そこにはじゃらりと鎖が絡んでいた。長くは無い、だが短くもない、微妙な長さのそれは、端に頑丈そうなフックが付いて。そしてもう一端は本体にがっちりと溶接されている。如何にも重そうな雰囲気を撒き散らす『それ』は白い灯りの中で、重たげに金属質の艶を放つ。
がりっと爪を噛んでから、その感覚に四木ははっとする。咽喉が渇く様な感じがして、妙に落ち着かない。
じわりと、妙な雰囲気が室内に漂い出している事を感じながら、彼は締めていたネクタイを緩め、襟元のボタンを外した。
ふぅ、と息を吐き出す。そして、そのタイミングでガチャリと大きな音を立て、扉が開く。
差し込む廊下の光を背にして、男に伴われた小柄な人影がよろよろと現れた。
身に付けているのは真っ白なワイシャツ。白い布の下から伸びる素足が、毛足の長い絨毯を踏みながら歩いてくる。
その頭部は、何故か、まっ黒な球体だった。
短い髪の毛が黒い。それは問題ない。だが、その顔面が黒くぴったりとした何かに覆われていて、僅かに白く見えるのは鼻と思しき部分だけだった。目と口と頬が、全く見えない。
それは異様としか言えない光景だった。だが、ある意味では予想範囲内とも言えた。
小さくふぅっふぅっと言う音が響く。男達の視線が泳ぎ、異音の源を探す。
異音。いや、それは呼吸音。一定の間隔で吐き出されるそれは、くず折れる様にスポットライトの下に座り込んだ人間の口から、苦しげに吐き出される音だった。
黒く尖ったあごの先から、ぽたり、ぽたりと滴が垂れる。たらたらと滴り、零れ、濡れていく。
丸く闇から切り取られた白光の中、引き据えられたのは人間。年若く小柄な…多分、子供だ。
瞠目する男たちの目を引いたのは、その細い首筋に嵌められている首輪だった。
犬や家畜の様に首輪を嵌められて、それには皮製の紐が繋がれて傍らの男の掌へと繋がっている。
■ ■ ■
「いかがです、可愛いでしょう?では次は…」
言葉を受けた助手が乳首から手を離す。ぷっくりと赤く充血して腫れ上がった二つの乳首は、赤く丸い木の実のようだった。乳輪ごと勃起しているそれをよそに、今度は膝裏に手が回される。
ぐい、と幼子の小便を足す時の様な姿勢に膝が掬い上げられ、抱え込まれる。自然と腰は持ち上がり、大きく左右に開かれた足の間で、勃起した性器と一緒にベルトの付け根部分が露わにされた。
足の付け根に対して丁度8の字を描くようになっているそれは、交差する部分でを何かを押さえ込んでいた。
部屋に居る面々は知る筈も無いが、控え室でたっぷり時間をかけて肛門は解き解されている。媚薬入りのローションをたっぷり詰め込んで、バイブでねちねちと弄りあげたが、今日はまだ一回たりとも絶頂させていない。つまり生殺しの切ない苦痛に身悶えしながら、少年は見ず知らずの男達に弄ばれる事でしかイケないのだ。
ちなみに、さすがに足元の覚束ない状態でバイブを挿して歩かせるのは危険な為、解した穴が閉じない様にアナルプラグを捻り込んだのだ。ちなみに一番太い部分は直径4センチサイズの物を選んである。スムーズに抜ける形である事と、中に機械が仕込まれてバイブ的な使い方が出来るのがチョイスの理由だ。
ともあれ今、あられもない姿で晒されているのは汗に濡れた肌と柔毛に飾られた股間と性器、柔らかな尻肉と、四角く黒い板。
肛門のあるべき場所を塞ぐ、アナルプラグの底板だった。
「…っゃ!」
咄嗟に悲鳴が上がる。が、音が言葉になる前に自身の手で口が塞がれる。いかつい手枷でその手首は一纏めにされており、それ以上の事は出来ない様にされている。
「今、この子のアナルの中には潤滑用ローションと媚薬が入っている状態です。が、このままでは緊張で玩具を抜く事が出来ません。ですから、まずはもう一度、ここを解させて頂きます。」
アナルプラグの四角い底板に長船の指が伸び、交差しているベルトの脇へと潜り込む。少年の体内へと含まされたプラグは、先端は尖っているが中腹を膨らました円錐状の形の代物だ。中腹から根元に向かっては窄まる様に径を減らして、閉じようとする少年の肉菊の抵抗を抉じ開けて拡張している。自然に排出しようとする内臓の圧力は、きつく閉めてあるベルトに無理矢理押さえ込まれている。隙間など無いそこに無理矢理指をねじ込まれた分だけ、プラグは少年の中へと食い込んだ。
ビクン、と跳ね上がる動きは本能的な逃げだろう。苦痛と圧迫感が無いはずが無い。
濡れた頬と、薄赤い小さな唇。可愛らしいとさえ言える小さな作りでありながら、息を飲んでぎりっと歯を食いしばる。
その小さな歯ぎしりの音に、四木の背筋にぞくりと痺れがはしる。目が惹き付けられる。逸らせないままにその先を、もっと先をと気持ちが逸る。
劣情と涙に濡れた表情、隠し切れない快感と怯え、そして捨て切れずに揺れる矜持。
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