産卵殺人未遂事件

ぐちゅりと生々しい音をたてて、繋がっていた相手が身を引いていく。
身体に篭っていた熱が大気に奪われて、汗に濡れた自分の肌の気持ち悪さに帝人は身震いした。熱に浮かされていた時は気にもしないが、こうも肌がベタベタとしていては、全部シャワーでさっぱりと流したくなる。
無論流したいのは汗だけでは無く、それ以外のドロドロした液体や唾液、相手の感触もだ。
痺れた様に感覚の無い腰を気遣いながら身を起こせば、後ろには相手が物思いにふける様に胡坐をかいていた。
「どうしたんですか、臨也さん?」
聞きたくも無いが一応声を掛けてみる。
成り行きで身を重ねるように成ってしまった相手だが、それだけに扱いには注意を払っている。それだけ面倒で厄介な男で、それから拗ねると実にしつこいのだ。
こちらに気を向けずに自分の思考に篭っている時には大体がろくでもない事を考えているのが常なので、閨での被害を減らす為にもコチラを向かせておいた方が良い、と言うのが経験上の知恵だ。
それを身に付けるまでにどれだけ無体な目に合ってきたかと思うと思わず視線が遠い所を彷徨ってしまう。
その問いかけに反応しないまま、すっと臨也が立ち上がった。シーツを無造作に腰に巻きつけ、すたすたと寝室を出て行き、数分して何かを手にして戻ってきた。
そして自分を見上げる帝人に対して、とても良い笑顔で声を掛けた。
「…や、卵がね。」
頓狂な出だしの言葉が先の自分の問いかけへの答えだと気が付いた時には、あ、ヤバイと帝人の脳裏で警鐘がなった。臨也の赤みの強い瞳孔の視点が、ひたりと自分に合わせられるのを見て、逃げ遅れたと思う。逃げたとして逃げ切れたかは分らないが、気分の問題だ。後は男としての面子か。
ちなみに二重に鳴るそのアラート音は、相手がまたろくでもない事を考えてると言う事と、対象が自分であると言う事を自分に教える物だった。

「帝人君が卵を生んでる所を見てみたいなぁと思ってさ、どうしたら良いかとか考えてたんだけどさ、ちょうどウズラ卵の缶詰があったからやってくれない?」

何をやれと言うのか、何が丁度良いと言うのか。
毎度毎度の限界を超えた無体と無茶にくらくらするが、ここで自失しては相手の思う壺だと必死に冷静を保つ。

「食べ物は粗末にしちゃいけないって知らないんですか、それからやりません。したいならご自分でどうぞ。」
「え、ナニじゃあ俺がやるのを手伝ってくれるの?」

きらきらとした目でこちらを見つめる相手の言葉が理解出来ない。コレはつまりアレか、やるのは臨也さんでその手伝いを自分がすると言うことか。

「手伝いもしませんっ!」

あまりの内容の馬鹿馬鹿しさに、もう我慢できずに傍らの枕を投げつけた。ついでに立ち上がって枕ごと蹴り倒した。

怒りのままに浴室へ向かい、そのついでにもう一回踏んづけておく。くぐもった悲鳴がぎゃっとかぐぅっとか言っていたようだが気にしない。頑丈だけが取り柄だから心配する方が損だ。

「多分ホント可愛いと思うんだけど、ダメかなぁ…」
帝人が足音荒く立ち去った後。
うずら卵の水煮缶を前に臨也の唇から零れた言葉はどこからどう見ても、果てしなく残念で、人としてダメな内容だった。
幼馴染の闇医者に診せれば『草津の湯で入水すれば、帝人君喜んでくれるからそうすれば?』とでも言われるだろう、多分。

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元ネタはツィッターで出てきた卵発言より。
もはやどういう流れで出てきたのか覚えていないのですが、どうしてこうなった(w
臨也さんが非常にアレで残念な変態で大変です。
取り合えず愛の無いセフレと言うポジションが個人的に美味しいです。
臨>>帝的にはあるかもしれないけど、双方向じゃないのがツボ(w
それともアレですか【情報料は身体で払えへっへっへ】とか…どっちにしても酷い(w
美形or男前orおに畜な臨也さんは私には無理でした、と懺悔しておきますorz


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