欲しい望むと書いて欲望-3

 笑うケンジさんは何時も可愛いけれど、こう言う時には泣いているのも可愛い。などと考えながら、カズマはそっとその涙を舌で掬った。
 他のアバター達とのコミュニケーションは今までずっと拳でのやりとりしか無かったから、正直言って本当にコレで良いのかと迷う時もある。ただ、迷ったとしても自分の手を、衝動を止められないと言う事も知っている。
 傷付けたくは無い。でも欲しい。全部欲しい。逃がしたくない。
 舌を差し込んで嘗め回せば、くうっと咽喉奥で詰まった音がした。明らかに許容範囲を越えているのを承知で、更に口蓋から咽喉奥までぐるりと嘗め回すと抱き締めた背中がびくびくと痙攣する様に震えた。
 咽喉奥のえずきを必死に堪えて、それなのに口を開けて侵入者を迎え続けるけなげさに脳裏が熱くなる。いっそ嫌がって噛んでくれるのなら、傷を言い訳に止める事も出来るのに。
 必死に受け入れようとするその姿も可愛らしい。何をされるのか、何をしているのかも理解出来ないまま、自分に身を委ねる幼さが愛おしい。
 何も知らないくせに。

 そっとケンジを抱き上げて、カズマはソファの背もたれの上にその体を乗せた。
丁度その場所は後が飾り窓になっている為、背もたれと繋がる幅の広いエリアが出来ており、脱力した身体を乗せるには丁度良い。頭の後ろにクッションを挟み込むのは頭をぶつけない様にという配慮と、後方に逃げられない様にという用心の為だ。
 ぼんやりとしたままの濡れた目が自分を見上げてくる。それを見つめながら、そっと薄黄色の皮毛に覆われた下腹部に手を当ててみる。きゅっと押してみると、自分の物とは違う頼りない柔らかさに指が沈む。脱力しきったその顔に、かすかに疑問の色が浮かぶ。
「ねぇ、ここちょっと力を入れてみて。」
 ここ、と言う言葉とともにまたきゅっと腹を押す。
 小さく渦を巻く毛並みの中にぽっちりと浮かぶのは臍(へそ)だろうか。
 自分と違い性別の有無も無いデフォルトの身体なのに、無駄にディティールは凝っていると少しだけ溜息を吐く。いっそどちらかの性別を象っていれば、それなりに話は簡単だったのに。

「…こ、こうですか?」
 ぎゅっと目をつぶり小さな手を握り締めてケンジは分からないながらにカズマの指示に従った。
 先程まで抱きしめられていた身体が遠い。だが、有無を言わさぬ様に下腹部に当てられた手が熱い。
 腹筋に力を入れるという事で正しかったのか、軽めに宛がわれていた手の平はゆっくりと、だが確かに一定のリズムで力を込めてくる。一体何をさせたいのだろう。
「ねぇケンジさん。ここに何があるか、分かる?」
 疑問を見透かしたかの様に投げかけられる言葉。
 プログラムに過ぎない僕らは、それでも生き物の形を模して作られているが為に似た様な機能を各部位に持たせられている。勿論その為、普段は全然使わない機能も多い。
押さえられているその場所に何が、と霞んだ思考を探ろうとして、いきなりその感覚は来た。
 ごりっとなぞられた、そこにある何か、丸いモノ。
 それを皮膚の上から撫で上げられ、稲妻の様に響くその感覚にケンジの思考が吹っ飛ぶ。強く内臓に響く圧迫感と、逼迫した感覚。生まれて始めて感じるその感覚に、咽喉が締まってヒィっと擦れた声を上げて息が引き連れる。
 内臓。内臓?そんな所に一体何があったっけ。へその下、下腹部から上の方向へ押し上げる様に身体の中心線上。
「や、いやです。そ、そこ押さないでっ!」
 焦って空回る思考のまま、ケンジはカズマの手を止めさせようとその手を押さえた。だが彼の短い腕では制止するには全く長さが足りず、ただそれはカズマの手に触るだけで。
 どちらかと言えばそれは、相手の熱を煽る事にしかならなかった。

*************

我ながら言っちゃなんですが、全然ほのぼのじゃないねー。
ちょっとR18…なのかなぁ。
どうだろう。自分的にはまだまだとか思うんですが。
合体したらR18って言う考え方はおかしいのか。
合体してなきゃ別に…とか思ってたけど、状態によるのだろうか。んー。

20091209up

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