夕暮れ、教室

窓の外が赤く染まっている。
沈む夕日を目の端で意識しながら、青葉は相手の身体を壁に押し付け唇を重ねた。
抵抗は無かった。
無論受け入れられたなどという事は考え難い。
何せ、相手は自分の掌にボールペンを付きたてた相手…竜ヶ峰帝人だ。
それにしても、何も拒否のリアクションが無いのが意外だった。かなりの奥手で初心に見えるから、もっと騒ぐと思っていたのに。
つまらない。
男同士でのキスなんて絶対嫌がると思ってやったのに。
勢いでやったは良いけれど、こうなると今度は引き際を見失って困る。
どうしたもんかな、と青葉が胸の中で思案していると不意にするりと頭の後ろに手が回ってきた。うなじに手が添えられて、ぎりっと髪の毛を握り締められる。かなりの強さが指には篭められていて、さすがに痛かったのだけれども、声を上げるのは耐えた。髪の毛が抜けるのではないかと思う位、ぎりぎりとうなじが痛む。
ゆっくりと唇を離し、帝人の顔を覗き込む。さして身長差はないので視線の高さは同じ位だ。表情は意地で平静を保つ。
「ふぅん、意外だね。てっきり君は女の子が好きなんだと思ってたけど。」
例えばあの一年生の双子とか、と続ける彼に、それはこっちの台詞だと言いたくなる。
こちらをひたりと見つめる視線はどこまでも冷たい。
ああ、あの夜の目だ。
それを認識した瞬間、ついにぶつぶつと何本かの髪の毛が引き抜かれる痛みが奔った。
痛みは問題にならなかった。けれどもすぐに、首筋にぬるりと何かが伝う感触があった。抜けた毛ごと、皮膚が引き毟られたのだろう。
が、今は後回しで良い。

何もかもを拒絶する瞳の下で、すうっと濡れた唇が弧を描く。

「…したいの?」
「帝人先輩、何言って、」
「SEXがしたいって言うのなら、付き合ってあげても良いよ?」

濡れた唇の紡ぐ疑問、続けられた具体的な言葉に青葉の動きが止まった。
しゅる、と布擦れの音を立てて襟元を締め付けるネクタイが帝人自身の指で緩められた。拘束を緩めた襟元から細く白い咽喉元が見える。
その影に、小さく赤い鬱血痕が散っていた。
一瞬の空白の後、ソレの意味する事を理解して固まった自分を見、帝人の笑みが深くなった。
わざと彼が見せたのだと青葉は理解した。
思わず咽喉が鳴った。

誰がこの人を抱いているのか。この人の恋人は誰なのか。
この人絡みで良くも悪くも近しい男性は2人上げられるだろう。どちらも色々な意味で危険でロクでもない人間で、人でなし。化け物。異常者etc。
何処からどう見ても自分が手を出して良い状況、相手ではない。だがそれでも。

そう分っていて、青葉は口を開いた。
「なら、跪いて貴方の足の指を舐める所から始めましょうか?」

*************

ツィッターの帝人受診断メーカーで出たお題【青帝でエロス】に挑戦。
取り合えず静帝前提で青帝、6巻終了後。無論『俺ダラーズぬけるから』発言もありです。
わー静帝の方は静帝なのにギスギスしてそうである(w

20100521up

戻る

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -