digital meet realize

「こんにちは、お邪魔させていただきます。」
「いらっしゃいお兄さん、早く上がって。」
 玄関先でぺこりと下げられる頭を見下ろしながら、佳主馬は荷物を持ち上げた。
 東京から名古屋までは新幹線で2時間足らず。
 出会った頃は高校生だった健二は大学生になり、佳主馬も中学生だった佳主馬も今は高校生だ。
「…で、キングは居るの?」
「今はOZの方。ちょうどお兄さんも来た事だし、ケンジも一緒に出してみようか?」
 健二が目をキラキラとさせているのは訳がある。
 アバターを現実に呼び出す為の装置。
 非公式にOZ内部で組み上げられたソレが、廻り回って侘助経由で二人の下に来ているのだ。アバターのAIプログラムに対する影響を調べるとの事で、一般アバターアよりも強烈な体験をしたが故に、他よりも強く自我を維持している2体が被検体に選ばれたらしいのだ。が、そう言う細かい大人の事情はさておき、こうなっったらオーナー2人の意見は一つだった。『リアルの2匹を見たい!でもって会わせてみたい!』

 健二としてはついでに名古屋観光も、なども含めて今回の旅行と相成った訳で、佳主馬の方も否やは無く、佳主馬の両親も健二が来るとあって大歓迎。
「父さんは仕事で母さんは今ちょっと用事で出掛けてる。買い物もして来るって言ってたからまだもう少し時間かかる感じだし、今の内に出しておこうか。」
「てっきりずっと出しっぱなしなのかと思ってたけど、違うんだね。」
 聖美さんから佳那ちゃんがきんぐきんぐって騒いで大変って聞いたよ、と健二が笑うとだから困るんだよ、と佳主馬は溜息を吐いた。
「加奈はまだ訳分ってないから、ウチにきんぐ居るのーって人に言いたがるんだよね…おかげで今うちにキングの縫いぐるみ幾つあると思う?」
 でかいのが3つもあるんだよ、と佳主馬は眉をしかめるが、それをスポンサーから調達してきたのも佳主馬自身だと聖美から健二は聞いているので笑えてしまう。
 何だかんだで良いお兄ちゃんをしているのだなぁと思うと、ちょっとだけ兄弟と言う関係が羨ましい。
「で、こっちはこれで準備終了。お兄さんの方は接続終わった?」
「ん、もう少し。…これでコッチもいけるよ。」
 回線を借りて健二は自分のノートパソコンを立ち上げる。さほど難しい手順でもなく、OZ-NETが立ち上がってアバターのステータスを現すウィンドウが開く。
 問題はこれからだ。
 佳主馬は引き出しから、健二は荷物の中から掌に乗る大きさの装置を取り出す。ベルトが付いた円形の機械。ちょうど大き目のごつい腕時計のような風体だ。
「もう何回か起動させてるからこっちも大丈夫。」
 2人のPCのUSBポートには専用の装置が着けてある。小さくて黒い親指の先位の大きさのソレは、パソコン売り場に売っているブルートゥースのアダプターの様だ。
 2人はそれぞれ手に持っていた装置を床に置く。
 佳主馬の機械のベルトは黒、健二のベルトは赤だ。

 2人がそれぞれのPCに向かい、画面の『転送しますか?』のアイコンにカーソルを合わせる。

 自然に顔を見合わせて、笑い合う。
 現実に、OZが割り込んでくる。それも前みたいなトラブルではなく、前向きで技術的な進歩の一環として。
 エンターキーを押すと同時に、フォウンと微かな電子音が空間を揺らした。

 白と赤と黒で構成された長身と、黄色と白で出来た丸っこい小さな身体がそれぞれの装置の上に投影され、そのまま固定する。装置から発生する微粒子が風船様の殻を作り上げる為、映像ではなくリアルに触れる身体を構成出来る。

 現実をディスプレイ越しの知識でしか知らないAIが現実に触れた時、どの様な反応と変化を起すのか。
 そんな理由から始まった実験だとは聞いているが、実際に体験する自分達にはあまりそんなお題目は関係ない。

「こんにちは、初めまして…で良いのかなあ。」
「良いんじゃない?…えーと、何時もウチのがお世話になってます…かな?」
 見下ろしてくる大きな赤い瞳に、見上げてくる小さな黒目に。
 胸が躍るのは多分、気のせいじゃない。

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要するに、デジモンをしてみたかっただけです。
ココからガガガspまでつなげたいとか、どれだけ前置きが長いのよ自分ってね・・・。

20100127up

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