バレンタインイブ

 暖かな毛布と、ふかふかのお布団。洗い立てのシーツの良い匂い。
うとうととまどろんでいたら、遠くでドアが開いて締まる音がした。
 お風呂から上がったカズマ君だ、と思ったけれども眠気の方が強くて僕は起きれなかった。
 ぱたぱたと足音が近づいて、ふわりと毛布が浮いて、ぎしっと布団が沈む。
「ケンジさん、寝ちゃったの?」
 頭に手が乗せられて、そっと囁きかけられる。優しい声、綺麗な声。夢現で聞いていてもうっとりしてしまう、大好き。
「…起きてる?」
 いえ、もう殆ど寝ています。
 頭を撫でてくれる手が気持ちよくて、更に眠りの海へ沈もうとする自分。
「つまんないなぁ…。」
 溜息混じりに吐き出された言葉のまま、手持ち無沙汰に今度は尻尾の方に手が伸びる。
もにゅもふと握りこむように尻尾を揉み込む動きは、大胆な割にされる側には痛みは無い。むしろ揉み解されて気持ち良い位だ。
 ケンジさんの尻尾が弾力がありすぎるんだよとカズマは言うが、大きいので人に当ったりする分柔らかいに越したことは無いだろう。
 カズマの手の暖かさに更に眠くなり、ころりと寝返りを打つ。頬にさらりとカズマの毛並みが触れて、ああカズマ君だーと思うと嬉しくて頬が緩む。

「…あーもー、ケンジさんの馬鹿。」

 本気で寝てしまったケンジを傍らに、カズマはガリガリと頭を掻いた。胸元に擦り寄る様に寝返りを打たれた所為で、どうにも動き難い姿勢になっている。
 てれーっと柔らく暖かな身体は安心しきっていて、身体を重ねている時とは全く別の生き物の様だ。どちらも同一なのは、自分自身が身体で知っている事なのだけれども。
 寄り添って眠るのもそれはそれで良いのだけれど、久々にお泊りと言う事で期待していた自分の昂揚と期待感がむなしい。
 仕方なく寝る事にして、そっとケンジの身体に手を回す。軽く小さな身体を自分の上に乗せる様に抱き上げて、そのまま仰向けの寝具に潜り込む。
 朝起きたらちょっとは焦ってくれると良いな、とかそんな埒もない事を考えながらそっと頭にキスをして部屋の電気を消した。

 明日はチョコごと貴方が欲しいから貰おう、などと思ったのは欲求不満気味の本音なので仕方が無いとも思いながら。

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前日夜にお泊りって事で、久々にSS書きました。
どっかから続きを書けって言われそうな出来ですが、取り合えずUP。
キングは優しいんですよ、ヘタレじゃないよ?

20100214up

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