知らない力



「小宇宙が揺れています。
 もっと、心を強く持って下さい。」
「は、はい!」



次の日、予定通り修行をしていた。
セージさん曰く、まだデメテルと、私の小宇宙が完全に交わっていない。
だから自分で制御することが出来ないとのことだ。
力を使う事によって交わるようにしていくらしい。




「フンヌゥウウウウウ!!!」


だが、この小宇宙をもやすというのが、なかなかきつい。
今までの人生でやったことも、見たこともないことだから何もかも手探り状態だ。


「力めばいいという話ではありませんよ。
 もっと、己の中を見るのです。」



…まあ、師匠がいるだけいいか。


「今日はここまでにしておきましょう。
 お疲れさまでした。」
「ぉ・・・おつかれさまです」


たった数時間の修行も、きついとしか言いようがない。
動いてはいないはずなのに全力で走った後のような疲労感が体を包む。
くそ、体力をつけておけばよかったな。
…気分転換に聖域でも見てこようかなぁ?


「少し、聖域を見てきます」
「ええ。
 聖域内は安全ですが、お気をつけていってください」
「はーい!」








―――






サナエの姿が見えなくなった後、セージは一人、呟いた。



「女神の、力か…。」




目線の先には、一本の花がある。
先ほどまで、ちってもおかしくないような状態だった。
しかし、いまでは美しくどうどうと咲き誇っている。


その花を見ながら、サナエの言葉を思いだす。
本来であればセージは教皇の立場として、大局を見なければならない。
聖戦を勝つためには一つの希望ばかりを見つめるだけではいけない。
しかし、彼女の純粋な願いと力。
それを己の目で見たセージは小さく微笑んだ。


「彼女であれば、出来るかもしれないですな」



咲き誇る花に触れ、小宇宙を感じながら呟いた。




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