罪深きは初恋の相手である。
【解毒】
指先が炭酸水になったみたいだ。味のついていない、お酒と混ぜるための、人工的につけられたきつい炭酸にまみれてぱちぱちはじけた。
【ジパング産まれ】
ついに雨まで降り出した。
【可憐の仕業】
「いちばん好きなものを、ほかのいちばん好きなもののためにあきらめるなんて馬鹿げてる」
【香枝子のために】
「単純にできている人間にも天才はいる」
【ネオン・ドミノ】
ピーコックグリーン。孔雀の緑。ピーコックブルー。孔雀の青。それなら、ピーコックゴールドがあってもいいと思うのだ。目玉のまわりをぐるりと囲む派手なアイライン。絢爛な金。
【蠍を喰う】
皆が沈黙していた。銀では賄えない沈黙を金と引き換えようとしていたのかもしれない。
【三階殺人事件】
別れた相手が恋しくなるのは男ばかりで、女はむしろ過去を憎んで生きている。昔の恋人がまだ好きなんて言っている女の中では、その恋は未だに生々しく息づいているのだ。
【女は煙草を吸わない】
「君は案外安上がりだね」
【ひと粒のあめ玉】
身構えている。いつかお前が帰ってくるのではないかと、えいえんに、身構えたままでいる。
【鍵は開いていた】
小説のタイトルと本文の一節をイメージしております。ご自由にばらして使用可能です
200821